弊所主宰の模倣防止協会のグループ団体、企業法務知財協会(http://www.clip-jp.org)では、毎月、企業様向けに知的財産や法務関連のセミナーを開催しています。
10月のセミナーでは、模倣防止協会のクライアントで、知財で事業を伸ばし成功されている企業のご担当者様にご登壇いただき、「事業を伸ばす知財業務」というテーマでお話をしていただきました。
また、この企業様の中国における模倣品対応をされているIP FORWARD法律特許事務所(http://www.ip-fw.com)の弁護士である本橋先生の「中国模倣対策の理論と実践」と、模倣防止協会会長である私の「事業を伸ばす知財業務をいかにして行うか」の3部構成で実施し、いつも以上に反響が大きかったので、今回のコラムでは、日々、中国模倣を専門に取り組まれ、成果をだされている本橋先生のお話しの内容からピックアップしてご紹介させていただきます。
中国の模倣パターンが複雑・高度化している
模倣品にもトレンドがあり、かつてはたんにブランド名をそのままマネするだけでありましたが、最近では、中国企業の技術力が年々向上してきたことにより、デザインや技術を模倣するパターンが増加、その内容も複雑・高度化しています。これに伴い、被害額も増大の傾向にあります。またこのような模倣品がECサイト上でよくみられるようになってきました。
中国知的財産権侵害の救済ルート
実際に中国で知的財産権侵害が起きた場合の救済ルートとしては、「司法ルート」と「行政ルート」の2つがあることが大きな特徴です。両者の異同を踏まえて、どちらのルートで対応するべきか、まずはご説明します。
司法ルート=民事訴訟提起
行政ルート=行政法執行
(専利権侵害の場合)
1.裁判所が審査
2.所要期間 : 6か月~1年程度
3.判決内容 : 差止め、損害賠償、金型の廃棄
4.和解の場合も、強制執行可能
1.地方の各知識産権局が審理
2.所要期間 : 3か月~半年程度
⇒スピーディな対応のため、
弁護士費用も安く済む
3.処分内容 : 差止め、(金型廃棄命令)
⇒損害賠償、罰金は認められない
4.和解に類似の調停による解決も可能。
この場合、調停事項に損害賠償金を含めることができるが、そのまま強制執行は不可。
例えば、「ここの業者は模倣品は扱っているが、あんまり売れていなそうだ。業績も良くなく、損害賠償を請求しても執行できないかもしれない。それよりもさっさと差止めした方がよい」というような判断した場合、行政ルートの方がよい。
侵害業者の調査の必要性について
□ 侵害業者の実態、規模、財産状態は?
□ 侵害品の流通状況、製造者は?・・・中国では、別の製造業者の場合もある
□ 侵害状況、証拠収集の見通しは?・・・裁判や行政執行に耐えられる証拠収集が可能か
上記を把握して初めて、とるべき対策が見えてきます。よって事前に把握する必要があります。
警告書送付対応について ~中国における留意点
上述の訴訟や行政法執行のほか、警告書を送付することも考えられます。公的機関を利用しない分、確実性は低くなりますが、よりスピーディに、より低コストで侵害を停止させることができる可能性があります。主に悪質性の高くない業者などに対して利用することが考えられます。
中国では、以下の点に留意する必要があります。
□ 送付後の交渉が重要である
⇒そのまま無視されることも多々あるので、こちらから架電して催促することが大切。
□ 再犯抑止力が低いためこまめな確認が必要
⇒調査会社などに依頼して、定期的に再犯がないか調査してもらう。
□ 必要に応じて、警告する前に証拠化を行うことも検討する
⇒警告書を送付した後でも模倣をやめない場合は訴訟も考えられるが、警告書送付後では、
模倣業者も警戒しているため、証拠化すること(公証購入)が困難。
⇒事前に証拠化しておき、警告書にも記載することが、模倣業者へのプレッシャーとなる。
中国模倣対策まとめ
□ 模倣品の実態と傾向、基本的な対応を理解し、早期発見、コストパフォーマンスを意識した
メリハリのある対応をすることが重要。
□ 自社製品を支える技術やデザインをどのような模倣がなされるかを考慮し、多角的に特許や意匠を出願すること。
□ 登録権利だけではなく、不正競争防止法の活用など、対策を総合的、横断的に考える。
□ 中国法プラクティスに精通し、コミュニケーションに支障のない特許事務所や法律事務所、 調査会社を活用。