知的財産権セミナーより
化粧品が売れるようにするには、商品コンセプトや効果などがお客様に伝わりやすいことが大切です。そのコンセプトや効果をどう伝えるかは、販売チャネルによって違います。
美容部員が推奨販売するチャネルでは、商品名が商品内容を直接的に表していなくても、高級感がありながら、意味がわかりにくい外国語の商品名でも問題なく売れます。商品知識や美容知識が豊富な美容部員が商品内容や使い方などを事細かく説明して販売するからです。
ところが、美容部員がいないドラッグストアやGMS※1などマス・マーケティング※2市場では、商品特性がわかりにくい商品名では売れません。ドラッグストアやGMSなどの店員は美容知識が乏しく、商品説明を求めても明確な説明はできないからです。
そのようなチャネルに導入する商品は、わかりやすい商品説明をパッケージデザインや商品名で示さないと、お客様に商品特徴が伝わりません。
その商品特徴を一番アピールしやすい商品名に商品特徴が入っていれば、お客様はパッケージに表記してある細かい説明を読む必要もなく理解できます。高級感のある英語由来の商品名を日本語表記の商品名に改名して大ヒットしたものもあります。そして、その商品名がオンリーワンの商標であれば、なお、強力なアピールポイントになります。
事例としてあげると、エステーの「消臭力®」、小林製薬の「ケシミン®クリーム」、ライオンの「キレイキレイ®」クラシエの「ナイーブ®」など、商品名やブランド名を見ただけで、商品内容が理解できます。
特長のわかりやすい名前は、すでに商標を取られていて使用不可のものが多いので、新たにわかりやすい商品名をつけるためには、商品差別化のためにも、造語を考案することをお勧めします。単語ふたつ以上を組み合わせてひとつの単語にしてもいいと思います。
先ほどの事例では「消臭+力」で「消臭力」、「消す+シミ」で「ケシミン」などです。
造語を創る際には、見た目同様に耳で聞いた時の音によるイメージを大切にすると商品イメージが向上します。たとえば「さ行」はさわやかなイメージに、「だ行」は力強いイメージに、「ぱ行」は活発なイメージに伝わりやすいと言われています。
商品やサービス名を保護する商標権は、登録し、更新し続ければ、永続的に貴社のブランド名として使い続けられると前回お話いたしました。
この章では、商標を出願し、登録されるための要件についてお話します。
◆同一・類似商品について、他社の登録商標などと同一・類似ではない。
◆識別力がある。
指定商品・役務について一般的に使用される名称等は識別力は低い。
一般的に使用される名称等ではない場合は、識別力は高い。
では、「識別力がない」とは? 商標法第3条を簡単に説明します。
1.商品やサービスの普通名称は ×
× 商品「みかん」 商標名「みかんちゃん」
× 商品名「スマートフォン」 商標名「スマホ」
役務「損害保険の引受け」について、商標「損保」
2.慣用商標は×
普通名称ではないが、同業者間で使用されていた場合、
識別力がなくなってきた場合
商品名「清酒」について、商標「正宗」
役務「宿泊施設の提供」について、商標「観光ホテル」
3.商品の産地、販売地やその商品の特長や品質、効能、時期、形状などをあらわす商標は ×
商品「みかん」に商標「岡山」
商品「みかん」に商標「甘酸っぱい」
4.ありふれた氏または名称は ×
「田中」、「山田」、「鈴木」など多数の同種の氏は ×
※あまり少ない氏は登録できる可能性がある。
「○○工業」や「○○商店」、「株式会社○○」など
ありふれた氏に業種名や屋号等が加えることも ×
5.きわめて簡単で、かつありふれた商標は ×
直線や、円、数字やローマ字が1か2字、仮名文字1字は ×
6.その他、需要者が何人かの業務にかかる商品・役務であることを認識できない商標は ×
Ex.キャッチフレーズ
拒絶例・・・「キレイと元気」、「賢い選択」
登録例・・・「マイナス5歳をめざすブラ」、
「からだにうれしい」
しかし、識別力が低そうに見えても、商標登録される例もあります。
IPP国際特許事務所に依頼されたあいまいな識別力でも商標登録できた一例
「サロンまるごとサポート」 「美容乾物」 「京都ステイ」 「体温管理士」
「肉塊ハンバーグ」 「フェースカード」 「帰国子女アカデミー」
よって
その商標を使用する場合は、識別力がグレーであっても商標出願をすべきです!
もし他社に先に商標登録されてしまったら、その商標をビジネス上で使用できなくなってしまいます。もし、商標出願せずに、その商品名で容器やパッケージが完成し、店頭に並び、チラシや広告まで展開した後に、他社から指摘された場合は大変な損害となることは想像できますね。
よって、識別力がグレーの商標を使用する場合は、他社に登録されてしまうことを回避するために出願をすべきです。仮に、拒絶査定※3になっても、他社が後から出願して商標登録されている可能性は非常に低いので、安心してその商標を使用できます。また、識別力がグレーの商標を登録できると、その名称を商標権者のみが商標として使えるので、大きなビジネス効果を得られることもあります。
general merchandise storeの略で食料品、日用品だけでなく、衣料品、家電、家具などの日常的に使うものを総合的に扱う、大衆向け大規模小売店「総合スーパー」のことです。
大量生産・大量販売・大量プロモーションをかけて、すべての消費者を対象に同じ方法で行うマーケティングのことをいいます。
審査の結果、審査官が出願を拒絶する場合に行う査定のことをいいます。(特許法第49条)。拒絶査定に不服がある場合には、拒絶査定謄本送達の日から3月以内に、拒絶査定不服審判を請求することができます。
商標出願と商標権
商標権は、商品名やサービス名を独占的に使用できる権利です。5年または10年ごとに更新すれば半永久的に権利を保持できます。商標は、区分(カテゴリー)が決まっておりその区分毎に出願し、特許庁の審査を経て登録され、商標権が発生します。出願したい商標は、他社(者)がすでに登録していないか事前に調査することをおすすめします。
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