互いに似ているものは、印象も似ているので独自色が薄れる。これを重畳現象という。お客の関心を引き付けず、印象にも残りにくい。同じような店構えとか売場もやはり、お客の印象に残らない。今日本の多くの小売業が同質競争になり、このような状況下に置かれている。そのため、看板をAチェーンからBチェーンにして店舗が変わっても、お客は気がつかないケースが多々ある。陳列も同じだ。売りたい商品、訴求したい商品やサービスは、圧倒的なボリューム陳列をし、他の商品POPとは異なる色のPOPを活用するなど、目立つ工夫をしなければならない。さもないと他の商品に埋没してしまい、店が望むようには売れない。店内の売場に差異をつけ、重畳現象をなくすために活躍するのが、ゴンドラエンドである。
ゴンドラエンドで季節祭事や生活提案の演出をすることによって、お客に魅力的な売場を印象づけ、シーズンごとの提案を通じて、専門性の高い店舗だというイメージをつくる。
ゴンドラエンドは「第3のマグネット」といわれ、店内をお客に回遊させ、定番ゴンドラの中へとお客を導いていく役割がある。
チラシの特売品や祭事の販促を行い、お客に魅力的且つ変化に富んだ売場をアピールする。 いつも同じ陳列のエンドでは、お客に飽きられてしまうからである。
多くの小売業では、エンド1本の売上はゴンドラ3~10本分の売上と同じくらいになる。 エンドを粗利益の高い商品の定番売場として積極的に活用し、売上げ・利益獲得の場として有効活用している。
下記のすべてを満たす必要はないが、少なくともどれか1つに該当する商品を陳列する。
エンド陳列商品は、ゴンドラの商品と関連していることが鉄則である。例えば、オーラル関連のゴンドラでは、エンドもオーラル関連の商品を陳列することが望ましい。何故なら、お客はエンド商品を見てゴンドラ内の商品種類が分かり、ゴンドラの中に導かれてくるからである。つまり、ゴンドラエンドは売場案内の役割もしているのだ。エンド商品がゴンドラ内の商品と関連性がない場合、お客にとっては非常に買い物しにくい売場になってしまう。当然、関連購買は促進されない。例えば、駄目なドラッグストアでは、化粧品関連のゴンドラエンドに、お肌に大敵の殺虫剤を配置したり、スナックのゴンドラエンドにペットフードを陳列したり、生理用品のゴンドラエンドに男性用のひげそりを陳列するといった無神経さだ。このような心遣いのない店舗に、お客は専門性も信頼性も見出せず、価格のみを追求することになるから、結果として利益が上がらない店舗になる。ゴンドラ商品との関連性を考えたエンドづくりは非常に重要である。
エンドの目的には回遊性を高めることがあるが、エンド商品の認知度が低いと、お客の関心が商品に向けられないから、回遊性を高めることはできない。エンドにローカル商品を置く場合は、よく知られているローカル商品(地元の野球、バスケットボールなど人気チームの商品)や、新製品の場合は今盛んに広告が行われて話題になっている商品にする必要がある。PB商品のみのエンド陳列が多くの場合失敗するのは、認知度が低いからである。
エンド商品によって季節感を出し、お客に必要な商品を思い出させたり、祭事に合った雰囲気を盛り上げることによってムードを高める。四季やクリスマスなど祭事に合った商品もエンドには欠かせない商品である。
トイレットペーパー、洗剤、飲料水、スナックなど使用頻度の高い商品は、お客は目に付いたときに衝動的に購入する確率が高い。エンド陳列には、まずお客の目を引く商品であることが回遊性を高めるうえで役立つ。
エンドは注目度の高い売場である。従って、お客が衝動的に購入する確率も高い。最もお客の目に付きやすい店舗入口前列のゴンドラエンドは、利益獲得の場と位置付け、利益率の高い商品を展開している小売店が多い。世界一のドラッグストアウォルグリーンは、前列ゴンドラは利益創造のエンドということで、利益率が50%以上ある商材を陳列している。
世界No.1のドラッグストアウォルグリーンのゴンドラエンド及びその関連における法則について述べてみよう。
ウォルグリーンは「エンドは棚の3倍の利益を上げてしかるべきだ」という考えだ。そのため、エンドごとに重要度を決め、陳列する商品を選り分けている。その重要度はポイン ト制で分類され、1ポイントの基準粗利益額はセルフ売り場の売上高によって異なる。お客の通過率と視認率の両面から判断し、1~5ポイントがエンドごとに付けられる。5ポイントは「一番稼ぐ」という意味だから、お客が多く通り目に付きやすい前面エンドがその対象になる。逆に、奥通路や中通路、角のエンドは通過率及び視認率に難があるのでポイントは低くなる。1ポイントのエンドは、しばしばクリアランスや「1ドルコーナー」に使われる。店長は週単位でエンドの成績をチェックし、ポイント分類に応じた利益が上がらない場合は商品を入れ替える。
【週売上高30万ドル店舗の「ポイントごとの基準粗利益額」】
エンドの種類 | 基準粗利益額 |
1ポイントエンド | 600ドル |
2ポイントエンド | 1200ドル |
3ポイントエンド | 1800ドル |
4ポイントエンド | 2400ドル |
5ポイントエンド | 3000ドル |
ゴンドラエンド脇というのは意外と軽視されがちだが、プラスワンのスペースでプラスワンの売上げと利益を上げる場所として重視されている。ゴンドラエンド脇に固定式什器を設置し、定番コーナーやアピールコーナーとして活用する。売り場管理が不十分だと、すぐに欠品を起こすので補充作業に注意する一方、長い間同じ商品を陳列しているとお客に直ぐ飽きられてしまうので、3ヶ月ごとに陳列商品の見直しをしている。
ワンウェーコントロールを促進するためには、ゴンドラ内陳列は非常に大切である。連結ゴンドラの中にも、マグネット商品を配置し、常にお客の視線や関心を誘導しなくてはならない。ゴンドラの中にお客を誘導し、ゴンドラの棚にまんべんなく目を通してもらうために、ゴンドラの中にもマグネット陳列が必要である。その場合のマグネットは、次のように工夫されている。
プロフィール
Excell-Kドラッグストア研究会(http://www.drugstore-kenkyukai.co.jp/)、Excell-K薬剤師セミナー、及びExcell-Kコンサルティンググループを率いる流通コンサルティング会社Excell-K(株)ドムス・インターナショナルの代表者。小売業、卸店、メーカーに対するコンサルテーションをはじめ、講演、執筆、流通視察セミナーのコーディネーターとして活躍。特にドラッグストア開発、ロイヤルカスタマー作り、シニアマーケティングのための実務と理論に精通し、指導と研究では第一人者。年間半年を米国で生活し、消費者の目・プロの目を通して最新且つ正確な情報を提供しながら、国内外における視察・セミナー・講演を精力的にこなす。
日本コカ・コーラ(株)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)を経て独立('90)。慶応義塾大学卒(法学)、ミズリ―バレーカレッジ卒(経済)、サンタクララ大学院卒(MBA)。東京都出身。
■全米No.1のドラッグストア ウォルグリーン
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