ドラッグストア研究会 松村清 最新USレポート 弟29回 最近の米国ドラッグストア事情 (PartⅡ)【健康美容EXPO】

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業界の第一人者である松村清がドラックストアの事例を交え「売る」極意を公開


第29回



最近の米国ドラッグストア事情 (Part2)

チェーンドラッグの商品動向

1)2008年度チェーンドラッグの部門別商品構成比

米国経済の不振にもかかわらず比較的良い数値が出せた理由は、ドラッグストア業態が、「便利性」(近い・クイックショッピング・長時間営業)を提供し、薬や化粧品、消耗雑貨やコンビニエンスフード等生活に必須の商品を手ごろな価格で提供するビジネスであったからだ。人びとは経済が不況になるとウォンツ商品(付加価値商品)に余り手を出さずニーズ商品(必需品)しか買わないのだ。ウォルグリーンのワッソン会長は「我々は徹底してベーシックニーズ商品の品揃えに徹している」と述べている。ジェネラルマーチャンダイズ商品やコンシューマブル商品(コンビニエンス食品&消耗雑貨)が便利性に大きく貢献しており、より多くの消費者が単にスナックや飲料水を購入するだけでなく雑貨用品もドラッグストアで購入するようになっている。紙製品、食器洗剤、衣料洗剤などの売上げの伸張はどの業態より著しい。その結果、グローサリーは5.6%(調剤を除いた場合は20.4%)とフロントエンド売り場で第二位の部門になっている。どのドラッグストアも回転の鈍い商品をカットし商品の絞込みをしている。多すぎるSKUは便利性を低くするからだ。また自社専売品を大事にするようになっている。これは他企業との差別化のみならず利益率も高いからだ。


 

(表-10)【2008年度チェーンドラッグ商品構成】

部門

売上げ金額

(億ドル)

構成比(%)

調剤含む 調剤除く
調剤薬
1048
71.8
-
OTC
93
6.4
23.4%
グローサリー
81
5.6
20.4
ジェネラルマーチャンダイ
56
3.8
14.1
トイレタリー
58
4.0
14.6
消耗雑貨用品
51
3.5
12.8
アルコール飲料
23
1.6
5.8
コスメティック
18
1.2
4.5
ビタミン/ミネラル
18
1.2
4.5
合計
1446
100.0%
100.0%

資料:CDR

■ 調剤薬

ウォルマート薬局

調剤薬はドラッグストアの核部門で約72%の構成比を占めている。2008年度の調剤薬市場の成長は殆どなくわずか1.3%であった。2007年度の4%、それ以前の2桁成長から見ると非常に鈍った。今後もこの鈍い成長率は続き、2009年度及び2012年まで年率1.5%程度の成長しかないと予測されている。その中でチェーンドラッグはプラス3.8%と健闘した。残念ながら独立ドラッグはマイナス1.8%であった。調剤不振の要因として、人々が節約志向から調剤薬を避けたこと、スイッチOTCの促進が進んだこと、ジェネリックの使用率が64%と上昇したこと、カナダやメキシコなどでの廉価購買、海外からの偽薬の普及などがあげられている。そのような中、重度のリュウマチ、がん、臓器移植、ホルモン異常症、小人症、HIV等向けのスペシャリティドラッグは大きな成長を続けている。
下記は調剤ランキングだが、トップ20になんとドラッグストア以外の11社が入っているのには驚かされる。

 

(表-11)【2008年度米国調剤売上高ランキングトップ20】

順位

企業名

調剤売上高

(百万ドル)

年間総売上高

(百万ドル)

調剤

売上比(%)

総店舗数

(百万ドル)

調剤店舗数

1
ウォルグリーン
39,500
59,000
67.0
6,443
6,443
2
CVS
30,000
87,500
68.0
6,923
6,857
3
ライトエイド
17,700
26,300
67.2
4,091
4,091
4
ウォルマート
14,800
255,700
5.8
3,656
3,629
5
リーダー
7,800
9,200
85.0
3,400
3,400
6
グッド・ネイバー
7,700
8,500
90.0
3,030
3,030
7
クローガー
6,700
76,000
8.8
2,481
1,940

8
セーフウェイ
3,500
44,100
8.0
1,739
1,330
9
ヘルス・マート
3,100
4,200
75.0
2,000
2,000
10
ターゲット
2,700
62,900
4.3
1,682
1,470
11
Kマート
2,600
46,800
5.5
1,368
1,025
12
スーパーバリュー
2,600
43,600
6.0
2,460
920
13
メディスンショップ
2,140
22,600
95.0
1,140
1,140
14
アホールド
2,040
21,800
9.4
711
527
15
ユナイテッドドラッグス
1,800
1,900
92.0
1,008
1,008
16
コストコ
1,370
57,000
1.9
519
451
17
パブリックス
1,270
23,900
5.3
993
769
18
サムズクラブ
1,200
46,800
2.5
602
508
19
バイオスクリップ
1,160
1,400
97.0
39
39
20
ジャイアントイーグル
1,100
8,000
13.3
220
210

資料:CDR

2)ヘルスケア部門

OTC市場を見てみると、小売業全体で4.4%の成長で、ドラッグストアの成長が最も高く5.8%も成長した。業態別市場シェアを見てみると、ディスカウントストアが43.4%で一位だ。日本も薬事法改正でディスカウント業態が恐ろしい存在になるだろう。


(表-12)【2008年OTCドラッグ売上げ】

業態

売上金額(億ドル)

前年比(%)

構成比(%)

小売業タータル
416
+4.4
100.0
ドラッグストア
145
+5.8
34.9
スーパーマーケット
90
+3.1
21.6
ディスカウントストア
181
+3.9
43.5

資料:CDR

09年3月22日までの1年間OTCカテゴリーを見ると27カテゴリーのうち21カテゴリーで売上げが前年を上回った。そのうち5カテゴリーは10%以上の伸張を記録した。成長の要因は節約志向から医者に行くのを抑え、セルフメディケーション意識が高まっているからだ。 カテゴリー別に見てみると風邪・アレルギーは前年比13.1%伸張した。アレルギー薬のZyrtecがスイッチ化されたのが大きい。風邪薬カテゴリーはPseudo-ephedrine成分の商品はBTC(ビハインド・ザ・カウンター:セルフでは購入できず薬剤師を通してのみ購入可)であるが再度の上昇が見込まれる。AirborneやZlcamtoiuナチュラル成分の風邪薬は以前ほどの伸びは無いが依然として強い。ビタミンが10.6%伸びたが、不況になると病気にならないように(医者にかかると高額のため)予防やウエルネス意識が強く働くために好調である。また風邪薬やビタミンの成長はインストアクリニックを行っている店舗では著しい。それは患者が診断した上級看護士のアドバイスを受けて購入するからだ。ビタミンカテゴリーの中では、リキッドタイプのビタミン・ミネラルそしてエネルギードリンクの成長が著しい(表-13)。

(表-13)【2008年度チェーンドラッグにおけるビタミンカテゴリー売上げ】

種類

売上金額(百万ドル)

前年比(%)

ミネラルサプリメント
900
+9.9
マルチビタミン
374
+4.3
ウエイトコントロール・キャンディ及びタブレット
223
-13.3
1又は2文字ビタミン(例:A、C、E等)
206
+13.4
エネルギードリンク
182
+18.9
リキッドビタミン/ミネラル
106
+39.4

ドラックストアで最大の伸びを示したのはフットケア関連で23.3%伸びた。中高年の増加から、快適なフットケア生活や快適なウォーキングを求める人が多く、インソール、OTC、フットケア用ビューティーケア各種商品の数多い取り扱いや、糖尿病患者用のソックス、スキンクリームの登場が売上げを伸ばした。ウエイトコントロールリキッド及びパウダーは、大きな社会問題になっている肥満問題からドラッグストア市場では15.5%伸びた。



セックスウエルネス

セックスウエルネスが二桁の成長をした。男性用の避妊商品の伸びは無かったが、女性用の大きいな成長(21%増)とセックスエンジョイメント商品がカテゴリーの伸びを引っ張った。特にこの分野はセックスウエルネスという言葉で表現されるようになり、かつての避妊や病気からの予防と言う観点からセックスを楽しむという観点が付け加えられた。そしてそれらの商品は調剤室の側のセックスウエルネス売り場のみならず、生理用品売り場にもクロスMDがされるようになった。コンドーム、妊娠診断キット、排卵日測定キットに加え、ジェリー、刺激する商品、強精商品などが品揃えされている。

スカーケアマネージメント商品が注目されている。この商品群は通常ファーストエイドのカテゴリーに含まれている。ファーストエイドカテゴリー自体は2.5%しか伸びていないが、スカーケアマネージメント商品は1997年に導入されて以来成長著しく、2008年度も10%以上市場を拡大した。傷口の直りを早くしたり、見栄えもよくしたりするOTCクリームやバンデージの需要は高く、新しいカテゴリーとしての地位を獲得した。

40歳以上の女性(74百万人で米国の人口の25%のシェアを持つ)は健康に関心が強い一方問題も抱えている。女性特有の更年期障害、骨粗鬆(悩む人の80%は女性)、失禁(2千万人が失禁で悩んでいるが、その内の90%は女性)、高血圧(男性より女性に多い)、リュウマチ、糖尿病、摂食障害なども男性より女性に多い。これらの人々はドラッグストアにとり大切な顧客で、ウイメンズヘルスコーナーはドラッグストアでは大変重要な売り場になっている。

米国では環境問題からGreen Product旋風が吹いており、それにそぐわない商品が避けられる傾向にある。そのため布製オムツを使う人が増加しており、現在では10%を数えるようになった。その結果紙おむつは金額ベースでは前年比1.3%増加(値上げ効果)したが、数量ベースでは4.6%も減少した。

ホームヘルスケア(介護・看護関連商品)もドラッグストアにとり注目のカテゴリーだ。2006年にベビーブーマー(1946年~1964年の間に7600百万人と大量に誕生した人々の呼称)が初めて60歳代に突入し、中年層からシニア層へ今後沢山の人々が流れ込んでくる。今後23年間65歳以上の人々は伸び続け、2030年には20%のシェアになると予測されている。このシニア層はドラッグストアにとって核の顧客になることは間違いない。調剤薬、OTC、紙おむつ、介護機器と多くの商材を必要とするからだ。このベビーブーマーのシニアの特徴は昔のシニアと比べ、教育レベルが高く、収入もきちんとあり、健康度も高い。健康と環境に関心の高いロハス層は3500億ドル市場あるが、ベビーブーマー及びそれ以上の年齢の人々が多くを占めており、ウエルネス、健康、自立生活できる商品を求めている。今後どのような商品がホームヘルスケアカテゴリーに品揃えされるべきか色々と討議されている。確実に必要なのは、杖、車椅子歩行補助機器、家庭用医療機器、バスセーフティ関連商品、ウーンドケア商品、失禁・人口肛門関連商品、ベッド関連商品などは間違いなく必要とされている。このカテゴリーはセルフサービスだけで販売できるものでなく、知識を持った人間のコンサルティング力が重要だ。そのためカードラッグのようなローカルドラッグが差別化のために力を入れている。市場規模は小さいがイアケアが20%拡大したのは注目に値する。

(表-14)【2008年ヘルスケア商品概況】

商品カエゴリー

トータルマスマーケット

売上げ(百万ドル)

前年比(%)

ドラッグストア

売上げ(百万トル)

前年比(%)

1) ビタミン
2785
9.3
1635
10.6
2) 風邪・アレルギー・鼻炎薬(錠剤)
2600
10.0
1629
13.1
3) 内用鎮痛剤
2414
-0.4
1232
1.7
4) 整腸剤(錠剤)
1789
-0.8
998
0.3
5) ナプキン・タンポン
1503
1.0
540
3.5
6) 歯磨き
1488
-2.1
456
-1.0
7) ハブラシ及び歯間清掃用品
1314
-2.7
575
1.0
8) その他治療薬
1049
-1.0
626
1.0
9) ファーストエイド
1027
0.3
708
2.5
10) アイケア/コンタクトレンズケア用品
981
0.5
520
2.3
11) ウエイトコントロール/ニュートリショナルリキッド
890
5.9
211
15.5
12) ファーストエイド治療薬
767
1.5
491
3.2
13) ウエットテイッシュ
725
-1.4
152
2.0
14) マウスウォッシュ
712
2.3
254
4.2
15) フットケア
709
13.0
462
23.3
16) 大人用失禁用品
670
5.4
369
7.2
17) 風邪・アレルギー・鼻炎薬(リキッド)
596
-2.8
344
-0.7
18) 鼻炎用品
588
3.9
390
6.2
19) 整腸剤(リキッド)
574
6.3
327
8.1
20) 禁煙補助商品
512
-2.4
388
-2.5
21) 生理関連商品
498
3.2
308
4.0
22) 介護用品
467
-3.9
403
-4.3
23) ベビー用品
430
-0.5
155
1.1
24) 避妊用品
398
10.7
299
13.6
25) 咳止めあめ
397
-3.9
218
-2.5

注)トータルマスマーケット=スーパーマーケット、ディスカウントストア、ドラッグストアトータルの売上げ。但しウォルマトの売上げは除外
資料:CDR

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Information
松村清レポート
ドラッグストア研究会 松村清会長

Profile

Excell-Kドラッグストア研究会
( http://www.drugstore-kenkyukai.co.jp/)
Excell-K薬剤師セミナー、及びExcell-Kコンサルティンググループを率いる流通コンサルティング会社Excell-K(株)ドムス・インターナショナルの代表者。小売業、卸店、メーカーに対するコンサルテーションをはじめ、講演、執筆、流通視察セミナーのコーディネーターとして活躍。特にドラッグストア開発、ロイヤルカスタマー作り、シニアマーケティングのための実務と理論に精通し、指導と研究では第一人者。年間半年を米国で生活し、消費者の目・プロの目を通して最新且つ正確な情報を提供しながら、国内外における視察・セミナー・講演を精力的にこなす。


ウォルグリーン写真

■レポートの中で事例として登場する「ウォルグリーン」は全米No.1のドラッグストア


 
 

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