スキンケアに対する女性の意識は、「エイジレス」という言葉に端的に表れています。
年をとってきたのだから、肌が衰えるのは当たり前、多少のシミやしわ、肌のくすみやたるみは仕方がないー。こんな風にあきらめる女性は少数派になりました。
そもそも、老化とはなぜ起きるのでしょうか?
その原因は、日進月歩で解明されていますが、老化には、加齢により肉体的な機能が衰えていく自然老化と、紫外線をあびることによって起きる老化の2つがあることが明らかになっています。
皮膚の色がくすんでいったり、シミが増えたり、皮膚のつやがなくなって乾燥したり、深いしわが増えたりといった変化をもたらす主犯が、この光老化。紫外線によってつくられる活性酸素(フリーラジカル)という有害な酸素が、皮膚を参加し、その蓄積が光老化となって現れます。
そして、老化の80パーセントが、この紫外線による老化によるものなのです。
内的要因である自然老化を防ぐことはできませんが、生活習慣や環境によって外的要因である紫外線を防ぐことは不可能ではありません。同じ年齢でも肌の状態、つまり肌年齢が人それぞれなのは、紫外線対策が違っているから。長い時間をかけて、生活習慣は肌に影響を与えます。個人の努力次第で、老化はかなりの部分で抑制することができるのです。
老化の原因を知れば、アンチエイジングと美白とがいかに密接な関係にあるかがよくわかります。どちらにおいても、最大の敵は紫外線。美白効果は多くのスキンケア化粧品の標準仕様となっていますが、すでに、美白とアンチエイジングの両方を追求する化粧品もたくさん発売されています。
美白とアンチエイジングは単独の機能ではない、密接に結びついた機能なのです。これからは、美白とアンチエイジングを同時に追求できる化粧品が標準になっていくと思います。その上で、何にハイライトしているかが商品特徴になっていくことでしょう。
医学の進歩が化粧品を変える
日々進化を遂げるスキンケア化粧品。その進化の背景で見逃せないのが、美容医学の進歩です。 昔は、肌のメカニズムの解明は、表皮、真皮、皮下組織の三層までにとどまっていました。 しかし、現在は違います。細胞レベルにおいても科学的な解明が進みました。
最新の化粧品には、DNAの領域に至るまで老化の仕組を探り、それを回避しようという、科学の英知を駆使した試みが多数導入されています。
学術的な皮膚理論が展開され、それを踏まえた新しい化粧品が市場に投入され、以前であれば、夢でしかなかった化粧品が現実のものとなってきました。
女性は、皮膚のメカニズム解明の進歩を知っています。医学の世界も科学の発展を背景に、女性のアンチエイジングのニーズに応えようとしてます。ニーズとシーズ、2つの動きが呼応しスキンケア化粧品の世界は変貌を遂げています。
化粧品の効果を適切に伝える重要性
化粧品が持つ心理効果にも触れておきたいと思います。
きれいになると自己暗示をかけながら化粧品を使えば、自信が生まれます。化粧品を使うことで健康的に見えるようになれば、気分が変わり、実際に精神が高揚し、健康な状態に近づいていきます。自分が納得して手に取った商品を使えば、それが自信となって現れる。化粧品には、そんな力が備わっています。
しかし、こうした化粧品の奥行きのある可能性は、売り手を介して、はじめて女性に伝わり、受け入れられていきます。どんなに優れた製品を作ったから、開発したからといっても、その内容を適切に伝える手段と努力がなければ、現実に効果を発揮できる機会すら与えられません。
どのような皮膚理論をベースにしているか、どんな特性、個性があるのか、使うことでどんなメリットがあるのか、ここの女性の志向に沿った商品の具体的な使い方、楽しみ方とは何なのか。買う人に直に接する売り手側の優れた資質と努力がなければ、進化を続ける化粧品の可能性を表現することは難しいのです。
スキンケア化粧品とは、肌に直接つける化粧品です。肌の調子をよくしたい、老化を遅らせたいと、可能性に身を託しながら、使用する化粧品です。女性の心理と深い結びつきがあり、それゆえに愛着を感じやすい商品です。
だからこそ、適切な情報を伝えることのできる人の力が何よりも物を言います。化粧品メーカーとして、どのような発想でモノ作りを行い、それを女性に伝えていこうとするのか。科学を踏まえて企業意志のある商品開発に取り組み、その成果を生活者に正しく伝えようとする企業の絶え間ない努力が、スキンケア化粧品の命運を握っています。
スローコスメの時代
高機能な、ハイテクを駆使した化粧品が話題を集める一方で、ケミカルな処方ではなく、植物の持つ力を使い、より全体的な立場から働きかけるホリスティックな化粧品も脚光を浴びています。 食の分野で話題の言葉に、「スローフード」があります。
その地方の特色ある郷土食や生鮮食品、加工品などの食材やお酒を見直し、食そのものをじっくりと味わおうと言う活動をさす言葉ですが、この言葉にならえば、化粧品にも「スローコスメ」の時代が到来したといえるかもしれません。私たちがこれまで使ってきた、長い歴史のある化粧品に問題がなければ、それを使うのもまた一つの選択肢。使う過程を楽しみながら、綺麗になる。共感できる化粧品と自分が一体となって、自分なりの美しさを追求する。スローコスメとは、こういう志向の表れです。
もちろん、女性の中にはスローコスメよりももっと、高い技術、高度な機能を持つ化粧品を好む女性もいます。ハイテクに心惹かれるという女性もいます。
しかし、スローコスメを志向し、自然の力の中に身をゆだねて、ゆっくりじっくりと化粧品と向き合う時間や行為を楽しむという女性が増えてきたのもまた事実です。多様化する女性の志向の中で生まれた一つの現象に素直に目を開き、耳を傾けて、スローコスメの台頭が何を表しているかを知ることは、ビジネスチャンスを探ることにもつながります。