産科婦人科医。不妊治療、総合ホルモン補充療法、サプリメント補充療法などを行う。慶応義塾大学病院産婦人科チーフレジデント、済生会宇都宮病院産婦人科副医長を経て青春会を設立。日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医。米国Cenegenics Medical Institute 認定 Institute Physician、日本医師会認定 産業医。
私は産婦人科専門医で不妊症治療などの婦人科診療を中心に行ってきました。専門医をしていました。女性ホルモンなどの内分泌を専門とする中で、アンチエイジング、抗加齢医学に興味を持ったんです。これがきっかけとなり、アメリカのアンチエイジング専門クリニックへ研修のため3回行っています。そこで目の当たりにしたのは日本とアメリカの医療の違いでした。日本では医療といえば病気を治療することが主な目的ですが、アメリカでは病気にならないための医療にも力を入れていたんです。
背景にはアメリカで医療を受けるにはお金がかかるということがあります。日本でも今後の医療費削減は大きな問題になってくるでしょう。政治的な問題でもありますが、医師という末端の人間として、できることは何かを考えて、さらに予防医療、代替医療に興味を持ち始めたのです。
しかし、アメリカには予防医学に対して国民全員が取り組んでいこうという気持ちが少しはあるのに対して、日本ではそうとはいえない。この違いの決定的な理由は、保険制度。国民皆保険と言われ、日本では治療の大部分が保険でまかなえてしまう。予防医学、代替医療では保険適用が効かない場合が多いですよね。「病院やクリニック、イコール、国が払ってくれる」という意識が強く、保険が利かないと、怪しのではと疑ってしまう。それが、代替医療が広がらない原因の1つじゃないかと思います。
また、クリニック開設後も試行錯誤の連続で、失敗したこともたくさんあります。アメリカのものを持ち込むだけではダメなんです。これには、日本人とアメリカ人の感覚の違いがあって、例えば、視力矯正のためのレーザー治療レーシックはアメリカでは爆発的な人気ですが、日本でレーシック治療をする人はアメリカほど多くありません。“いじる”ということに関して、日本人の意識は高くないし、ホルモン療法も同じことで、アメリカ人は足りなくなったものは補えばいいという感覚が一般にありますが、日本ではそうではない。この意識の差が、日本でアンチエイジングのクリニックをやっていく上での一番の障害となりました。
代替医療ということに関しては、アロマテラピー、ツボ療法、経絡、カイロプラクティックなど様々ある中で、どういう人が代替医療を受けるべきなのかという認識が正しく広まっていないように思います。例えば胃が痛い場合、病院に行って診察、薬の処方、施術などを受けるのか、それともツボを押してもらって痛みを止めるのか。代替医療は予防医学や健康維持の側面が強いものだと考え、多くの人は通常の医者へ行くケースが多いでしょう。
「代替医療って何?それでどうなるの?」という疑問を耳にすることが多いのですが、こういう疑問に答えていくことと代替医療も含めた多くの選択肢の中から的確な方法を提示することは、医師の努めだと考えています。
アンチエイジングという言葉も同じで、正しく理解されているとは言い難い。あれもこれもアンチエイジングと言われる状況では、ただのブームに終わってしまう懸念があります。また、学会などが行われても、発表内容が検査やデータの話ばかりで、治療の話が出てこない。エビデンスとしてのデータ蓄積はもちろん重要です。ただ、もっと患者側の実際に近づいた研究を進めていくべきですし、今後はそうなっていくと思います。