金持ちも貧乏な人も得な買い物をしたい
金持ちも貧乏な人も、得な買物をしたい。金持ちはディスカウントを楽しむし、貧乏な人はディスカウントが必要なのである。そのため小売店は「ハイ・ロー戦略」やエブリデーロープライス戦略を取る。ウォルマートが行ったエブリデーロープライス戦略には、ローコストオペレーションが出来るシステムや企業体質がなければならない。それがないまま単に価格だけを下げた小売業はほとんどが失敗し、結果的に収益力を著しく下げてしまった。
ハイ・ロー戦略
主要商品を定期的に一定期間ディスカウント価格で販売し、それ以外のときはプロパー価格で販売するというやり方である。ディスカウント対象商品をチラシに載せると、清涼飲料水のような商品の売れ行きがよくなる。フレグランスのように、ディスカウントで買ったからといって消費量が増えるわけでない商品は余り売れない。使用頻度、購入頻度の低い商品はチラシに載せても、お客の目に留まらない確率が高いが、消費量の多い清涼飲料水等は目に留まるからだ。これを利用したのがハイ・ロー戦略である。この戦略には、次のような効果がある。
- a) 来店客数を増加させる
- “Rich Enjoy Discount, Poor Need Discount”(金持ちはディスカウントを楽しみ、貧乏な人はディスカウントを必要とする)という言葉がある。金持ちであれ、貧乏人であれ、ディスカウントには意味があるのである
- b) 一部の商品の値引きで「お買い得な店」イメージをつくれる
- 高級ブランド店を除き、小売業には「お買い得」イメージが必要である。
- c) ディスカウント商品以外の商品が売れる
- ディスカウント対象商品を買い求めに来たお客が、結果として定番価格の商品も購入する確率が高い。
- d) 新規顧客を獲得できる
- チラシや広告を見て来店する新しいお客が顧客になる可能性がある。ディスカウント対象商品が売れ過ぎると、店は赤字になるので、店奥や棚の最下段や最上段など目立たないところに陳列するケースが多い。ディスカウント対象商品はお客を誘導する商材と考えるからである。又ディスカウント対象商品のそばには、必ず関連商品を陳列して利益ミックスを図ることが大切である。
エブリデーロープライス戦略
価格に敏感なお客をターゲットにする店では、エブリデーロープライス戦略が有効である。絶えず低価格で販売されているので、ディスカウント販売をしない。この価格戦略はウォルマートが採用して一躍有名になったものである。この戦略の優位点は次の通りである。
- a)「いつも安い」イメージをお客に与え、価格に対する信頼感を得やすい
(実際にはすべての商品が安くなくても信頼される)
- b) 価格が常に一定なので業務コストが下がる。
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しかし利益に結び付けるには、売上げアップと同時にローコストオペレーションの徹底が不可欠である。シカゴにあるスーパーマーケットが「ハイ・ロー戦略」と「エブリデーロープライス戦略」を実験した。彼らの結論は「EDLPの方が売上げは上がるが、利益面ではハイ・ローの方がよかった」という。これは、EDLPでは利益の減少分を売上げの伸びでカバー出来なかったということである。
ウォルマートに代表されるディスカウントやエレクトロニクスショップのベストバイ、ホームセンターのホームデポ、玩具店のトイザ“ら”スなど、低価格を武器にする小売業はほとんどが「最低価格保証」を行っている。例えば我が家のそばのベストバイでは次のようなポスターが店頭に貼れている。「当店店頭で販売している商品の価格は、お客が購入した時点からその後2週間、どの店の価格よりも安く販売していることを保証する。この最低価格保証の対象商品は同一ブランド、同一モデルの商品で、競合店が扱っている商品でなければならない。但し、限定数量販売商品、製造中止商品、閉店セール処分品は対象外とする」
3) 価格の端数は気になる
価格は300円とか1000円のように、「0」で終わる付け方をしてはいけない。「8」とか「9」にすると、お客の印象に大きな違いが出るからだ。これら端数にはどんな効果があるのか?
「0」以外の端数の方が安く感じる。人は10、20、30という「0」が最後につく数字を1つの区切りや単位にしている。だから19歳と20歳、29歳と30歳では、たった1歳の違いだが受け取り方に大きな違いがある。1万円と9980円はわずか20円の違いだが、人々に与える印象は違う。最後のケタが「0」以外の端数で終わると「安い」と感じ、「0」で終わると「高い」と感じる傾向があるからだ。最終ケタが8や9の端数と、0とでは印象に違いがあるが、8円と9円、4円と5円の端数同士ではあまり大きな差はない。もう少し端数の効果について述べよう。
- a) 端数を使って利益を上げる
- 価格があまり知られていない商品の場合は、1000円のものを1098円にしてもよく売れるケースがある。それはお客が1098円を1100円から安くしたと思うからである。端数を使うと、利益アップにもなるのである。
- b) 競合対策に役立つ端数効果
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998円という価格は、購入後に端数の8円を切り捨て990円だった思い込む傾向がある。このため、購入後しばらくして競合店に行ったとき、同じ商品が998円で売られていると、「8円高い」と錯覚しがちである。日本では「8」が最後のケタによく使われるが、これは「末広がり」を意味し、日本人が好む数字なのである。米国のスーパーマーケットでは「9」で終わる数字が多いが、これは消費者テストをし、その結果を踏まえたものである。テストとは、10個の商品の価格をどのくらい正確に覚えているかを試したもので、その結果分かったのは「9」以外の7、6、5、4などの端数を用いても、お客の多くが「9」と答えたというものである。米国の小売業が「9」という数字を末尾に使うのが当たり前になっているので、消費者の方が末尾は「9」だと錯覚していたのだ。それなら、ほかの端数より少しでも利益が取れる「9」を使おうということで「9」が一般化した。
興味深いのは、2個又は3個まとめて販売する場合は、きっかりの価格が付けられていることだ。例えば、スーパーマーケットラルフスでは、コカ・コーラ2リットルボトルが1本89セント、オーラルの歯ブラシ1本1ドル99セント、フィットネスシャンプー1本2ドル99セントと、最後のケタを「9」にして端数効果を狙っているが、GEの電球は2個で3ドル、ケレストの歯磨きは2本で5ドル、のど飴が2袋で3ドルというように、きっちり価格である。ラルフスが特殊なのではなく、他の小売業も同じような価格に設定している。まとめて売るとき、「端数をカットしたのでは・・・」という印象をお客に与えるからというのがその理由だ。
コンピュータ関連の商材を販売しているあるチェーン店は、「9」「7」「1」の3つの端数に限定するという面白い端数価格政策を実施している。チラシ対象商品の中でも優先順位は違うので、最も力を入れて販売したい商品(例:ヒューレットパッカードのコンピュータ1599ドル91セント)には端数を「1」にし、2番目に力を入れたい商品(例:エプソンのスキャナー199ドル97セント)は端数を「7」、そして3番目が残りの商品(例:デスクトップのキーボード59ドル99セント)は端数を「9」にしている。それは、主役商品のコンピュータを買うと決めた後は、関連品のスキャナーやキーボード等に対する価格志向が薄れているので、出来るだけ利益を取ろうとしているのである。
4) 流行の値引き表現
最近良く目にするのが、「3個目フリー(無料)」「2個目50%引き」などの価格設定だ。3個目フリーと言うことは1個辺り33%引きと同じだ。2個目50%引きは1個25%引きと同じだ。どうしてこのような表現をするのか?
- a)フリーとか50%引きと言う強烈な表現は、消費者にお買い得店のイメージを与える
- b)消費者のまとめ買いが促進される
- c)値引き幅の大きい1個33%引きだと価格が乱れ、結果としてブランド破壊につながりかねないためメーカーの協力を得にくい。
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