
乳酸菌摂取による健康への恩恵は広く認知されており、市場規模も年々拡大しているが、そのメカニズムについてはあまり知られていない。ヒト由来であるエンテロコッカス・フェカリス菌を特許製法により分散化したナノ型乳酸菌nEF®は、菌数やサイズにおいて優れているだけでなく、腸への吸収効率の課題を解決した次世代型の乳酸菌原料である。そのポテンシャルをデータを交えて検証する。

腸には体内の免疫細胞の約60%が集中している。乳酸菌は、腸内の粘膜面を覆っている粘液の網目構造をすり抜け、免疫の入り口とされる「パイエル板」に到達する。そしてパイエル板上のM細胞から取り込まれ(図参照)、その下層に待機する樹状細胞やマクロファージに捕捉され、これらの細胞が産生するサイトカインが免疫反応のトリガーとなる。
加熱乳酸菌にはメリットがある一方で課題もある。粉体化の際に乳酸菌の菌同士が凝集し、一部が塊になるのだ。しかも、一度できてしまった菌の塊は胃液や腸液でも分解されることはないため、大きな菌の塊は粘液の網目構造をすり抜けられず、パイエル板から取り込まれない。結果、腸管を単に通過するだけで本来の乳酸菌の効果も低減してしまう。

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「ナノ型乳酸菌」は、粉体化の際に特許技術(特許第4621218)の分散処理により、菌の塊ができることなく乳酸菌体が生菌のように1個1個バラバラで存在することを可能にした加熱菌体。菌体の平均粒度は0.7μmで、このサイズは腸管パイエル板からの取り込み効率が高く、免疫系を活性化する。
尚、ヨーグルトや乳酸菌飲料は乳酸菌の濃度が低いため、パイエル板に取り込まれるチャンスが少ない。生きた乳酸菌をナノ型乳酸菌末と同等レベル摂取するためには膨大な量の製品を摂る必要がある。


それぞれの乳酸菌を実際にマウスに摂取させたときの状態を撮影したもの。赤い光が乳酸菌。集合した状態でパイエル板の端のほうに留まっていることが確認できる。これは、パイエル板の表面にある網状粘膜に阻まれることにより、凝集した乳酸菌が通過しづらくなっていることを表している。
一方で、ナノ型乳酸菌は、赤い光がとても小さな状態で、パイエル板内にしっかりと取り込まれていることが確認できる。


マウスの脾臓細胞にナノ型乳酸菌及び一般的な加熱乳酸菌原料2種をそれぞれ水に溶かした懸濁液をパイエル板上のM細胞と同程度のサイズである5μmで濾過し、その後培養したもののIL-12を測定した。その結果、菌が凝集していないナノ型乳酸菌は他の乳酸菌群よりも多く濾過されるとともに、高いIL-12の活性を示した。
ナノ型乳酸菌と一般的な加熱乳酸菌の製造時での「分散性」の違いが生体への有効性に影響しているかを検証するため、乳酸菌(エンテロコッカス・フェカリス)の培養後に加熱殺菌し乾燥させた一般的な加熱乳酸菌と、製造時に分散化処理を行った「ナノ型乳酸菌」を用いてマウスノロウイルス感染試験による生体防御能を検証した。
試験はコントロール(蒸留水投与)群、一般的な乳酸菌投与群(非ナノ化乳酸菌)、ナノ型乳酸菌投与群の3群に分けたマウスのそれぞれにウイルス感染1週間前から感染3週間後まで毎日経口投与し、ウイルス感染後にプラークアッセイ法にて糞便中ウイルス量、さらに感染後3週間目の血清中の中和抗体価を測定した。
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糞便に排泄されるウイルス量が少なくなると感染リスクも弱まる。
ナノ型乳酸菌はコントロール群との比較はもちろん、非ナノ化乳酸菌投与群よりも、感染後2日目、3日目といった早い時期で糞便中ウイルスの増殖を顕著に抑制することを確認した(図1)。中和抗体価においてもナノ型乳酸菌投与群は、コントロール群、非ナノ化乳酸菌群と比較してより高い値を示した(図2)。

腸への吸収性が高いナノ型乳酸菌を摂取すると、効率よく乳酸菌を吸収し生体防御能を向上させることでノロウイルスに感染しても、より早くウイルスの増殖を抑制し、ウイルス排出を停止するため、感染の拡大を抑えられると考えられる。
ナノ型乳酸菌はパイエル板へ効率よく取り込まれることで、免疫のはたらきを高めつつ、乱れがちな免疫バランスを調整する。その結果、アレルギー症状の緩和や便秘の改善、さらに炎症の抑制といった幅広い作用が期待できる。

NK細胞の活性が高い状態にあると、感染症などの病気を未然に防ぐことが期待できる。マウスの脾臓にナノ型乳酸菌を添加したところ、用量依存的にNK細胞の活性が認められた。

便秘気味の女性15名に、ナノ型乳酸菌を1日1兆個、1週間摂取してもらったところ、摂取後に便秘が改善し、腸内細菌叢(そう)に占めるビフィズス菌類の割合が上昇していた。ナノ型乳酸菌摂取により、腸内細菌の割合が変化し、免疫機能の増強や腸内腐敗を抑制することで、便秘が改善することが考えられる。

近年、様々な免疫細胞が体の状態に合わせて免疫のはたらきを調整していることが確認されており、中でも炎症反応を抑える働きを持つTreg細胞が注目されている。
実験的に大腸炎を発症させたマウスにナノ型乳酸菌を与えて大腸の炎症症状の緩和効果を調べたところ、ナノ型乳酸菌の投与量に応じて腸間膜リンパ節のリンパ球に占めるTreg細胞の割合が増加していた。

ナノ型乳酸菌は他の加熱乳酸菌と同じように熱や酸の影響を受けにくいため、錠剤やカプセル、顆粒はもちろん、飲料、菓子、一般食品などの利用が可能である。
また、乳酸菌は液体には完全に溶けることはないが、ナノ型乳酸菌は通常の乳酸菌よりも分散性が良いため、ドリンク類にも採用されている。
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乳酸菌=健康維持。すっかりそんなイメージが定着しているが、逆にいえばそれぞれの乳酸菌が埋もれてしまっているのが市場の現状でもある。そうした中で、吸収力に着目し、特許技術で進化したナノ型乳酸菌は、数ある乳酸菌の中で選択するための新たな指標を示す次世代型乳酸菌として、今後、幅広く活用されることになりそうだ。

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乳酸菌は腸菅免疫を刺激することにより、全身の健康状態を向上させる。 加熱乳酸菌は、熱や酸に強く、生菌よりも多くの乳酸菌を摂取することが可能であることに加えて、加工時の菌の再汚染の心配がないためハンドリングしやすいことがメリットとして挙げられるが、さらに、免疫活性の代表的なサイトカインであるIL-12産生能が高くなることが確認できた。
マウスの脾臓細胞を用いてエンテロコッカス・フェカリスに対する加熱温度と代表的なサイトカインであるIL(インターロイキン)12の産生誘導能への影響を調べた。 乳酸菌の培養液を未加熱、そして60度から100度まで10度ずつ温度を上げた計6つに分け、10分間加温処理して菌体のIL-12産生量を調べたところ、未加熱に対し、加熱したものすべてのIL-12産生能が高くなった。乳酸菌は、必ずしも生菌である必要はないということの裏付けにもなる結果だといえそうだ。
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
健康長寿の里
長野県木曽地方の伝統食
「すんき」由来乳酸菌
男女ともに平均寿命が長い長野県は、アレルギー罹患率についても全国平均よりも低い。なかでも、木曽地方のアレルギー罹患率については、長野県全体の三分の一ほどの罹患率であることが疫学調査にて明らかにされている。その木曽地方の住民が日常的に食べている赤カブ菜の漬物「すんき」は全国でも珍しい無塩の漬物。木曽地方の住民が非常に健康的な免疫バランスを持つことから、長野県の「味の文化財」の認定だけでなく、その有効性が大学機関での研究等で確認されている。
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このすんき由来のナノ型乳酸菌も免疫バランス調整や炎症軽減効果が確認されており、注目されている。
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【 株式会社IHM 】
≪事業内容≫
医薬品、医薬部外品、健康補助食品、化粧品、医療用具等、健康生活支援。商品の卸販売、健康提案のプランニング、機能性食品原料の開発・卸販売
≪所在地≫
〒141-0022
東京都品川区東五反田1-6-3
いちご東五反田ビル2階
TEL : 03-4221-2207
FAX : 03-4221-2212
https://www.ihmg.jp


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長年、多数の乳酸菌を研究してきましたが、乳酸菌は必ずしも生菌である必要はないことはもちろん、体を守る力を高めるためには腸へどれだけ効率よく吸収されるかがカギとなると確信しています。
乳酸菌の働きはその菌のサイズが腸の吸収に関係しています。特に菌体が小さなヒト由来のエンテロコッカス・フェカリス菌は免疫をすみやかに整えるはたらきが期待できるため、乳酸菌を大量に摂取できる加熱乳酸菌として年々人気が高まっています。一方で製品化する際に乳酸菌の大きな塊ができてしまい、腸への吸収率が低減することが乳酸菌研究者の中では課題となって いました。
私達はこのデメリットを解決した分散化製法(特許取得)により、乳酸菌本来の小さいサイズのまま大量に摂取できる製品化に成功しました。乳酸菌のもつ健康効果を最大限に生かしたナノ型乳酸菌が新たな製品づくりに役立つことを願ってやみません。

ヤクルト本社中央研究所 副主席研究員。ヤクルト中央研究所での主な研究 ヤクルトジョアの開発研究、ミルミルの基礎研究。
コンビ(株)開発部 顧問。コンビ(株)での主な研究 乳酸球菌EC-12の整腸効果の検証。現在まで約50年間乳酸菌の基礎研究を続ける。
ナノ型乳酸菌の特許取得 商標権を取得。現在(有)バイオ研 代表取締役。NPO法人 日本サプリメント臨床研究会 理事。バイオジェニックス連絡協議会 議長。
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- TEL : 03-4221-2207 FAX : 03-4221-2212
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