長崎大学医学部・篠原一之教授がヒトフェロモンや香りが人間の生理や精神状態に与える影響について研究していました。臨床試験において月経周期により香りの刺激が身体に及ぼす効果が異なることを発見し、芳香成分がホルモンなどの内分泌系に影響を与えていることが分かってきました。ちょうどその頃大学の研究データやノウハウなどの知的財産を社会へ還元していこうという“TLO”の流れが盛んになりまして、当社も2002年にその流れに乗り大学の研究機関と提携を結び共同研究を行ってきました。
その研究の中で何十種にも及ぶ香り成分の候補の中から、約1年半かけてどの成分がイライラ、不安に作用するのかを研究しました。2004年にその中で判明した最も効果のある単一の芳香成分を、機能性香料シリーズ「Femilax」として製品化しました。
香料は安全性が確立されていて、食品の風味づけにも使用されている身近なものです。近年アロマブームにより様々な香料関連の製品が出ていますが、エビデンスに裏づけられた、具体的に効能や効果をはっきり示したものは少ないのが現状でした。
機能性香料は臨床研究により医学的に効果と安全性が確認されたもので、他の香料とは一線を画しています。1つの代替補完医療としての新しいアプローチ方法に利用できるものだと思います。
また香りは嗅ぐことで有効成分が直接、視床下部や大脳辺縁系へ作用するので即効性があり、副作用の心配がありません。このため、特に薬品の使用が制限される授乳婦でも気軽に利用できます。食品の場合、消化吸収の段階で成分が分解され、体内へ入った物質の性質や機能が変化してしまいます。
“β-カリオフィレン”は、長年香水の原料や食品のフレーバーとして使用されている実績があり、厚労省の食品添加物リストにも掲載されている安全な成分です。癒し効果のある森林浴を連想させる木の香りがします。クローブやイランイランに多く含まれ、ナツメグなどのスパイスとして使用されています。
篠原教授の臨床試験により、“β-カリオフィレン”がホルモンバランスの崩れに伴うイライラや不安を和らげる効果があるということが分かっています。特に妊娠中、出産後、生理前などの、黄体ホルモンの血中濃度が変化する時期に効果があるというのが、この香り成分の大きな特徴です。
1年半かけて10~20代の女性21名を対象として月経周期に合わせて順番に9種類の香りを嗅いでもらいました。その前後で倦怠感や意欲低下、イライラ、不安などが軽減したかどうかを40項目にわたり質問し、回答を統計学的に解析しました。その結果、“β-カリオフィレン”が、これらの症状改善に最も効果があることが分かりました。
産後に鬱状態になる「マタニティーブルー」と呼ばれる症状は、環境の変化とホルモンバランスの急激な変化が原因とされています。このことから産後の女性に治療の一環として採用されています。このほか同じくホルモンバランスの乱れからくる月経不順、月経困難症の患者の治療にも用いられています。
都内の産婦人科医院で出産後の鬱状態にある女性5名に同製品を1時間使用してもらい「気分が落ち着くか」、「気がかりなことがあるか」などの心理的質問を実施しました。これらを状態不安を示す指標「STAI」により数値化し、使用前後で変化を調べました。この結果、使用前の平均値が61.8と高い数値だったのに対し、使用後の平均値は39.2と標準値に改善した結果が得られています。「STAI」は31~41が標準です。
アロマポットやディフューザー(拡散器)で室内に拡散させるほか、ハンカチなどの身につけるものに染み込ませて嗅ぐ方法があります。またお風呂に使用するのもオススメです。
元々女性をターゲットとした製品ですが、不安感や緊張感を和らげるリラックス効果もあることから、仕事のプレゼンテーション前に愛用している男性もいます。
現在、医療機関のほかバラエティショップやネットショップ、カタログ通販で展開しています。また今後メールマガジンの配信を開始する予定です。これを通じて一般の方にも普及を図っていきたいです。
機能性香料「Femilax」シリーズは「癒し」・「活気」・「眠気解消」に対応した3製品を販売していますが、現在新しい機能性香料として、第4弾の製品を作るべく研究を進めているところです。また最近は他社と提携しまして同製品を使用し香りづけした、リラックス効果のあるおしぼりを製品化し、飲食店へ導入しました。今後は、香りによる安眠効果が得られる枕やぬいぐるみなどの香りと雑貨をコラボレートした製品作りに力を入れていきたいです。