ドラッグストア研究会 松村清 最新USレポート 弟26回 ドラッグストアの業態進化論(PartⅠ)【健康美容EXPO】

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業界の第一人である者がドラックストアの事例を交え「売る」極意を公開


第26回



ドラッグストアの業態進化論 (PartⅠ)

“独占市場”に襲い掛かる異業態

ヤマダ電機

改正薬事法後OTC市場の販売を独占してきたドラッグストアや薬局にジャスコ、イトーヨーカドー、ライフコーポレーション等のスーパーマーケット、ファミリーマート、セブンイレブン、ローソン、ミニストップ等のコンビニエンスストア、カインズ、ミスターマックス、コーナンやケイヨーホームセンター等のディスカウントストアやホームセンター、ヤマダ電機などの家電量販店などが虎視眈々と襲いかかろうとしている。同業態及び異業態との戦いが今後益々激化していく中で、ドラッグストア各社は勝ち残るために規模の拡大や経営体質の強化を計らなければならず、そのために再編の流れを加速化し、M&A(合併&買収)や同業態や異業態との資本・業務提携及びFC化を活発化している。


1 ) 米国の歴史に見るドラッグストアの業態変遷

業態変遷

フォーマット

機能

競合

1920年~1940年代
街の中心にある
フォーマット型
薬局・化粧品店
コンビニエンスストア機能
コーヒーショップ機能
同業態
1950年~1960年代
ネイバーフッド型SCに出店
の小型ドラッグストア
スーパーマーケット(食)、
バラエティストア(雑貨)、
ドラッグストア(HBA)すみわけ
同業態
1970年~1980年代
スーパードラッグ型、
ディープディスカウント型
700坪以上の大型店でワンス
トップショッピング機能を強化
同業態&異業態
(ウォルマートを代表とする
ディスカウントストア、コンボ)
1990年代
コンビニエンスドラッグ型
300坪程度の店で、3S(専門
性・便利性・接客性)強化。
立地はフリースタンディング
同業態&異業態(ディスカウントストア、コンボ)
2000年代
ヘルスケア強化
コンビニエンスドラッグ型
ヘルスケアの深耕(インストアクリニック、介護、スペシャルティファーマシー、インフュージョン、疾病管理)
異業態(ディスカウントストア、ホールセールクラブ、コンボ)&メールオーダー調剤

米国のドラッグストアには上記のような変遷の歴史があるが、これからの日本のドラッグストアが直面する異業態との戦いは1970年代から始まった。米国の場合1972年の雇用機会均等法施行により女性の社会進出が盛り上がり、ワンストップショッピングが小売業界ではキーワードになった。そしてウォルマートをはじめとするディスカウントストアがドラッグストアの商材を取り入れた。また80年代にはスーパーマーケットも同様にドラッグストアビジネスを取り入れ、フード&ドラッグのコンボの開発を強力に進めた。ドラッグストア業界は700坪~2000坪のスーパードラッグを開発し、ワンストップショッピング機能を強化した。


80年代の中盤まで業績を大きく伸ばしたディープディスカウントドラッグ(ファーモア、ドラッグエンポリアム、F&M)がウォルマートとの価格による戦いに敗れ90年代には姿を消した。スーパードラッグも総合品揃性戦略がウォルマートと同質競争になり全てつぶされていった。大きすぎるドラッグが持つ便利性の欠如は致命的であった。一方他業態との戦いのために基本への回帰ということで、コンビニエンスドラッグ戦略(専門性・便利性・接客性)を取ったウォルグリーンやCVSはその後勝ち残っていった。2000年に入ると吸収合併がさらに進み、ウォルグリーンとCVSのトップ2社で米国チェーンドラッグの50%近い売上げを占める様になった。ディスカウントストアやスーパーマーケットとの差別化及び調剤の利益率の低下に対する対策として、ヘルスケアの深耕作戦をとり、医療分野(インストアクリニック、介護、スペシャルティファーマシー、疾病管理等)の開拓をしている。ヘルスケア強化コンビニエンスドラッグ型に業態進化しているのだ。


2) 他業態との戦いに勝ち残ったドラッグストア

CVS

現在の米国のOTC市場を見て見るとNo.1のシェアをディスカウントストアが44%、ドラッグストアが35%、スーパーマーケットが22%持っており、また調剤薬を見てもドラッグストアが1位の58%だが、他業態が残りの42%を占めている。このように激しい業態間競争の中でウォルグリーンやCVSは勝ち残りドラッグストア業界でNo.1及びNo.2のシェア占めている。その勝ち残った戦略をウォルマートとの比較でみて見ると、競争軸を変えているということがよく分かる。

 

日本のドラッグストアが参考にすべき戦略とは

日本のドラッグストアはこれからディスカウントを武器にした小売業との戦いに入るが、ウォルグリーンの取った戦略が参考になるだろう。

項目

ウォルグリーン

ウォルマート

 0) 企業ブランド戦略
街で最も便利なへルスケアプロバイダー
(インストアクリニック、スペシャルティファーマシー、ヘルスケアステーションなど、医療に近い分野を手がけることによりヘルスケアの専門性という信頼感を醸成
ロープライス
 1) ターゲット客
・中高年(年間処方回数:50才以下7回、50代15回、60才以上25~30回)
・低所得層はターゲット層に含まず
・忙しい人/シングルの人
・50歳以下
・中間所得層の中から下の層
・ファミリー

 2) 商圏
「少商圏」 10分商圏の2万人商圏人口
「大商圏」 スーパーセンターは
60分商圏の10万人商圏人口
 3) 立地
便利な立地(街中/住宅街)
ローコストな立地(郊外)
 4) 店舗面積
300坪(10分間での買い物可能)
3000~6000坪(1時間の買い物)
 5) 商品構成
・HBCの専門性と便利性を重視した
品揃え
・専門性を要するHBAの売り場は、 ウォルマート以上の売り場面積
・HBCはソリューション型売り場コンセプトなので、細かな用途機能分類により
専門性強化

・小容量/小分け売りのパーソナルユースが基本
・日常生活に必要なこだわらない商品の
総合品揃え ・ファミリーユースが基本
・HBCの用途機能分類は大まかで、売れ筋商品のみの取り扱い
・ファミリー需要対応の大容量でユニットプライスの安さ訴求
 6) 顧客の購買単価
セルフ売り場の顧客当り購買単価は
14ドルで、経済性より便利性重視の購買志向(20ドル以下は便利性買い物志向。それ以上は価格志向買い物へ)
購買単価は66ドルで、便利性より経済性を重んじた買い物志向
 7) 棚割り/レイアウト
便利な立地に商圏に合わせた柔軟な
品揃え、棚割り、レイアウト
ローコストを実現するために標準化
 8) 価格戦略
・6つの価格帯を持ち、競合環境により
各店舗の価格を決定
・ウォルマートより全ての商品の売価が
10~30%高い。

・値ごろ価格(フェアプライス)の提供
地域で一番安い価格
 9) サービス
専門性の高いコンサルテーションときめの細かい接客サービス
ローコストオペレーションのため、
低いサービスレベル
 

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Information
松村清レポート
ドラッグストア研究会 松村清会長

Profile

Excell-Kドラッグストア研究会
( http://www.drugstore-kenkyukai.co.jp/)
Excell-K薬剤師セミナー、及びExcell-Kコンサルティンググループを率いる流通コンサルティング会社Excell-K(株)ドムス・インターナショナルの代表者。小売業、卸店、メーカーに対するコンサルテーションをはじめ、講演、執筆、流通視察セミナーのコーディネーターとして活躍。特にドラッグストア開発、ロイヤルカスタマー作り、シニアマーケティングのための実務と理論に精通し、指導と研究では第一人者。年間半年を米国で生活し、消費者の目・プロの目を通して最新且つ正確な情報を提供しながら、国内外における視察・セミナー・講演を精力的にこなす。


ウォルグリーン写真

■レポートの中で事例として登場する「ウォルグリーン」は全米No.1のドラッグストア


 
 

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