ドラッグストア研究会 松村清 最新USレポート 第18回 シニアはシニアと呼ばれるのを嫌う。

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ドラッグストア研究会 最新USレポート

第18回 シニアはシニアと呼ばれるのを嫌う。 

米国では「80歳以上」が“高齢者” 

日本の人口 50歳以上

シニア対策の進んだ米国でも日本と同様、シニアの人々をどのようなネーミングで呼んだらよいか、適切な言葉はまだ見つかっておらず、その都度使い分けが必要だ。一般的には「シニア」「マチュア」「アダルト」「50+」「60+」というような言葉を使っているが、シニアの人達が年齢を感じさせる言葉を嫌う傾向にあるのは日本と同じだ。雑誌や新聞が「シニア」と書くことには問題ない。だが50歳以上の人に「高齢者とは何歳以上か」と聞くと、大体「80歳以上」という答えが返ってくる。米国の平均寿命は約78歳だから、平均寿命以上を生きた人を初めて「高齢者」と見ているのだ。ある有名な化粧品会社の社長は「年齢は肉体が決めるものではなく、自分が決めるものだ」と豪語する。日本でも70歳を超えた俳優の若大将加山雄三や登山家三浦雄一郎の活躍を見ていると高齢者というイメージはない。日本で年寄りの「イメージ年齢」はという質問をすると、10年前までは65歳以上であったが、現在は70歳以上になってきている。いずれ米国と同じように平均寿命以上を生き抜いた80歳以上ということになるだろう。

年寄り臭い売り場は売上を減らす 

優先席

日本の電車やバスの「シルバーシート」は「優先席」へと表示が変わった。1990年代米国のドラッグストアはおじいさん・おばあさんのイラストを描いて「シルバーケアコーナー」と名付けた介護用品の売場を作ったが、不振を極めた。年寄りくさい売場を嫌ったのが理由だ。そこで「ホームヘルスケア(介護・看護)」と変えて、年齢を連想させるイメージを取り払ったところ、売上げが大幅に伸びたという。ホームヘルスケアとはホスピタルケア(病院でのケア)の反対語で、退院した後の家庭でのケアのことだから、例えばサッカーで骨折した人、野球で捻挫した人の家庭でのケアなど、すべての年代層を対象にした売場になったため、暗さがなくなりシニアの人々も売場に来やすくなったのだ。いづれにしても年齢を感じさせる呼び方や年寄り扱いはごめんだという人がシニアには多い。

シニアという言葉の誤った使い方に共通するのは、シニアを特別な目で見ていることである。シニアを保護が必要な「弱者」と決めつけているが、シニア自身は自分を弱者とは考えておらず、老人とさえ思っていない。心理学的に言えば、「いつまでも若くありたい(フォーエバーヤング)」という潜在願望を持っているのだ。そのような人々を年寄り扱いすれば怒るのは当然だ。一方、彼らはちゃっかりもしており、シニア割引のような特典は嫌がらず活用する。

求めているのはソリューション 

防災グッツイメージ

米国のシニア達は世界No.1の小売業ウォルマートをそれほど評価していない。遠過ぎる、店が広すぎる、レジで待たされるといった理由もあるが、それ以上に売れ筋のみを品揃えしているので、自分の問題解決(ソリューション)のために必要な商品が揃っていないという不満があるからだ。顧客が問題解決のために必要としている商品について考えてみよう。例えば「防災の日」のキャンペーンとして防災グッズを陳列しても、お客はどんな基準で商品を選べばよいか分からない。防災で大切なことは3日間のサバイバルである。3日間生き抜くために必要な商品をそれぞれの家庭の事情に合わせて教えて欲しいし、品揃えして欲しいのだ。ソリューションとは具体的な提案なのだ。

「ソリューション売り場」作りのカギとなる「4つのA」。 

1)Atmosphere(売場の雰囲気) 

売場にはいかにも「問題を解決してくれそう」という見た目、つまり雰囲気作りが重要だ。スウェーデンから再度日本に進出して大繁盛のホームファッションファーニシング企業「イケア」では、台所、寝室、バスルームなど家庭におけるそれぞれの部屋の雰囲気を売場で表現し、まずはお客の視覚に訴求してお客がイメージしやすいように工夫している。どんな絶品料理を提供するレストランでもおいしそうな雰囲気がなければ味の印象は帳消しになってしまうように、ドラッグストアなら病気が治りそうなイメージ作りは欠かせない。

 

2)Achievement Image(使用後の結果イメージ) 

「こうすると、こんな結果になる」という使用後のイメージが分かりやすい提案が必要だ。例えば、新しい色のヘアカラーを選ぶとき、そのままでは結果がイメージしにくいので、ヘアカラーによって自分の姿がどう変わるかがモニター上で分かる仕組みにすれば、イメージをつかみやすい。特にシニアの女性は、それを使うことによって「自分が若く見えるか」「美しく見えるか」などイメージが浮かばないとなかなかチャレンジしてこない。

3)Assistance(接客コンサルテーション) 

3つ目はカウンセリングの能力だ。シニアは自らの価値観や好みを明確に自覚しているので、十把ひとからげのカウンセリングでは満足しない。また商品の機能の説明ではなく、その商品が自分の問題解決のためにどのように役立つかを知りたいのだ。

 

2)4)Assortment(品揃え・陳列) 


風邪は放っておけばそのうち治るが、風邪をひいたときに薬を求めて薬局に行くのは、一分一秒でも早く治して気分を良くしたいからだ。風邪は初期・中期・後期によって症状も治療法も異なる。初期症状ならば、ビタミンCや滋養強壮剤、うがい液、マスクなどが役立つが、それを無視して風邪薬だけを揃えていたのでは、お客のソリューションにはならない。 「リラックス・ザ・バック」という腰痛と首の痛みの解決策を提案する店がロサンゼルスにある。この店は「腰痛・首痛の開放と予防」をコンセプトに、椅子や枕、ベッド、マッサージチェア、車のシートサポート、手揉み器具などを揃えている。店がオープンした当時は「こんな店がやっていけるのか」と心配されたが、そのうち株式を上場するまでに成長した。人間は母親の胎内(羊水の中)にいるときの状態が最も自然で楽な姿勢で、NASAの飛行士の椅子はそこからヒントを得て開発されているそうだが、この店もまた次の4つのソリューションを提供してシニアの人々にサポートされている。

 
a) 専門家による腰痛のカウンセリング
医療行為はしないが、「エルゴノミスト」と呼ばれる専門家がカウンセリングを受け持ち、お客の症状に合わせてアドバイスしている。
b) 実際に体験できる
カウンセラーが症状に適したベッドや椅子などを推薦し、店内に陳列された器具を実際に体験できる。
c) それぞれの人に合ったソリューションの提供
生活習慣の改善や必要な器具、病院やマッサージ師、カイロプラクティックなども紹介し、トータルな意味でのソリューションを提供してくれる。
d) アフターフォローのアドバイス
医療行為はしないが、「エルゴノミスト」と呼ばれる専門家がカウンセリングを受け持ち、お客の症状に合わせてアドバイスしている。
 
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プロフィール

ドラッグストア研究会松村清会長
ドラッグストア研究会
松村 清 会長 (まつむら きよし)
 

Excell-Kドラッグストア研究会(http://www.drugstore-kenkyukai.co.jp/)、Excell-K薬剤師セミナー、及びExcell-Kコンサルティンググループを率いる流通コンサルティング会社Excell-K(株)ドムス・インターナショナルの代表者。小売業、卸店、メーカーに対するコンサルテーションをはじめ、講演、執筆、流通視察セミナーのコーディネーターとして活躍。特にドラッグストア開発、ロイヤルカスタマー作り、シニアマーケティングのための実務と理論に精通し、指導と研究では第一人者。年間半年を米国で生活し、消費者の目・プロの目を通して最新且つ正確な情報を提供しながら、国内外における視察・セミナー・講演を精力的にこなす。

日本コカ・コーラ(株)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)を経て独立('90)。慶応義塾大学卒(法学)、ミズリ―バレーカレッジ卒(経済)、サンタクララ大学院卒(MBA)。東京都出身。

CVS

■全米No.1のドラッグストア ウォルグリーン

主な書籍
セールス心理学―「No!」と言わせない商談必勝法
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松村 清 著
商業界 版
単行本
ページ 221P
サイズ 四六判
 
ウォルグリーン―世界No.1のドラッグストア
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松村 清 著
商業界 版
単行本
ページ 295P
サイズ 四六判
 
シニアカスタマー―中高年に好かれる企業が市場を制する!
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松村 清 著
商業界 版
単行本
ページ 212P
サイズ 四六判
 
サービスの心理学―心に染みるエピソード集
サービスの心理学―心に染みるエピソード集
松村 清 著
商業界 版
単行本
ページ 239P
サイズ 四六判
 
目からウロコ 販売心理学93の法則
目からウロコ 販売心理学93の法則
松村 清 著
商業界 版
単行本
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サイズ A5ソフトカバー
 
・「ニューシニア(50歳以上)をつかまえろ!!
・「 売上げと利益を運ぶロイヤルカスタマー
・「最強のドラッグストア ウォルグリーン
・「 米国ドラッグストア研究
(以上、商業界刊)。
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バックナンバー
第31回 最近の米国ドラッグストア事情 (PartⅣ) 第32回 コンビニは衰退期に入ったのか?
第29回 最近の米国ドラッグストア事情 (PartⅡ) 第30回 最近の米国ドラッグストア事情 (PartⅢ)
第27回 ドラッグストアの業態進化論 (PartⅡ) 第28回 最近の米国ドラッグストア事情 (PartⅠ)
第25回 体の衰えとエイジフレンドリーな対応 第26回 ドラッグストアの業態進化論 (PartⅠ)
第23回 「ドラッグストア業態争奪戦」(PartⅡ) 第24回 心のつながり(ハイタッチ)
第21回 お客の欲求段階により大きく変化する品揃え 第22回 「ドラッグストア業態争奪戦」(PartⅠ)
第19回 シニアはわがままを聞いてくれる店が好きだ 第20回 繁盛店はユニバーサルデザインとソフトのバリアフリーの両方を提供
第17回 返報性の法則が大きく働く高齢社会 第18回 シニアはシニアと呼ばれるのを嫌う
第15回 お客様は愚かな買い物を嫌う、賢い買い物をしたい 第16回 ロイヤルカスタマー作りはホスピタルティーがカギ
第13回 “Rich Enjoy Discount, Poor Need Discount” 第14回 POPはサイレントセールスマン
第11回 価格に対する消費者心理の摩訶不思議 第12回 お客様は誰でもお得な買い物をしたい
第9回 お客様に好かれる陳列の工夫 第10回 ゴンドラエンドは売り場の華
第7回 有効なマーケティング手法になる音と香り 第8回 顧客の信頼を獲得するなら屋作り
第5回 少子高齢化のマーケティング 第6回 ゴールデンエイジ攻略の鉄則
第3回 ウォルグリーンが激しい異業態間競合を生き残れた理由 PartⅡ 第4回 非計画購買が店舗に売上げ・利益をもたらす
第1回 心理学を利用した利益を上げるレイアウト 第2回 ウォルグリーンが激しい異業態間競合を生き残れた理由 PartⅠ
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