原料特集 血流改善効果で新たな側面にも脚光 カシス
ブルーベリーなどともにアイケア素材の代表格として知られるカシス。目に対する機能性においては、他のベリー類にない特有のアントシアニンを含むなど、高水準とされるが、さらに、プラスアルファの機能性としていま、カシスの血流改善効果が注目されている。その最前線をリポートする。
アイケア素材の代表格
カシスは、ユキノシタ科スグリ属で1mから2mの低木。世界中に分布し、食経験の長い果実である。欧米では、中世から栽培・育種が行われ、人気が高い。果実は、果肉まで紫紺色で酸味が強い。ビタミンとミネラルを豊富に含む。そのままでは苦いが、加工するとおいしく、ジャムやジュースなどがポピュラー。古くから疲れや関節炎、肝臓等に効果があると言い伝えられてきた。
機能性素材としては、ブルーベリーなどとともに目にいいことで知られる。アイケア素材のいわゆるベリー類の他の素材に比べ、ポリフェーノールやアントシアニンを多く含む。特にアントシアニンにおいては特徴的で、デルフィニジン-3-ルチノシド、シアニジン-3-ルチノシドを多く含む。この2つは、ブルーベリーには含まれない。この2つの有効成分が、一時的な近視化を抑制する働きも実証されている。
パソコン作業という近点作業を連続2時間負荷させ、一時的な近視化状態にさせる試験系を用い、ヒト(弱近視者)21名による二重盲検クロスオーバー試験を実施(図)。その結果、プラセボ群では一時的な近視状態となり、カシスアントシアニン50mgを摂取した試験群では近視化状態は認められなかった。つまり、パソコン作業などで起こる眼の一時的な近視化をカシスアントシアニンの摂取が抑制したことを示した。この作用は、後の試験でカシスアントシアニンに特有な主要2成分のみに認められた。
血流改善でも新知見
アイケア素材として、高いパフォーマンスを誇るカシスは、さらに新たな知見として血流改善効果で注目を集める。日常から冷え性の自覚症状をもつ健常女性4名(22歳から34歳)を被験者にカシスカプセル(アントシアニンとして50mg)、プラセボカプセル(等熱量のショ糖)を試験一時間前に摂取。10℃の冷水に右手を1分間浸水後、サーモグラフィーによる安静時レベルに戻るまで、1分ごとに画像撮影し、血流量も測定した。その結果、プラセボ摂取では、15分たっても戻らないのに対し、カシス摂取群では10分後に戻り始めた(図)。
深刻化する高齢社会のニーズにマッチした有望素材
さらにカシス摂取による顔面の血流改善効果、目の下のくまの改善効果も認められており、カシスによる血流改善効果はいくつかの実験により証明されている。
高齢化が深刻な日本において、アイケア素材のニーズは増大傾向にあり、さらに健康維持において体を温めることの重要性が認識されて始めており、その両方を兼ね備えたカシスへの需要は、今後増大しそうである。
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長寿薬としての記録も
古くから民間薬と知られていたカシスは、約300年前から食されていたという記録がある。当時の文献では、その絞り汁は万病に効く秘薬であり、若返りにも効果がある、と記されていた。18世紀半ばにはフランスで主に薬用として栽培され、いまでもリウマチによいとして、生薬を販売する店で売られている。また、第二次大戦戦中、ドイツ空軍に対し、夜間飛行の秘策で応戦したイギリス空軍をその後調査した結果、ブルーベリージャムやカシスジャムを好んで食べていた、という興味深い話もある。
欧州ではポカポカドリンクとして
ヨーロッパでは加工されジャムや飲料としてポピュラーなカシス。寒いシーズンには、日本のホットレモンよろしく、ホットカシスがおいしくて体の温まるドリンクとして重宝されている。アイケア素材として知られるカシスには、血流改善効果も認められているが、欧州では知らず知らずの内ににカシスの「体温上昇効果」を認知していた?ようである。