停滞感が漂って久しい健康食品業界。厳しくなる一方の規制、原油高に伴う原料の高騰…まだしばらくは、このムードが晴れる材料は見当たらない。だが、この状況を座して待つばかりでは、沈没しかねない。今回は、売れる仕組みづくりのプロフェッショナル、インテグレートの藤田康人社長に閉塞感を打破する「仕掛け」の極意を聞いた。
3年ほど前までの「あるある大辞典」に代表されるメディアの加熱、トクホ、機能性食品のブームなどにより市場は実体以上に膨らみました。今はそのバブルが弾け、実需と供給のバランスが崩れ、供給がダブついている状態といえます。
あと3年はこの状態がつづくでしょう。そもそも日本は文化としてサプリメント需要が増える土壌ではありません。サプリ先進国の欧米は、法律などが整備されているという面もありますが、それ以上にサプリに対する考え方が日本と違います。
欧米の場合は、3食カロリーが高いものでもしっかりと食べています。食は人生の楽しみの大きな要素、という認識で、その時点ではそれほど健康のことは考えていません。その分、サプリメントを有効に活用し、ダイエットしたり、足りない栄養素を補ったりしています。従って、サプリメントは、食べ過ぎた分をカバーしたり、栄養を補ったりするものとして、しっかりと生活の中の必需品として含まれています。 一方、日本では、食事は出来る限りカロリーを控えめにし、必要栄養素を摂るためのもの、という考え。つまりサプリメントが入り込む余地はあまりありません。どうしても食事では取れないような栄養素を補うために摂取することはあっても必要以上にサプリメントに頼らない風潮があります。
当面は淘汰の時代となるでしょう。薬事法、健康増進法による規制が厳しく、市場はシュリンクします。パッケージへの表記はほとんど何も出来ず、トクホを取ったとしても表記できることは限られており、費用対効果の面では決して有効とはいえない。そうした中で素材を軸にした「本物」しか残らなくなります。
素材でいえば2つのタイプがあります。ひとつは体感があるもの。ちゃんと効果が体感できるもの。もうひとつはプラセボ的な体感が感じられる素材。つまり、科学的エビデンスのしっかりしたもの。この2つが、玉石混合の素材市場の中で、その居場所を確保できる要素といえるでしょう。さらに、今後はマーケティングが出来ないところも、どんなにいい素材をもっていても淘汰されていくでしょう。
ネット通販が伸びています。これまで健康食品の販売チャネルとして新聞やカタログ通販が幅を利かせ、その利用者の大半が高齢者でした。従って、こういった層はネット通販には弱く、ヘルスケア関連メーカーもあまりネットを重視していませんでした。ところが、実は健康リテラシーの高い人は知的でネットリテラシーも高く、比較的ネットで情報収集していることが分かってきたのです。今後は団塊の世代が高齢化し、ネット通販市場はさらに拡大します。新聞や通販では発信できる情報は限られますが、ネットの世界は無限。ネットを有効に活用することが、今後生き残るカギを握る大きな要因となるでしょう。
マーケティングにより収集した客観情報を、専門家の目からメディアを通じ発信する事です。広告目線でなく、専門家によるエビデンスをメディアが編集して発信する。広告ではなくPRです。そうでなければ、商品価値を訴求することは不可能です。もちろん、仕掛けるにしても「本物」でないと仕掛けられない。本当にしっかりとしたマーケティングを実施する企業、あるいは興味をそそるエビデンスのあるホンモノの素材を持った企業でないと難しいといえます。とはいえ、今は昔と違って、情報量があまりにも多いので、仕掛けを出来ないといってなにもしなければ、世に知られることもなく埋没してしまいます。知ってもらわなければ、どんなにいい商品も存在しないのと同じです。
通常のマーケティング会社では例えばあるコンテンツがあれば、それをあのメディアを使いましょう、この広告を使いましょうという形で販売をサポートしていくパターンが多いと思います。我々の場合は、情報を開発するところからスタートします。従って、提案されたコンテンツが消費者に興味がもたれないと判断すれば、興味を持ってもらえるストーリーを作るところから取り組みます。また、原料であればどんな製品に入っていれば目に付くのか。それを踏まえ、パートナー企業を紹介するお手伝いもします。さらに、例えば最終製品をコンビニエンスストアやドラッグストアで売りたいというのであれば、「こんな仕掛けで展開していきます」と小売サイドにコーディネイションし、棚の確保もサポートします。
我々がこういったスキームを実現できるのは弊社に組み込まれた2つのDNAのなせる業だと思います。ひとつは機能性の健康食品のスペックも含めた技術的知識が豊富な研究者の遺伝子。もうひとつは、大手広告代理店などメディアを知り尽くした人間のDNAです。この両方の専門知識が融合することで、弊社は健康食品業界における本物のマーケティングを可能としています。
さきほどもいいましたが、今後はネットメディアの活用がポイントとなってきます。メディアでいえばまだまだテレビの影響力は大きいですが、ネットをいかに有効に利用するかでその後の展開が大きく変わっていきます。もちろん、自社のサイトでは薬事法の範疇にあるわけですから外部のサイトを活用するのです。消費者の動向をしっかり捉え、なおかつ業界にも発信する、BtoBtoCですね。そして、自分たちの素材はどんな特性をもっているのかをしっかりと見極める。つまり、どこで勝負するのかということです。例えばメタボなどは激戦区。本当にそこで勝てるのか。戦場をしっかりと見極め、世の中の声を見極めることです。さらにネットの特性を有効に生かし、お客様と親密な関係を作り上げること。とにかく、ネットもメディアであるということをしっかりと認識した上で、外部のサイトも積極的に活用しながらどんどん情報提供していくことです。
プロフィール
1964年 東京都生まれ。慶應義塾大学文学部人間関係学科を卒業後、味の素株式会社に入社。甘味料事業部で低カロリー甘味料アスパルテームの開発・営業、ダイエットコークの製品開発などを担当。92年、ザイロンフィンファースト(現ダニスコジャパン)をフィンランド人の社長と2人で設立。むし歯予防効果のある甘味料キシリトールを日本に初めて導入し、素材メーカーの立場からキシリトールブームを仕掛ける。2005年食物繊維の新しいコンセプト(ファイバーデトックス)を仕掛け、第二次ファイバーブームを巻き起こし、食品素材メーカーとして史上初めて日本PRアワード・グランプリを受賞。07年マスメディア、ウェブ、バイラルなどのクロスメディアを駆使し、マーケティング2.0として最先端とされる統合型マーケティングであるIMCプランニング(Integrated Marketing Communication)を実践する企業、株式会社インテグレートを設立。
著書には
『99.9%成功するしかけ』
(かんき出版)がある。
社名は、IMC(Integrated Marketing Communication)のインテグレートから。 IMCとは統合型マーケティング・コミュニケーションの意。テレビ・ラジオ・雑誌・新聞等での広告だけでなく、電話、インターネットなど様々なメディアを融合することでマーケティング・コミュニケーションの効果を最大化しようとする考え方。同社では統合に「情報」「メディア」「人」の3つ統合の意を込める。IMCのプランニングブティックとしては日本初。グループ企業にIMCおよびコーポレートコミュニケーション領域における戦略立案と情報創造、マスメディアを中心とするPR活動の実施を行う(株)コムデックス、IMCプランニングを実施し、企業のコミュニケーション活動を新たな側面から提案するコンサルティング会社(株)スリーアイ、パートナー企業として広報・PRプロバイダーのパイオニア(株) オズマピーアール、調味料、機能性素材等の食品素材および食品添加物の製造・販売を行う三菱商事フードテック(株)が名を連ねる。