大手百貨店が売り場に専用のコーナーを設けたり、雑誌で特集を組まれたりなど、あらゆる場所でLOHASという言葉が見られるようになりました。
化粧品業界のニュースとして、フランスのロレアル社が英国のTHE BODY SHOPを買収した話はすでに広く報道されています。そして、THE BODY SHOPの収益率に対して、相当高額での買収だったようです。
THE BODY SHOPを立ち上げたANITA RODDICKさんが1976年に初めて店舗を開店した時は、LOHASという言葉は存在すらしませんでしたが、LOHASで重視すべき要素を網羅していたところに、先見の明があったようです。
THE BODY SHOPをロレアル社が買収した理由がここにあります。ロレアル社は動物実験で実証された成分を使用しているメーカーとして知られています。一方THE BODY SHOPは、ナチュラル成分を配合した化粧品を生産、販売することで有名なメーカーです。ロレアル社はTHE BODY SHOPの収益を期待しているのではなく、ナチュラル成分とそれから生産されるナチュラル製品を重視するメーカーを傘下に入れることで、企業イメージの転換を狙ったと見られています。LOHAS志向と企業活動が結びついた、一つの例です。
LOHAS的視点を持った商品開発の例を挙げましょう。原材料の調達の場合、天然素材か、有機的に育てているのか、貴重な植物などを使っている場合は過剰搾取していないか、現地の生態系を破壊していないかということが、まず注目されます。
さらに海外から調達している場合、フェアトレード(公正な貿易)精神にのっとり、現地スタッフに適正価格を払っているのかなどが挙げられます
。製造方法における環境汚染の防止はもちろんのこと、容器製造時の環境負荷、工場で働いている人たちの労働条件などもチェックポイントに含まれます。
せっかく素晴らしい化粧品・健康食品を作っているのに、働いている方々が不健康であったり、過労であったりしたらLOHASとは言えません。販売、流通方法、消費段階においても、過剰消費を強制していないか、虚偽の表示をしないかなどが気にされます。
そして最後、消費が終わって廃棄の段階にきた時に、どの程度リサイクル可能なのか、できない場合の処分方法まで意識して製品が作られているかなどがチェックポイントになります。
以上のことを満たしつつ、働いている人たちと消費者(生活者)との距離が短く、お互いにコミュニケーションをとれる関係であることが、LOHASが目指す社会に近い生産・消費活動のあり方と言えるでしょう。
THE BODY SHOPの例では、LOHASが目標としては掲げられていません。他にもLOHAS消費者に支持されているメーカーとして、衣料品・アウトドア用品のPATAGONIA、アイスクリーム製造業のBEN&JERRY'S、健康食品をつくっているCLIFなどがありますが、共通している点は、THE BODY SHOP同様、初めからLOHAS消費者を意識しているわけではなく、社会における企業のあり方を深く検討している創業者が多いという点です。これらの企業が提供するものは、「商品」という形で最終的には消費者に届けられますが、その時々、製品一つひとつに誠意を持って情報を開示し、努力してきたこと、現在挑戦していることを正直に伝えていくのがLOHASマーケティングと言えます。
従ってこれらの企業の方々は、自社利益は勿論のこと、社会が豊かになっていかなければ事業が継続していかないことを意識して、チャリティにも積極的に参加していきます。そうすることで、最終消費者である個人との繋がりを、製品を超えた部分でも作り上げていくのです。商品の背後にあるものをどれだけ伝えられるのか。その能力もLOHASにおいては欠かせない要素と言えるのではないでしょうか。