売れる化粧品のデザインはスタイリッシュな英文字のロゴが表記してあってシンプルなものと思っている方が多いと思います。確かに外資系高級ラインのデザインは下のようなものが多いです。
外資系化粧品や日本の制度品はブランド専門の美容部員がわかりやすく説明する推奨販売をしているので、このようなシンプルなデザインであっても問題はありません。
同様に販売員が推奨販売するネットワークビジネス(訪問販売や無店舗販売)や広告やWEBサイトで事細かく説明して購入に導く通信販売やTVショッピングチャネルではこのようなシンプルなデザインで問題ありません。
業務用商品になると施術者が使用することを想定して、もっとシンプルになります。
このデザインでドラッグストアなどの美容部員のいないフリー販売チャネルの店頭で販売していたら、商品内容がお客様に伝わりにくいため、残念ながら売れません。
フリー販売の場合、商品パッケージ自体が販促的役割を果たす必要があります。ブランド名だけではなく、配合成分や特性まで日本語表記をします。効果が文言で表記ができない内容ならイラストや写真を入れるなど、わかりやすい表記にすると売れます。
最近は制度品メーカーでも店頭販売ブランドを販売しています。そのデザインはやはりフリー販売のセオリーにのっとったデザインを起用しています。
同じような特性を持つ商品をチャネル別で確認してみましょう。
フリー販売用商品は標記する文章も多くなりますので、薬機法・景品表示法、知的財産権など多方面のチェックが必要になります。
ある日、1本の電話が鳴りました。
美容機器メーカーのお客様A社からでした。
「うちの業務用ヘアドライヤーが、X社の商品の権利を侵害している! との訴状が届いたのです。どうしたらよいでしょう。」 慌てた様子でした。
さっそく、A社製品と登録意匠X社の商品を比較し、検証しました。
X社の登録意匠は、業務用ヘアドライヤーの全体形状を対象としていました。
両社の共通点は、
ヒータの部分がブーメラン型であるという点
私は、ふたつの意匠(デザイン)の相違点を検討し、主に以下の相違点があることを確認し、裁判においても主張しました。
両社の主な相違点は、
その結果、我々の主張が認められ勝訴することができました!
もし敗訴していたら、損害賠償を支払わらなければならないだけでなく、販売を停止し、在庫を処分する必要があり、大きな損失を受けた可能性があるのです。
今回のトラブルによって、お客様は、商品販売前の他社の知的財産権の調査の重要性を強く認識されたようで、これまで以上に調査、並びに鑑定のご相談を頂くようになりました。
なぜ意匠権者は、登録意匠とA社商品とがブーメラン型という特徴部分で似ているのに、訴訟で負けたのでしょうか。
私は、意匠登録の仕方に問題があったと考えます。
意匠出願当時、ヒータ部分がブーメラン型のデザインはありませんでした。すなわちヘヤードライヤ製品でブーメラン型はとても斬新だったのです。
そのため、X社は、ブーメラン型のヒータ部分のみを部分意匠として意匠権を取得していれば、ヒータ部分の形状が同一又は類似であれば、それ以外の形状が非類似でも権利範囲に入ります。
全体を構成する一部分ではあるものの、特徴的で独創的なデザインを持っている「部分」に対して発生する意匠権
また、複数の形態が類似する意匠を関連意匠として登録することで、1件の登録意匠に比べて広い範囲を意匠権でカバーできます。自社の実施範囲ではなく、将来他社が実施してきそうな範囲もカバーすることができ、強い意匠権網を作ることができます。
類似する複数のデザインについてそれらを相互に関連づけて意匠登録できる制度
意匠は、出願して審査を経て登録されると、登録意匠の図面が意匠公報に掲載されます。また、意匠法は、同一・類似の意匠であれば先に出願した方に優先的に権利を与える先願主義を採用しています。もし、製品発表が意匠登録より後の場合には、秘密意匠制度を利用することをお勧めします。これにより、他社より早く出願して意匠登録を受けると共に、その図面が意匠公報に掲載される時期を製品発表まで延ばすことができます。
意匠の登録日から3年以内の期間については、意匠を公表せず秘密にしておける制度
卸売店を介さずに、その化粧品メーカーと直接取引契約を結んだ小売店で販売される化粧品のことです。
エステサロンや理美容室で施術者のみが使う専売商品になります。
美観をおこさせる外観で量産可能な物品のデザインを保護する権利で、最長登録から20年間独占保護することができます。
登録されるには、主に、新規性(出願時に同一・類似の意匠が公知でないこと)と、創作性(その意匠の創作にある程度の困難性があること)とが要件になっています。
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