ドラッグストア研究会 松村清 最新USレポート 第15回 お客様は愚かな買物を嫌う・・・賢い買物をしたい

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ドラッグストア研究会 最新USレポート

第15回 お客様は愚かな買物を嫌う・・・賢い買物をしたい 

POPや接客で重要なこと 

POPで重要なのは「その商品を買うことがいかに賢いか」をわからせる事

人は買物をしたとき、賢い買物をしたと思いたい。「安く買えた」「手に入りにくい商品を買えた」「プロの人が褒めてくれる買物ができた」「自分にピッタリの品物を買えた」「ずっと探していた商品を買えた」「穴場の店で買物ができた」等はすべて「賢い買物」に通じる。このように、お客の購買心理には「賢い買物」というプロセスが大切なのである。「愚かな買物」をしたという思いだけはしたくないために、大丈夫という保険を欲しがる。POPや接客で重要なのは、「その商品を買うことがいかに賢いか」を分からせることである。レストランにおける料理長のお薦めメニュー、百貨店のベテラン社員が太鼓判を押した商品などは「賢い買物」を証明する保険的要素になっている。

顧客に「賢い買物」をしてもらうための効果的なカウンセリング方法及びPOP表現 

a) アンチクライマックス法&クライマックス法
アンチクライマックス法とクライマックス法
お客を説得するとき、最初に結論を述べる方がよい場合と、後にした方がよい場合がある。最初に持ってくるのが「アンチクライマックス法」で、後に持ってくるのが「クライマックス法」である。スポンバーグという心理学者は、実験に基づいてこう述べている。「相手が関心を持っていない事柄の場合は、最初に強烈なデータを示しなさい。関心を持っている場合には最後に強烈なデータを見せなさい。」これはPOPを書くときに役立つ。お客が商品に興味を持っている場合は、成分や効能など「なぜお薦めするか」を先に示し、最後に結論を述べるクライマックス法がよい。お客が商品にそれほど興味を持っていない場合には、「1ヵ月でスリムになります」など結論を先に示し、ショックを与えてから理由を説明するアンチクライマックス法がよいというわけである。
b) 明示的説得&暗示的説得
心理学には、結論を明確にしてから説得する「明示的説得」と、結論を言わずに情報を多く与える「暗示的説得」がある。知的水準の高いお客が多い店舗では「暗示的説得」が効果的である。逆に情報が少ない地域の人々または知的水準がそれ程高くない人々には決め付け型の「明示的説得」が良い。
薬剤師 イメージ写真
米国では情報の開示が進んでいる。しかし薬剤師が情報をすべて患者に与えているかというと、必ずしもそうではない。なぜかといえば、患者の薬品の知識レベルが異なり、情報をすべて与えてしまうと副作用などの情報が頭に残り、服用しなくなってしまうなどの弊害が大きいからである。そのため薬品の情報は相手の知識レベルに合わせて行っている。
ドラッグストアの棚割では、機能別にするか、ブランド別にするかの議論がよく行われる。例えば化粧品の場合、口紅・ファンデーション・メークといった具合に機能別がよいのか、それともレブロン、マックスファクター等のブランド別がよいのか?「都会では情報が多いので機能別にするが、地方では情報が少ないのでブランド別にする」と述べていたドラッグストア従業員の言葉が印象に残っている。

賢い買物のために、お客は記憶から購買情報を引き出す 

お客は広告や口コミなどの情報を一時的に記憶し、既に持っている知識や判断基準に照らし合わせて商品を選択する。また実際に商品を使ってみて、その良し悪しを記憶し、次回の購入時の参考にする。このように、賢い買物をするために購買行動や商品の選択行動はすべて記憶の働きをフルに使っている。記憶には「感覚記憶」「短期記憶」「長期記憶」の3種類がある。情報は「感覚記憶」⇒「短期記憶」⇒「長期記憶」というステップで処理されて「記憶」になる。

 
a)感覚記憶
情報はまず「感覚記憶」として貯蔵され、直前の出来事の明瞭なイメージを保持する。視覚から得た情報は1秒以内、聴覚からの得た情報は4秒以内のものしか貯蔵されない。
b) 短期記憶
「短期記憶」とは、情報が処理される間一時的にそれを保持し、すぐ消えてしまう記憶である。例えば、コマーシャルやショーケースの商品を見て、「おいしそう」「安そう」「きれい」などと感じるのは短期記憶である。短期記憶の容量には限界があり、15秒以内で7つ程度の情報しか入らない。但し情報への関与の仕方次第でその容量が増えたり減ったりする。 テレビのコマーシャルは見ている人々の情報への関与の仕方が低い状態で流される。そのため、コマーシャルの製作者は訴求ポイントを3~4に抑えている。POPもシンプルに訴求した方が効果が上がるのはそのためである。
c) 長期記憶
バレンタインデー
「長期記憶」とは、われわれが一般的に使う「記憶」のことである。情報を保持するためには、短期記憶に留めておくか、長期記憶に送るかのいずれかである。短期記憶に留まる時間が長い情報ほど、長期記憶に保持されやすい。何回も繰り返されると短期記憶に留まる時間が長くなり、長期記憶に保持される可能性が高くなる。テレビコマーシャルがよい例である。 お客は長期記憶から情報を引き出すことで購買につながる。それは即ち「思い出す」ことであり「気付く」ことである。例えば、「お米がなくなっているから買わなくては」とか、「バレンタインデーが近づいてきたからチョコレートを買わなければ」などの場合である。

米国のNo.1スーパーマーケットクローガーは売り込みたい商品には、良い場所を割き、複数の場所で大量に陳列する。それによって、人間の感覚記憶や短期記憶に訴求し、顧客の長期記憶に保存されることを狙っているからである。

 

3)賢い買物に影響を与える目に見えるリアルな情報 

一週間で10kg減

具体的でリアルな情報は、統計的なデータに優ることがある。「1週間で10㎏減量した」 「2ヶ月で髪の毛が増えはじめた」「1ヶ月のレッスンで英語が話せるようになった」というような類いである。しかしよく考えてみれば、何人試した結果なのかさだかでない。例えば、1万人試した中でたった1人が1週間で10㎏減量できたのか。そうだとしたら確率が悪いし、太った人が10㎏やせたのか、痩せた人がさらに10㎏やせたのかも分からない。このように、冷静に考えれば疑念が生まれることも、「1週間で10㎏やせた」という情報に人間は飛び付きやすいものなのである。

POPを書いたり、陳列したり、デモ販売するときに大切なのは、情報をこと細かに表現するのではなく、目に見えるような表現(嘘はいけないが)をすることである。つまり、言葉のビジュアル化が大切なのである。消費者は、鮮明で目立つ情報に影響されやすい。しかもそこにニュース性があればあるほど過剰な反応や評価を示しやすい。


以前米国でジャパンバッシングが起きたとき、テレビで日本製のテレビや車が壊されているシーンを何度も見せた。ウォールマートでは「米国製品を購入しよう(Buy American)」運動をした(実際には東南アジアや中南米製の商品が多く、この運動を続けるのは困難があった)。 多くの日本人は、「これは大変なジャパンバッシングが起きている」という印象を持ったと思う。しかしあの画面を冷静に見ると、いつも全く同じシーンの繰り返しだった。つまり、米国で起きた極端な例を取り上げて何回も同じシーンを流していたのである。当時の米国人の一般的な反応はといえば、「どこの国で作られたかは関係ない。良いものは良い。」という冷静な見方だった。このように、人間は事実よりも目に見えるような情報に説得されやすい。


カリフォルニアキッチン

カリフォルニアキッチンというピザ&スパゲティのチェーン店がある。ここではオープンキッチン方式を取り入れ、お客の目の前で次から次へと料理を作っている。鮮度においては裏のキッチンで作ったとしても変わりはないが、「目に見える」という情報的価値を大切にしているのだ。スーパーバイザーが定期的にチェーン店をチェックしていて、一度私が目撃したシーンだが、キッチンで使うスパゲティのソースをチェックし、「ダメだ」と判定したものはお客が見ているその場で捨てさせていた。お客にしてみれば、「何て品質に厳しいんだろう」という印象を持って安心する。こうした行動もすべて、目に見える情報には説得力があることを利用しているのだ。

 
 
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プロフィール

ドラッグストア研究会松村清会長
ドラッグストア研究会
松村 清 会長 (まつむら きよし)
 

Excell-Kドラッグストア研究会(http://www.drugstore-kenkyukai.co.jp/)、Excell-K薬剤師セミナー、及びExcell-Kコンサルティンググループを率いる流通コンサルティング会社Excell-K(株)ドムス・インターナショナルの代表者。小売業、卸店、メーカーに対するコンサルテーションをはじめ、講演、執筆、流通視察セミナーのコーディネーターとして活躍。特にドラッグストア開発、ロイヤルカスタマー作り、シニアマーケティングのための実務と理論に精通し、指導と研究では第一人者。年間半年を米国で生活し、消費者の目・プロの目を通して最新且つ正確な情報を提供しながら、国内外における視察・セミナー・講演を精力的にこなす。

日本コカ・コーラ(株)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)を経て独立('90)。慶応義塾大学卒(法学)、ミズリ―バレーカレッジ卒(経済)、サンタクララ大学院卒(MBA)。東京都出身。

CVS

■全米No.1のドラッグストア ウォルグリーン

主な書籍
セールス心理学―「No!」と言わせない商談必勝法
セールス心理学―「No!」と言わせない商談必勝法
松村 清 著
商業界 版
単行本
ページ 221P
サイズ 四六判
 
ウォルグリーン―世界No.1のドラッグストア
ウォルグリーン―世界No.1のドラッグストア
松村 清 著
商業界 版
単行本
ページ 295P
サイズ 四六判
 
シニアカスタマー―中高年に好かれる企業が市場を制する!
シニアカスタマー―中高年に好かれる企業が市場を制する!
松村 清 著
商業界 版
単行本
ページ 212P
サイズ 四六判
 
サービスの心理学―心に染みるエピソード集
サービスの心理学―心に染みるエピソード集
松村 清 著
商業界 版
単行本
ページ 239P
サイズ 四六判
 
目からウロコ 販売心理学93の法則
目からウロコ 販売心理学93の法則
松村 清 著
商業界 版
単行本
ページ 247P
サイズ A5ソフトカバー
 
・「ニューシニア(50歳以上)をつかまえろ!!
・「 売上げと利益を運ぶロイヤルカスタマー
・「最強のドラッグストア ウォルグリーン
・「 米国ドラッグストア研究
(以上、商業界刊)。

バックナンバー

第25回 体の衰えとエイジフレンドリーな対応

第24回 心のつながり(ハイタッチ)

第23回 「ドラッグストア業態争奪戦」(PartⅡ)

第22回 「ドラッグストア業態争奪戦」(PartⅠ)

第21回 お客の欲求段階により大きく変化する品揃え

第20回 繁盛店はユニバーサルデザインとソフトのバリアフリーの両方を提供

第19回 シニアはわがままを聞いてくれる店が好きだ

第18回 シニアはシニアと呼ばれるのを嫌う

第17回 返報性の法則が大きく働く高齢社会

第16回 ロイヤルカスタマー作りはホスピタルティーがカギ

第15回 お客様は愚かな買い物を嫌う、賢い買い物をしたい

第14回 POPはサイレントセールスマン

第13回 “Rich Enjoy Discount, Poor Need Discount”

第12回 お客様は誰でもお得な買い物をしたい

第11回 価格に対する消費者心理の摩訶不思議

第10回 ゴンドラエンドは売り場の華

第9回 お客様に好かれる陳列の工夫

第8回 顧客の信頼を獲得するなら屋作り

第7回 有効なマーケティング手法になる音と香り

第6回 ゴールデンエイジ攻略の鉄則

第5回 少子高齢化のマーケティング

第4回 非計画購買が店舗に売上げ・利益をもたらす

第3回 ウォルグリーンが激しい異業態間競合を生き残れた理由 PartⅡ

第2回 ウォルグリーンが激しい異業態間競合を生き残れた理由 PartⅠ

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