コンコルド広場付近~凱旋門へ。4月のパリはまだまだ寒々しく、通りを歩いている人もまばらです。
今回は、パリの化粧品販売現場をレポートします。
4月のパリは、例年ストライキ真っ最中の時期のようで、思うように電車が動かず、移動に難航しましたが、さすが世界に名だたる観光地。
旅行者にやさしく、通りの名前が分かりやすく書かれているので、迷うことなく歩き回れます。
セーヌ川が真ん中を貫くパリでは、気温はそれほど低くなくても、通りを時折突風が吹き抜け、まだまだコートは必需品のよう。東洋風の織りが入ったショールが流行中のようで、シンプルなモノトーンやベージュのコートに、複雑な色合いのショールをぐるぐる巻きにしている姿が街中でちらほら見られました。日本のおしゃれなお店で買うと、7、8000円はくだらないであろうショールが、露天などで5ユーロ(730円程度)で手に入ったりもするので、いいなあ、と思ってもすぐにお財布を緩めず、目で見て、足で探す心意気が大事です。
さて、ショウウィンドウをチェックしながら、右岸を西から東へ。
パリの化粧品販売店は、大きく分けると5種類あり、
①百貨店などに入っている化粧品売り場。
②一時期日本にも入っていた「セフォラ」などの比較的大きな化粧品の専門店の集合体
③街のいたるところにある、ファーマシー系の化粧品屋さん
④いくつかのブランドが集まった化粧品の専門店で一緒にアクセサリーなど、他のものを売っているお店
⑤街にある単一ブランドの専門店です。
オースマン通りのオリエンタル調の雑貨屋さんに、なんと、狛犬が向かい合って展示されていました(笑)。こんなギャップも、街歩きの楽しみの一つです。
①は、プランタン、ギャラリーラファイエットなどが有名です。
ブランド切りだけでなく、百貨店によってはコンセプトに沿ったアイテム紹介などもありました。
日本と同じく、オーガニック志向のものが人気のようです。
②で注目すべきは、メンズコスメが、フロアの半数近くを占めていたこと(リーヴォリ通りのセフォラ)です。それも、おまけのように一番奥にコーナー設置されているのではなく、エントランスからすぐの場所など、目立つ場所にラインナップされていました。EUの化粧品出荷額の1/3はメンズコスメだと言いますが、日本ではまだ4.2%程度(矢野経済研究所調べ)なので、ここにはまだまだ伸びしろが見て取れます。
パリのファーマシーでよく見られた広告セルライトケアのクリーム広告です。強烈なビジュアルで、インパクト十分。
③は、日本のドラッグストアのような鮮やかさはなく、
白を基調にした清潔感のある店内では、白衣を着た薬剤師さんが何度も「何をお探しでしょうか?」とコンタクトしてきます。
日本だとバラエティストアで相当な値段がするものが、お手軽価格に手に入ったりもするので、日本の市場価格を知っている人が訪れるのに、面白い場所かもしれません。
ここ発で大ブレークしている下地クリームなどもあるので、じっくり探してみると次のヒット表品が潜んでいるかもしれませんね。
薄着の季節が近いせいか「デトックス」や「アンチセルライト」など、日本と似た傾向を思わせるPOPが目立ちました。
コスメとジュエリーとのコラボレーション。高級感がある店でも、細かい一品一品にまでプライスがついていることが多いので、他店との比較が検討しやすいです。
④ディスプレイのうまさは、ここが一番。
化粧品と、そのパッケージに良く似た色合いのジュエリーを組み合わせて飾ってあるものが、よく見られました。
また、ちょうどイースター時期だったせいか、卵をモチーフにした飾りも多いようでした。
日本の化粧品の露出も、決してパリに負けていません。ただ、見習いたい点があるとするならば、ディスプレイ技術の素晴らしさ。
④でも書きましたが、イースター時期に合わせた、カラフルな卵や、季節の花々など、その季節を表す、わくわく感をかきたてるようなディスプレイが目立っているようです。
イースターエッグを使ったディスプレイ。季節感を感じるアイテムが、誘目度をアップさせていました。
取り替える頻度が多いと、飾る側は大変だろうな、と思いつつ、店員さんたちがにこやかに談笑しながら、ああでもない、こうでもないと、展示物を取り替えている様子は、見ている側もなかなか楽しくなりました。
アイテムを「見せる」だけでなく、実際に手に取りたくなるように「魅せる」力は、ますます競争が激化している化粧品をアピールするために、不可欠なことです。
四季の移ろい、花鳥風月に敏感な日本人が、こういったシーズンを捉えた手法を蓄積させ、成長させると、欧米の同業他社よりもよりももっと、得意分野になるかもしれませんね。
春の花、桜を使ったディスプレイ。流行のラベンダーやピンクは、街中でもよく見られる色でした。
化粧品のディスプレイは、VMD(視覚的演出効果)を司る、大事な要素です。
VMDとは、マーチャンダイジング(「「ターゲットに、何を、いくらで、どのように提供するか」ということ」)を、視覚的に訴求していくことであり、消費者にとって「見やすく、選びやすく、買いやすい」売り場を積極的につくっていくことにほかなりません。
例えば、色を効果的に使うなど、ひとつの方法でしょう。
そして今回のパリでも見られたように、春なら桜、イースターなら卵と、季節を感じさせる訴求も、ウインドウショッピングしに来る人の心に響くでしょう。
また、テクニックとセンスを要する方法ではありますが、真夏向けのアイテムなのに雪の結晶をモチーフにしたディスプレイなど、大きく期待を裏切るものなども、見るものの心に残るに違いありません。
いずれにしても、そのブランドの存在意義である、明確なコンセプトを確立し、それをディスプレイへと反映することが肝要です。
「流行っているから」「なんとなく良さそうだったから」というその場しのぎの選択は、やがて消費者に飽きられてしまうに違いありません。
余談ですが、今パリではハマムがじわじわ人気とか。ハマムとは、浴室内に蒸気を充満させたトルコ式のお風呂のこと。いろんな肌の色をした女性たちが裸でくつろぐ姿は、とても迫力があります。
なにかとお風呂事情が厳しいパリに訪れた際には、歩いて溜まった疲れを癒すべく、訪れてみられてはどうでしょうか?曜日によっては男性もOKです。
私が訪れたのは、左岸にあるパリの胃袋、ムフタール通りに程近い、イスラム寺院の中にあるハマムでした。まだ日本では珍しいものなので、貴重な体験になるに違いありません。