健康食品産業が今後1年だけの利潤を考えているならば、顧客の安心・安全を考える必要は全くないだろう。中国産餃子事件がそうした良い実例かもしれない。実際に、健康食品市場にあふれる製品の質、工場の質、経営の質を評価してみればはっきりみえてくるだろう。中小企業が使命なく、この産業にとびついている例も少なくないようだ。しかし、本当にこの業界で長期にわたって、収益を上げ続けようと考えている経営者であれば顧客を長期にわたって満足させ続けなければならないことは容易に分かる。
そもそも、何のための「顧客の安心・安全」なのだろうか?もちろん顧客が安心して製品を購入できるためである。それは企業にとってどんな意味があるだろうか?顧客からの信用をえるため、利潤をえるため、だろうか。しかし、信用だけを得たいのであれば虚偽の品質表示をすれば良い。1回あたりの利潤を得たいのであれば、原価を低く抑え、価格を上げれば良い。しかし、それは企業にとって意味があるのだろうか?長期的にみれば、虚偽のリスクは非常に高くつく。原価を抑える事は品質管理とのバランス問題になる。
金のガチョウという寓話を知っているだろうか。農夫が金の卵を産むガチョウをみつけ、金持ちになるが我慢できずにガチョウの腹を開けてしまう。腹の中は空っぽで農夫は金の卵を手に入れる手段も失ったという話だ。
もし、本当の信頼がほしければ、自分の得であってもお客の得がなければ断る。それが信頼を獲得するための公理でもある。
ピーター・ドラッカーの言葉を借りて言えば ”あなたの使命は何だろうか””何のために企業を経営しているのだろう”。この問いに答え続けなければならない。あなたの顧客は誰だろうか。誰がいったい顧客となって、あなたのサービスで生活を改善するのだろうか。その顧客は何に価値をおいているのだろう。この場合は健康がひとつの価値観であるだろう。だが、健康とはそもそも何か、という定義をはっきりさせておかないと、ある顧客にとってはすっきり物事を考えること、かもしれないし、ある顧客にとっては自由に移動できることが健康として価値あるものなのかもしれない。
そして、大切なことは企業として何を成果のものさしにするか、である。もちろん利潤をあげることという物差しは企業ならどこでもあるだろう。それは企業の生命線として最低ラインを確保しなければならない。だが利潤は企業にとっての食事だと思ってほしい。過剰な食事で肥大していっても、本当にその企業がやりたいことをやっているかどうかという成果のものさしが必要である。
プロフィール
URL : 多摩ガーデンクリニック小児科ブログ
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