化粧品や美容機器、健康食品などを製造または販売する際に「知的財産権」について考えたことはありますか?
「知的財産権」とは、簡単に説明しますと、~アイデアや発明などで生み出された無形財産(製造処方、技術やデザイン、商品名やネーミングなど)を、一定期間、自社(自身)の財産として独占保護する国の制度~です。
化粧品や美容機器、健康食品は似たような商品が市場にあふれています。一時流行したコラーゲン配合商品などは、ドラッグストアや通信販売、TVショッピングなど複数のチャネルで多数のメーカーが販売をしました。似たような商品は差別化訴求が難しく、価格が安いものや広告宣伝量の多い商品だけが売れたという現象が起こりました。
そうなると、中身の有効成分が少なくて原価の安いものや、広告宣伝費をふんだんに持つ大企業でないと売れないということになります。
お客様の健康や美容に貢献しようと広告費を省いて、その代わりに処方にコストをかけた優秀な商品を開発しても、お客様にその情報が伝わらず、手に取ってもらえません。
また、御社の商品が今までにない画期的な独自の処方で開発したものなのに、市場で販売開始したとたんに真似をされ、多大な広告費で大々的に宣伝をされて、市場を奪われる可能性があります。
つまり、売上を見込んでいたのに全く売れない、利益の損失という事態に陥る危険性が出てきます。そうならないためには、御社の商品は競合他社に真似をされないように、法律で守る必要があります。
このような場合の、ビジネス上の知的財産権戦略を説明します。独自の処方の開発段階で、知的財産権の中で、特許権などの権利の出願が可能になります。この技術の情報は、1年半は公開されないため※1、この期間に、「自社オリジナル成分は特許出願中ですから、市場で勝ち抜ける可能性が高いです」ということを切り札に、業務提携やライセンスなど、競合他社と友好的な関係を締結する事業戦略を立て、営業することができます。また特許権は企業の無形財産でありますから、資金調達にも重要視されます。
発明やアイディアは、それを公開する前に特許出願又は意匠登録出願してください。出願前に公開してしまうと、出願時に新しくしなければいけないという特許や意匠の要件を満たさなくなり、出願が拒絶されてしまいます。
また、知らずして、特許技術を持った他社の美容機器とそっくりの商品を販売して、訴えられて、賠償金を請求されるような事例もあります。
このような場合の、ビジネス上の知的財産権戦略としては、事前の調査がとても重要になってきます。開発時点で他社の知的財産権の調査をすること※2で、他社の権利を抵触※3してしまうトラブルを防ぐことができます。または、他社の権利を抵触しないような出願も可能になってくるということです。それ以前に、開発する前から、調査をしていくと、これから市場をにぎわすであろう貴重な情報を得られることもできます。
上記のとおり、知的財産権はビジネスの切り札であり、いかにビジネスに活用するかがとても重要となってくるのです。それも、美容ビジネスには、この業界ならではの、独自の知財戦略があります。
今回の連載コラムは、美容業界で多くの経験を経て、美容ビジネスコンサルティングとして活躍される中野先生と、知的財産権のビジネス戦略を得意とする模倣防止協会会長/IPP国際特許事務所所長松下先生の最強コンビが、ここだけでお届けする特別なビジネスノウハウコラムを、月1回全6回でお伝えしていきます。
※1. この技術の情報は、1年半は公開されないため
特許出願は出願から1年半の間非公開となります。そのため、非公開の間では、特許出願をしていることをPRしながら、その詳細をブラックボックスにするという戦略が取れます。競合にとっては類似の製品・サービスを出し難くなります。特許権は、最長、出願から20年間持つことができます。 企業の無形財産でありますから、資金調達にも重要視されます。自社の特許の価値を明らかにして、金融機関などからの融資を受けることが可能な場合があります。
※2. 開発時点で他社の知的財産権の調査をすること
特許事務所などに依頼すれば、自社の技術やデザイン、名称などと似たような範囲で権利化されているか否かの情報を入手することができます。これは、競合他社の動向も把握できますし、今後ビジネス展開していくための有益な情報もあります。
※3. 抵触
自社が商品化する技術、デザイン、ブランド名等が、他社の権利を侵害している(権利の範囲にはいっている)ことです。
無形財産
無形資産とは、物的な実体を伴わない資産。発明、ブランド、デザイン、特許や商標権、著作権といった知的資産、プレゼン資料、セミナー資料、製造ノウハウ、営業ノウハウ、社員の持つ営業力、技術や能力といった人的資産など。
知的財産権の種類
産業財産権という以下の4つの権利と、著作権など、他があります。一定期間独占使用できる権利です。
■ 特許権
発明と呼ばれる新しいアイディア。出願から20年間独占保護される。
■ 実用新案権
物品の形状等に係るアイディア。無審査で登録。出願から10年間独占保護される。無審査で登録になり、登録証が得られるので、営業PRに使える。
■ 意匠権
物の形状、模様など斬新な大量生産する工業デザイン。登録から20年間独占保護される。
■ 商標権
商品やサービスの名称やロゴ。登録から10年独占保護され、更新すれば半永久的に使用できる。
■ 著作権
文芸、学術、美術、音楽など、人間の思想、感情を創作的に表現したもののこと。著作物を捜索した時点で自動的に発生する権利。
■ その他
不正競争防止法など 事業者間において正当な営業活動を遵守させ、正当な競争を確保する法律。公正な市場を確保することが目的。
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