小松社長が語る 「消費者の声に“本当に応える”開発者になりたい」という想いが起業の原点
26歳の時にはすでに60名もの助手を抱えるリーダーとして、製薬会社の研究・開発に没頭していた小松氏は、 健康食品メーカーに転職したのち30歳で個人事業を立ち上げ、31歳に株式会社ライフサポート設立。化粧品・健康 食品等のOEM受託ビジネスを中心に、オリジナル商品の開発、企画プロデュースと猛スピードで突進してきた。 2010年に始動する大型プロジェクトなどを含め、製品開発のコンセプトや小松氏のビジョンについて話を伺った。
応用科学の研究から入った研究開発ビジネス
「大学では応用化学を専攻、4年生のときの研究である[ポルフィリンのペプチド結合]はその後も大学などで研究が続けられ、医療分野への貢献が見込まれているようだ」と話す小松氏は根っからの研究者。大学卒業後最初に就職したのは大手プラスチックメーカーだったが、入社後9ヵ月という短い期間にでんぷんで作った生分解性プラスチック容器を開発、その直後に大手製薬会社からヘッドハントされた。
「もともと何らかの形で人の役に立つこと、たとえば生命を救うお手伝いができるような仕事に就きたいと考えていました。人の生命を助けるということは自然も助けなきゃというつながりもあってプラスチックメーカーに入り、自然環境に悪影響を与えないプラスチックを開発したのですが・・・化学者の世界は非常に狭いもので、どこかで“短い期間で商品開発できる化学者がいるらしい”という噂を耳にしたのでしょう(笑)。すぐに人を介して大手製薬会社にヘッドハントされて。人の命を救うという点では製薬の研究開発は興味のある分野でしたので、23歳にして1度目の転職をすることになりました」
新薬開発の最前線で研究室に寝泊りする日々が続き…。
「研究開発に携わる人間だけで5~600名もいる大所帯でしたが、1年後にはリーダーに抜擢されていました。1ヵ月自宅に帰れないほどタイトな日々を送っていたので、大変辛かったですね。人の命を救えば給料が後からついてくるという感じで、自分を追い込めば追い込むほど成功する…そんな状態でした。言ってみればいわゆる“勝ち組”に属し、26歳の時には60名の助手を抱えていました。ただ何千億という売り上げを背負う立場にいましたので、精神的にはかなり厳しい状況下にあったのも事実。そんなときに出会ったのが天然薬理学の本でした。その本に書かれていたことのひとつで“植物のなかにすべての病気を治す解答がある”という一文を読んで、医薬品ではないもので人の役に立つことができるのではないか、と思うようになっていったのです」
会社の利益になることが、必ずしも消費者のためにはならない。
28歳で再度転職を決意、製薬会社を退職して1週間後には健康食品などの受託製造会社に2度目の転職。学術研究・品質管理・研究開発・営業と何足もの草鞋を履くことになり、昼は営業、夜は開発という日々が続いた。 「ここで課されたタスクも3ヵ月でクリアして、製品開発だけでなく原料開発も手掛けましたし、企画も山のように立てました。でも、いくら企画を出してもさまざまな理由で潰される。会社の売り上げばかりを考えた商品開発ではなく、消費者の声に本当の意味で応えるような開発を手掛けたい…という一心から健康食品のメーカーに転職したのですが、現実は甘くなかった。
会社というしがらみのなかではできることとできないことがあまりにもはっきりしていて、すべてにおいて会社都合で物事が進んでいく。一般に“3年は我慢しろ”というようですが、わたしの場合2年ぐらいでやりたいことはやってしまうので(笑)、このときも潮時だと感じて30歳になったときに個人事業をスタートさせました。自分がやりたいと思うことができないのだったら、独立するしかないかというのが本音でした」 独立といっても最初から会社組織を立ち上げたわけではなく、小松氏自身が考えた企画書をほとんど“手売り行商”のように1企画いくらで売って歩いたのだそうだ。ひとつの処方を1万円で売ることもあり、1ヵ月で100本近くの企画や処方を売ったことも。
「この時期に“製薬会社出身の化学者が商品の開発をしてクライアント探しまでやっているぞ”という噂も広がって、いろいろな人たちとの出会いもありました し、ある意味宣伝にもなっていったんですね。わたしのレシピで作った健康食品がヒットして収益を上げたメーカーもたくさんありますが、過去に作った企画に 恋々とするような暇があったら、消費者のためになる商品をどんどん開発していこう…という感じでした。結局いろいろな事情が重なって、独立して10ヵ月後 に今のライフサポートを会社として立ち上げることになったのです」
クスリより効くサプリメントは作れないのか?
もともと新薬の開発や原料開発、健康食品の開発に携わっていた小松氏は、まずその豊富な知識と知見を活かしたサプリメントをOEMの受託というかたちで開発していった。そしていつしか“クスリよりも効くサプリメントを世に送り出したい”という想いを強くしていったという。
「とにかく歩き回って形成したネットワークを駆使してOEMのための工場や原料の調達先、デザイン・パッケージ製造会社までさまざまなマッチングをこなしていくうちに、このノウハウを凝縮すればもっと消費者目線のサプリメントができるはず…という確信が生まれてきました。クスリで治せる病には限界がありますが、人体生化学に基づいたレシピでサプリメントを作れば、クスリ以上に治癒に貢献できる可能性があるとわたしは思っているのです。たとえば視力回復に効果があるとされる機能性食品の販促説明会に来ていただいた中高年のお客様に、その場でサプリメントを摂取していただく。30分後、摂取前は老眼で読めなかった文字が読めるようになったとしたら…当然買いますよね(笑)。体感はどんな広告や論文、偉い先生の講演よりも訴求力が強いものです。効果実感や体感があいまいだからサプリメントが長続きしないという声をよく聞きますが、わたしが企画する商品はいい意味でびっくりしていただけるようなものにしていきたいと考えているんですよ」と、そう小松氏は語ったのである。-----
PART2では、今年本格的なプロジェクトが始動する化粧品開発について、2010年5月に開催される上海万博におけるプロジェクト展開なども含めインタビュー。 化粧品開発のダークサイドに関する暴露話も!? 乞うご期待。
プロフィール
株式会社ライフサポート
代表取締役社長 小松覚(こまつさとる)
1974年生まれ、
工学院大学工学部応用化学科卒。在学中には「ポルフィリンのペプチド結合」(人間の血液を化学的に作れるかどうか)について研究、医療分野への貢献が期待され現在でも大学病院の研究室などにその研究が引き継がれているという。大手製薬会社などを経て31歳のときに現・株式会社ライフサポートを設立。
会社概要
株式会社ライフサポート
神奈川県横浜市中区常磐町4-47
ニューイナズマビル202
事業内容
化粧品・入浴剤・加工食品・健康食品・自然食品・飲料水・雑貨等の企画、開発、製造、卸、販売
主な製品
基礎化粧品(化粧水、化粧下地、乳液、美容液、栄養クリーム、クレンジング、洗顔フォーム、石鹸等)、ファンデーション(パウダータイプ、リキッドタイプ)、フェイスパウダー、シャンプー、リンス、トリートメント、入浴剤、フェイスマスク、その他のマスク類、健康食品、加工食品、自然食品、天然洗剤、消臭剤、抗菌剤、歯磨き剤
EXPO記者の目
- 商品化できる“化学者”である。
- 健康美容関連企業のTOPを務める人の中には、研究者・医者・学者…といった現職・前職である場合が少なからずある。しかし、専門性の高い知識があればなんでも開発ができるというわけではなく、学術的な専門知識がなくともマーケティングに精通していれば、商品企画や販売戦略を構築することはできるものだ。逆に前者の研究者タイプのなかには「非常にいいものだからきっと売れるに違いない」という、いわば根拠のない自信だけを頼りに事業を立ち上げてしまうケースが少なくない。ところが今回お話を伺った小松社長は研究者であり、開発者であり、営業であり、マーケッターでもあるという、底知れぬキャパを持った方である。彼のようにすべてのフローに自ら関わることができるタイプの人間は、そういないであろう。
- 猛スピードで走る、天才・・・。
- インタビューしていていちばん身につまされたのは、「大手製薬会社で研究開発チームのリーダーとなった26歳のときに助手として使っていた人間のほとんどが年上、なかには40代後半の人もいた」という話。記者も同年代だが、その歳で26歳の天才エリート研究者にこき使われる助手だったとしたら、さぞや毎日が辛いだろうなぁ、と。湯水のように湧いてくるアイデアと行動力、確固たる自信、本質を見抜く眼光の鋭さ(見た目は柔和で優しそうな印象だが)…。凡人は天才に、どう頑張ってもかなわないものだ。2010年を“飛躍の年”と定めた年男の小松氏のスピードには、全速力でダッシュしても追いつくことができないのかもしれない…。
“寝ていても運動できる”サプリメント誕生。
以前EXPOコンテンツでも紹介したクエン酸サイクルサプリ『TCA』(松島イチオシ商品)などは、体内の代謝システムであるTCA回路(クエン酸サイクル)にスポットを当て“摂取したエネルギーを正しく代謝するシステムづくり”に貢献するサプリメント…という化学者らしい目線で開発されたサプリメントだ。小松氏いわく「どんなに高価な高機能サプリを摂っても、その食品を体内で分解・代謝するシステムが正しく稼動していなければ効くわけがない」とのことで、メタボ対策や美肌など代謝改善の効果実感が高い商品として、発売以来かなり好調な動きを見せているという。社名があらわしているようにまさに人々の生活をサポートし、消費者が本当に求めているものを提供していきたい――そんな小松氏の思いを込めた商品開発は、健康食品のみならず、化粧品開発にもつながっていくのである。