植物由来の進化した乳酸菌 「スマート乳酸菌」
整腸をはじめさまざまな機能性が知られる乳酸菌は、多くのメーカーが取り扱い、それぞれの独自性を打ち出している。植物素材メーカーの丸善製薬がこのほど販売開始した同社初の乳酸菌「スマート乳酸菌」は、その新たな切り口から“新タイプの乳酸菌”として注目されている。
独自の切り口で訴求する“進化した乳酸菌”
乳酸菌が、さまざまな健康効果を持つことは知られている。そのメカニズムは、体によい腸内細菌である乳酸菌が、腸内環境を整え、排便を促し、腸内を活性化し、免疫力を高める、といったアプローチによるものだ。中でも植物由来の乳酸菌は、苛酷な環境でも生き抜くことができ、生きたまま腸内に届くプロバイオティクスとして、認知されている。
丸善製薬の「スマート乳酸菌」は、そうした植物由来の乳酸菌でありながら、これまでにないアプローチで研究が進められ、独自の機能が見出されている。他の植物性乳酸菌同様、発酵食品である漬物から菌株を分離したところまでは変わりがない。しかし、スマート乳酸菌は、その訴求ポイントをポリフェノール吸収力アップに据えた。植物素材メーカーならでは、ユニークな切り口である。
スマート乳酸菌のどこが新しいのか
緑茶に含まれることで知られる茶カテキン。体にいいことが知られるポリフェノールの一種だが、その主成分であるEGCg(図参照)が、実はEGCやECと比べ、吸収されにくいことが報告されている。その差は最大で500倍ともいわれる。
緑茶は日本人が日常的に口にするものであり、もしも「スマート乳酸菌」がその吸収力をアップできれば、他の乳酸菌と比べても大きな“武器”を手にすることになる。そうした期待のもと、研究は進められた。
カテキンと内臓脂肪に対する抗肥満効果を調べるマウス実験が行われている。高脂肪食投与による肥満化マウスに1週間通常食を与えた後、通常食群、緑茶カテキン(EGCg)0.3添加群、緑茶カテキン(ECGg)0.3%+「スマート乳酸菌」1%添加群、「スマート乳酸菌」1%添加群の4群に分け、4週間後、内臓脂肪を確認。その結果、スマート乳酸菌が、カテキンの内臓脂肪減少効果を高めることを確認した。
研究班によれば、スマート乳酸菌が、EGCgを腸内で吸収しやすいEGCに変換することでカテキンの吸収力が上がるという。
さまざまな植物ポリフェノールの吸収力アップに広がる期待
上記試験では、スマート乳酸菌はカテキンと同時摂取の場合のみ、内臓脂肪減少効果が高まっているが、人の場合、食事により何らかのポリフェノールを体内に摂取しているため、メタボリックシンドロームやダイエット素材として、十分期待できるデータといえる。今後、緑茶以外にも甜茶、ブルーベリー、コーヒーなど、その他の植物ポリフェノールの吸収力アップについても研究が進められる予定で、さらなる期待が広がる。
植物由来乳酸菌市場にうねりも
日本古来の健康食品のキーワード「発酵」に再脚光があたる中、植物由来の乳酸菌として、これまでとはまったく違うアプローチでその機能性解明が進む「スマート乳酸菌」。安定的にニーズの高いジャンルだけに今後、その摂取法や提案法などを含め、「植物性乳酸菌」の大ヒット以来のうねりを起こしそうな、面白い乳酸菌素材が登場した。
―タンナーゼ産生乳酸菌に着目したきっかけは?
大学院時代、オーストラリアで野生動物保護に資するような研究をしていました。そうした中、コアラの「クラミジア」(現在ではクラミィドフィラに分類)感染が問題となっており、感染症になったコアラの治療を行っていました。治療には、ある抗生物質が非常に有効でしたが、その後コアラが衰弱死してしまう現象が見られました。原因が分からず、その現状を日本で講演した際に、学生時代からの恩師である光岡知足先生から「ユーカリにはタンニンが非常に多く、それが消化吸収を阻害しているんだろう。コアラの腸内を調べれば、きっと、このタンニンを分解する腸内細菌がいるに違いない」とアドバイスを頂きました。実際にコアラの腸内細菌を調べてみると、タンナーゼを産生する細菌群が見つかったのです。これらの腸内細菌が、抗生物質で駆逐されてしまったため、コアラがユーカリを食べても消化・吸収できずに衰弱死していた、ということがわかりました。
―タンナーゼ産生乳酸菌は従来の乳酸菌と何が違うのですか?
一番は、タンナーゼの産生能力があることです。このタンナーゼ産生乳酸菌はおもに植物や漬物などから分離されます。タンナーゼという酵素は、この乳酸菌にとって栄養源の確保のためだけではなく、重金属の利用にも一役買っていると考えています。好気性条件下では、微生物は増殖にマンガンなどの金属を必要としますが、金属類はおもに植物体に含まれるタンニンと結合して塩を形成しているため、微生物は利用することができません。しかし、タンナーゼ産生乳酸菌は、この金属類を塩からフリーな状態にできるため、他の微生物が生存できない環境で生きることができると考えられています。
―タンナーゼ産生乳酸菌は人にもいるのでしょうか?
個人差は大きいですが、人からも分離されます。ただし、もともと人の腸内に定着している菌ではなく、食べ物(特に発酵野菜)由来ですので、いる人・いない人、いる時・いない時はあるようです。
―乳酸菌業界のトレンドと今後の推移についてどうお考えですか?
今回のタンナーゼ産生乳酸菌の一連の研究から見えてくるのは、試験管の中や動物実験で有効性が確認されている食品成分でも腸内フローラによる加減乗除があることです。これまでの機能性食品の効果に個人差があるのは、腸内細菌層が違うからではないか、とも考えられます。ですので、これらの点を十分考慮した上で健康食品の有効性や安全性を評価することがトレンドとなるべきと考えています。
■教授プロフィール
獣医学博士(クイーンズランド大学)、農学博士(東北大学)
北海道大学獣医学部卒業後、オーストラリア留学。クイーズランド州立大学大学院博士課程終了を経て同大研究員。1988年にローンパインコア ラ保護園主任研究員となり、帰国後、徳島大学医学部助手、神奈川県衛生研究所主任研究員などを歴任し、現在に至る(神戸大学医学研究科医科学 専攻・教授も兼任)。現在の専門研究分野は応用細菌学・食品微生物学。日本ビフィズス菌センター、日本乳酸菌学会の評議員も務める。
ユニークな切り口のスマート乳酸菌誕生のルーツにはなんとコアラがいた。消化吸収のよくないコアラが主食とするユーカリ。その腸内では、消化吸収を助けるタンナーゼ産生乳酸菌が活躍している。そこで獣医でもある神戸大学・大澤教授の研究でコアラの腸内からはじめて分離され、同社との共同研究によって漬物から発見された。
タンナーゼ産生能力を持つ乳酸菌。タンナーゼとは、緑茶に含まれるタンニンやコーヒーに含まれるクロロゲン酸のエステル結合を加水分解する酵素のこと。工業的に利用されるタンナーゼはカビのAspergillus oryzaeから生産される。スマート乳酸菌の生産するタンナーゼは、カビとは異なる酵素学的性質を有する。
和食が主食として食卓の中心にあった20年以上前は、人の体内にもスマート乳酸菌が多く存在していたという。しかし、食の欧米化の波で、その量は減少。健康維持には、健康食品やサプリメントなどで意識的に摂取したほうがいい状況となっている。
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