2009年4月をめどに健康食品の安全性の第三者認証制度が
いよいよスタートする。法規制はないものの、国が作成したガイドラインをベースにした認証制度で、将来的なサプリメント法設立への準備段階になるとの期待がかかる。長く手つかずだった「健康食品」というあいまいなカテゴリーに一石を投じる産官学共同の制度実現のキーマンとして、安全性第三者認証機関の運営を企画している日本健康・栄養食品協会(日健栄協)・林裕造理事長に、その課題や展望などを聞いた。
確かに我が国には健康食品を含め、食品については安全性評価の実施についての規制はありません。世界的にみてもこういった取り組みは前例がない。やろうにも実例がないという意味では難題かもしれません。しかし、「健康食品」の摂取との関連が疑われる健康被害事例の報告が相次ぐなど、「健康食品」の安全性確保についての国民の要望は高まっています。ここでやらないとまたズルズルと先延ばしになるのは明白でしたし、なにはともあれ、とにかく作り上げなければ何も生まれない。また、私自身、安全についてはこれまで食品添加物、医薬品、農薬などに関わってきた長い経験がある。さらに平成17年2月に国が「健康食品」の安全性確保を図る目的で「錠剤、カプセル状等食品の原材料の安全性に関する自主点検ガイドライン」を公示しています。前例は確かにないけれど、国のガイドラインがベースとしてあったので、スムースに踏み出せました。
2009年の4月に第三者機関を設立し、できるだけ早い段階で「健康食品」の安全性認証に関する事業を開始する予定です。すでに関連の作業部会も動いており、着々と準備が進んでいます。その前に今年3月中には認証協議会を立ち上げます。これは、第三者認証機関の事業を補完する機関となりますが、広い視野でできるだけ客観的にものごとを決められる方々を中心とした協議会を作る予定です。従って、そのメンバーはこれまで協議を進めてきた人たちとは違った人選になってくると思います。また、事業が軌道に乗り経験が蓄積されてくれば、各企業の実務担当者との情報交換・意見交換による実践講座も考えています。9月には経営者向けのワークショップ、そしてデータが蓄積されれば10月にもマスメディア・消費者向けの説明会の開催も予定しています。とにかく、なるべく実践的に情報を公開しながら進めていこうと考えています。
そうです。各企業が自社製品をガイドラインに従って点検。その結果を認証機関に提出します。それを第三者認証機関内の中立的組織である評価委員会が資料に基づき、プロセスや結論などを精査。妥当と判断されれば、安全性認証となります。つまり、安全性の第三者認証は、製品についての絶対的な安全性の保証ではなく、認証機関が定めた認証プロセスによって製品の安全性が調査されたことの確認ということです。
いえることは絶対的に安全な物質はない。あるのは安全な使い方だけ、ということです。健康食品の健康被害事例については、そのほとんどが次の3つに集約されます。
安全性ガイドラインは、これら全てをカバーできるよう作られています。そこをしっかりとご理解いただければ、ガイドラインによる安全性第三者認証の有効性や意義が分かっていただけると思います。
安全性評価の基本的な考え方として、食品添加物/医薬品の安全行政の考え方と方法を健康食品にそのまま適用すべきでないと考えています。なぜなら「健康食品を含む食品」と「食品添加物/医薬品」の間で著しく相違しているからです。一番の違いは新しい食品添加物/医薬品においては食経験がないものが多く、食品の場合は基本的に、長い食経験によってその安全性が認められている点です。確かに医薬品レベルの安全性を求める声はありますが、この点を理解してれば、その必要はないことは分かるはずです。もちろん、健康食品の素材の中にも食経験が少ないものはありますから、その場合には動物試験、ヒト対象試験等の追加試験のデータが必要になることはいうまでもありません。
このやり方はむしろ、安全性に関するコスト負担を軽減する合理的なスキームになります。数千万とか1億とかかかるのでは、といわれていますが、手続き費用では、2桁の万の予定です。申請が増えればそれだって下がっていきます。
安全性の第三者認証は、むしろJHFAマークの価値を上げるものになります。というのもJHFAマークは品質・規格、製造についての第三者認証です。これに安全性の第三者認証が加わりますとさらにJHFAマークの価値が上がるワケです。従って特に1本化は考えていません。新たに作成することになります安全性の認証マークについては、そのデザインを含め、どんなものにするかを認証協議会で検討することになります。
一ヶ月ごとに変わっているという印象ですね。先月反対していた人が今月は賛成といったケースが最近もありました。結局、厚労省が公示した自主点検ガイドラインをよく理解されていなかった事が背景となっています。理解していだけると風向きは変わってきます。そういう意味では軌道に乗せるにはコミュニケーションが大切だと実感しています。これからも私どもに対しどんどん意見を言っていただきたいですし、いくらでも受けつける心積もりはあります。ただし、意見交換に先立って、自主点検ガイドラインを理解しておいていただかないと論点がずれてしまいますので、その辺は関連企業の方にはお願いしているところです。
当然でしょうね。私も健康食品において安全性と機能性は両輪と思っています。ただ、やはり安全あっての機能性だと思いますし、現状では安全性に対する国民の要望が高まっており、まずは安全性についての取り組みをとにかくスタートさせるわけです。約半世紀前の医薬品の状況をみても、とにかく安全性の確保という社会の要望を受けたところからスタートし、機能性(薬効)がそれに続きました。随分と遅れましたが、健康食品にもその流れがきた、ということではないでしょうか。
4月にスタートしたとして、うまく軌道に乗ってくれれば安全性の件は担当部門に任せ、私自身は機能性の方へシフトしたいと思っています。安全性の第三者認証における各スキームは、将来、機能性についての取り組みを行うことになった場合にもいろいろな部分が流用できると考えています。そういう意味でも安全性の第三者認証機関設立の意義はあると思っています。
私はこの安全性第三者認証制度は、将来的に国際的な流れである“サプリメント法”をつくり上げるひとつの基盤づくりと考えています。私はサプリメント法の反対論者と思われているようですがね(笑)。安全性確保の制度が軌道に乗れば、先ほどもいったように次は機能性です。そうなるとその延長線上に当然、法規制の必要性も出てきます。いきなりサプリメント法ということではなく、しっかりと手順を踏めば、これまであいまいなポジションにあった健康食品が収まるべきところに収まってきます。だからこそ、この安全性第三者認証制度運営の重要性を感じています。そういったことも踏まえ、事業を進めるにあたっては国との提携は密にしなければと思っています。
プロフィール
日本健康・栄養食品協会 理事長
林 裕造 (はやし ゆうぞう)
昭和29年、東京医科歯科大学医学部卒業。その後、食品添加物、医薬品、農薬など各分野で安全性問題に携わり、平成18年6月から現職。
安全性に関する
第三者認証機関設立へのこれまで
4月をメドに健康食品の安全性認証の実施を計画する日本健康・栄養食品協会は、2月17日にアルカディア市谷(東京都千代田区)でワークショップを開催する。事業開始を前にその準備状況と将来展望を説明する。受講料3,000円。定員300人(定員なり次第締め切り)。
【日本健康・栄養食品協会】
健康増進法の趣旨に従い国民の健康の保持・増進に寄与することを目的に、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)、特別用途食品に関する情報の収集、調査研究及び適切な知識の普及啓発を行う公益法人。健康補助食品においてはJHFA認定マーク、健康補助食品GMP認定制度の運営・普及に関する事業を行っている。厚労省医薬食品局食品安全部を所轄官庁とする。