昨年12月、健康食品業界に異色の合弁企業が誕生した。
トクホ表示許可取得件数ナンバーワンの東洋新薬とおもちゃメーカーのタカラトミーが合体した「タカラトミーウェルネス」だ。果たして、玩具メーカーがどんなビジョンで健食業界への上陸を決めたのか。同社・土屋和樹マーケティング部部長に聞いた。
東洋新薬さんとはたまたまある縁がありトップ同士が会談。トントン拍子で話がまとまりした。合弁会社設立にあたり、昨秋、プロジェクトを立ち上げ、両社の各分野のエキスパートが集まり、準備を進めてきました。ウチではいろんなプランがあちこちで進行しており、しぼんでしまうものももちろんありますが、タカラトミーウェルネスは、会社として形になったわけです。
たまたまです。運がよかったんです。といいますのも商品化にあたり、いろいろな案を出す中で、ターゲットをセグメントしたサプリメントの企画・開発を模索していました。そうした中でサラリーマンにセグメントしたサプリメントの開発案があり、それに相応しいキャラクターとして、日本のサラリーマンの代表といっても過言ではない「島耕作」が候補に挙がりました。そこでタカラトミーとも太いパイプのある講談社さんにお話を持っていったところ「面白い」と乗ってくれまして、その際にどうやら島が社長に就任するという情報をキャッチしたのです。「これは」と思い、就任のタイミングにあわせ、そこから急ピッチで商品化を進めた、というわけです。
本当にたまたまなんですけどね。ただ幸いにしまして、発売発表からこれまでに非常にいい反応をいただいております。おかげさまで非常に面白がっていただけています。我々としましては「すごい」という評価よりも「面白い」といってただけると苦労が報われたようで疲れが取れます(笑)。
「ビジネスへ燃えるあなたへ 島耕作 燃焼中!」ですから、問題ないとのことでした。あくまでビジネスへ燃えているワケですからね。
我々がサプリメントのパフォーマンスで勝負してもあまり意味がないと思っています。企画は主に私どもタカラトミー出身サイドがやっていますが、「喜ばせる」「楽しませる」というノウハウを持っている。それをいかに商品の付加価値として乗せていくかに注力しました。したがってキャラに加え「商談中」「接待中」「燃焼中」と、シチュエーションごとに分けることで利用シーンもセグメントしました。
ターゲットの30から40代のサラリーマンは、島の世代であるだけでなく、少年時代にカード収集などを楽しんでいた年代でもある。そこで島の歴任した全役職、作中彼を支えた女性たちの名刺30種を「おまけ」とすることにしました。コレクション的楽しみも加わりますし、いわゆる「大人買い」にも期待できますから(笑)。名刺に関しては、引き当てた人物からメールアドバイスがもらえるキャンペーンも行っています(~2009年6月30日)。例えば「社長 島耕作」からメールが着たらうれしいですよね。
我々は、健食業界に参入するということ以上に新たな市場を創造する、という感覚でサプリメントの販売に取り組むつもりです。あえて言えば「エンターテイメントサプリメント市場の創造」です。サプリメントといえば、効能や効果を訴求して販売するのが普通でしょう。ただ、そうはいってもいろいろな制約などがあり、やりづらい面もある。新素材発掘・開発といってもよほど画期的な発明でもない限り、爆発的なヒットは難しいでしょう。そうした中で私どもは東洋新薬さんの商品力にいかに従来の健康食品業界にないような付加価値をつけるかで勝負したいと思っています。
CVS、食品スーパー、GMS、に加え、玩具量販店、ホビーショップ、書店など、従来のサプリでは取り扱われなかったような小売店さんからの引き合いも多くいただいております。幸いにして、数年前のおまけ付きお菓子のヒットにより、玩具店での食品の取り扱いも昔のように特殊でなくっていることもあり、弊社のような商品も扱っていただきやすい環境ができつつあります。
「エンターテイメントサプリメント」としてセグメントを細分化し、ターゲットに楽しくサプリメントや健康食品を摂ってもらえるよう展開していきたい。健康になるということはそれ自体楽しいことでもあります。それをさらに後押しできるような商品作りができればいいと思っています。今秋には20から30代のOLをターゲットにした食品タイプの栄養機能食品の発売も予定しています。さらに中学サッカー部、野球部、陸上部、塾の前後に飲むサプリ、といったターゲットを極めて細分化した商品をキャラクターなどもうまく絡めながら開発していければと考えています。まずは第一弾の島耕作サプリを成功させることが最優先ですが、今後も今までにない商品をどんどん企画・開発していきたいと思っています。
プロフィール
1987年タカラ入社。りかちゃん人形、チョロQなど自社キャラクターコンテンツの他社への賃貸、ライセンス関係の業務、広報などを歴任。トランスフォーマーのマーケッターを長く務める。昨秋、マーケティングのエキスパートしてプロジェクトに参加。現在に至る
玩具事業を中核とするタカラトミーと健康食品・化粧品ODMメーカーの東洋新薬が「合体」し、昨年12月設立された合弁会社。タカラトミーの「ブランド力」、有力キャラクターコンテンツの「企画力」。トクホ表示許可取得件数ナンバーワンの東洋新薬の「商品力」。これらが融合することで生まれる従来の健康食品業界の常識を覆す、新たなジャンル、ビジネスモデルの創設に注目が集まっている。出資比率はタカラトミー55%、東洋新薬45%。社長はタカラトミーマーケティング統括本部ポケモンマーケティング室室長の武田弘尚氏が就任した。資本金は5,000万円。