伸びるチャネル、低迷するチャネル
もっとも高いシェアを占めているのは
1の制度品で、市場全体での構成比は約35%といわれます。
ただし、10年ほど前までは40%以上の数字を誇っていました。それが年々減少していったわけですが、その理由は、2の一般品や4の通信販売品にシェアを奪われた結果です。
しかし、減少率も最近は一段落し、現在ほぼ35%前後で安定しているようです。それは、制度品の主要な舞台である百貨店が健闘しているからです。
百貨店の化粧品売り場は相次いでリニューアルに踏み切り、売り場を広げています。外資系メーカーの高級ブランドのほとんどは、百貨店が主なチャネルですが、こうした他では手に入らない化粧品が揃うのも、百貨店の魅力の一つ。生活者は、カウンセリングを重視して購入したい場合は1の制度品を選び、気軽に購入したい時は2の一般品を選ぶといった具合に、チャネルを使い分けています。
また、地元の顧客をがっちりとつかんでいる化粧品専門店の中にも、強い店がたくさんあります。カウンセリングを通し、ビューティアドバイサーのアドバイスを受けながら化粧品を買いたいという志向は以前より減ってきたとは言え、依然として強いものがありますから、制度品が急に落ち込むといった事態は考えにくいでしょう。
1に次いでシェアが高いのが、2の一般品です。
マツモトキヨシのような一般品の台頭、ソニープラザのようなヴァラエティストアが化粧品に力を入れた結果、セルフで購入できる一般品のシェアは少しずつ高くなり、現在は30%程度を確保しています。
セルフ化粧品イコール低価格化粧品というイメージも薄まり、売り場には数万円もの価格の高級化粧品も並んでいます。ビューティカウンセラーの存在を気にすることなく、自由に見て、購入できる一般化粧品の構成比が伸びているのは、生活者が雑誌やクチコミを通して得られる情報をもとに、自分の目で商品を選び取る力がついてきたことと、店頭ディスプレイ等のレベルアップによるためでしょう。
伸び率が最も高いのが、4の通信販売化粧品です。
通信販売に対してなんとなくいかがわしいイメージを持つ人は、本当に少なくなりました。構成比はすでに15%程度にまで達し、DHCやファンケル、ハーバー研究所のように急成長を遂げるメーカーが多いチャネルです。
訪問販売化粧品メーカーの最大手であるポーラ化粧品本舗も、通信販売専用のブランド、オルビスを手がけていますが、こちらも同様に好調のようです。ポーラ化粧品本舗は、通販チャネルに着目し、ポーラの名前を伏せて、通販専用のブランドとしてうまくオルビスを軌道に乗せました。
通信販売には、他チャネルのメーカーも進出を図っています。制度品は、チェーン店を全国に持ち、ビューティカウンセラーを派遣するなど、ある程度の企業規模が求められますが、通信販売の場合、店を構える必要はなく、ビューティカウンセラーも必要ありません。低コストでのビジネス参入が可能です。生活者の志向を捕らえ、他メーカーと差別化した個性的な商品を開発し、それをうまく生活者にアピールすれば、新規参入であっても十分に成功のチャンスがあるチャネル、それが通信販売です。
逆に減少傾向なのが、3の訪問販売品です。
女性の在宅率の低下を受けて、訪問販売化粧品メーカーの売り上げは減少し、以前25%以上あったシェアは20%以下に落ち込んでしまいました。女性の社会進出が加速している状況のもと、訪問販売が大きく盛り返すことは考えにくいのです。
厳しい外的条件を受けて、訪問販売化粧品メーカーは、エステティックサービスを取り入れた新しい販売形態を作り上げています。訪問販売員が簡易なエステ機器を持参して、顧客の自宅でフェイシャルトリートメントを行ったり、地域の営業所の一角にエステが可能なスペースを設けて、顧客サービスに努めるといった取り組みです。
エステを導入した営業所の中には、地域のサロンへ発展したところも少なくありません。訪問販売化粧品は、訪問販売員の人脈や地域における強固なネットワークが最大の武器。これらを活かしたサービスの充実で生き残りを賭けています。
5の業務用品のシェアは2%程度。
美容院やエステティックサロンといった限定した場所でプロが使用する化粧品であり、大きな変動もなく安定したシェアを維持しています。もっとも、美容院の中にはフェイシャルトリートメントをメニューとして取り入れる店が増え、エステティックサロンの中には、業務用の化粧品を「プロが使う化粧品」として販売に力を入れるところが多数あります。こうした動きが加速すれば、業務用化粧品のシェアが増えることも考えられますが、全体に及ぼす影響はそう大きくはないでしょう。
では、いま一番勢いがある、4.通信販売化粧品について、
もう少し詳しく見ていくことにしましょう。