ブランドとは何でしょうか?
他の何者にも代えられない独自の個性・魅力を持ち、その名前を聞いただけで生活者の心に商品やサービスの具体的なイメージを喚起させ、欲しい、買いたい、利用したいと思わせる力を持つ。それが理想的なブランドのあり方です。 いまやブランドをいかに創造し、そのブランド力を維持するかは、企業にとっての命題になりました。目に見えないながらも、企業の資産になることが知られてきたからです。
化粧品も例外ではありません。いえ、イメージが売り上げを左右することの多い化粧品の世界では、ブランドアイデンティティを確立する意義は大きいのです。
ブランドアイデンティティとは、ブランドをそのブランドたらしめるユニークで一貫性のある特性を意味します。ほかの何者にも代えられない独自の特徴を創造することが、ブランドアイデンティティを確立するということです。
では、どうやったら強いブランドを創り、ブランドアイデンティティを確立することができるのでしょうか?
最初に着手すべきは、この化粧品はどんな人を対象とするのか、どのようなシーンでの利用を想定しているのか、どんなイメージや効果を提供するのか、これらを明確に設定することです。
つまりは、ターゲットのライフスタイル、どんなテイストの洋服を好み、どのような生活を送っている人なのか、を具体的に描き、物語性を作りあげること。そして、それをきちんと生活者にアピールする必要があるのです。
ブランドアイデンティティを感じ取ることができなければ、星の数ほどあるブランドの中から生活者に選び取ってもらうことはできません。「ああ、こういう人が使うブランドなのだ、この化粧品はこういった価値観、ライフスタイルの持ち主を対象にしているんだ」「自分に向けられて創られた商品なのだ」ということを具体的にイメージし、感じてもらって初めて、ブランドはブランドたり得ます。
具体例を挙げてみましょう。
アメリカには、MACという人気ブランドがあります。日本にも進出を果たし、根強いファンを獲得しているブランドですが、MACの描くターゲット像は実にはっきりとしています。
一流のメイクアップアーティストが開発したMACは、都会に住み、シンプルなライフスタイルを好み、自分に似合った色を自分の価値基準で選び、さらに化粧品を買うと同時にプロのテクニックも教えてもらいたいと考える女性を対象としています。
だから、MACの色のヴァリエーションは実に豊富です。全部で200色ほどあるでしょうか。これだけの数の中から自分にあった色、好みの色を自分の選択肢で選びたいと思う女性がMACのターゲット。また、MACはプロのメイクアップノウハウも同時に提供しています。プロのテクニックを自分のものとして取り入れたいという女性の志向に応えているわけです。
商品から店頭の接客までブランドアイデンティティにぶれがなく、強固に確立されているからこそ、MACは見事に同じ志向の女性の支持を集め、ターゲットを獲得できました。そうして、口コミで評判が上がり、リピート購入する女性が相次いだのです。
ブランドアイデンティティを明確に確立すると、自分とはあまり関係がない、私には縁がないと考える女性が多くなる、というデメリットが考えられがちです。
しかし、そこにこそ意味があるのです。全方位でできるだけ多くの女性の利用を狙ったブランドは、結局は誰の関心も得られないという可能性が高いのです。ターゲット像に近い女性だけに使ってもらいたい。こんな風に潔く割り切ったブランドでなければ、現在のようにたくさんのブランドが氾濫しているマーケットで光り輝き生き抜くことは不可能です。
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