原料特集 情報提供:株式会社ヘルシーナビ/兼松ケミカル株式会社/ユニテックフーズ株式会社
クレアチンは筋力アップやロコモティブシンドロームにも対応する機能性原料(素材)
アスリートだけでなく高齢者の運動機能向上でも注目される機能性素材
多くのトップアスリートが使用していることで知られる機能性素材、クレアチン。筋力アップや身体機能を向上させる効用については、米国を中心に研究が進んでいるが、昨今は新たな切り口として高齢者の運動能力に及ぼす効果にも注目が集まっている。日本でも研究によりその効果が確認され、国民病ともいわれるロコモティブシンドローム対策の新たな素材として、市場でも動きが出始めている。
エネルギー産生に寄与するアミノ酸の一種
クレアチンは、アミノ酸の一種で、ATP(アデノシリン三リン酸)の体内での合成を促進し、エネルギー産生に寄与する。もともと人間の体内でつくられる生命維持に必要な栄養素で安全性も高い。体内では肝臓、脾臓、腎臓で生成され、生成されたクレアチンは血管を通り筋肉に運搬。そのうち95%は骨格筋組織に蓄えられる。もっとも、体内に蓄えられる量には限度があり、体重70kgの体内総貯増量は約120~140gとされる。従って、日々の食生活で補給する必要がある。
アスリートに絶大な支持を集める機能性素材
アスリート先進国・米国では、認知度が高く、1996年のアトランタ五輪出場選手の8割がクレアチンを使用していたといわれる。筋力アップ・維持、運動機能の向上についてのエビデンスも豊富にあり、特に瞬発系では体感があるとされる。日本でもじわじわと広がりを見せているが、本格的なアスリートが中心であり、一般への浸透度は必ずしも高いとはいえない。
リハビリから派生して高齢者も研究対象へ
そうした中で昨今、高齢者の運動能力に及ぼす効果についても研究が行われ、その効果が確認されている。もともとはアスリートのリハビリに効果があることから着目され、対極にある高齢者とアスリートの接点が生まれた。高齢者については、国内で変形性ひざ関節症に対するグルコサミンとの併用効果の研究が行われ、クレアチンとの併用で効果が増強することなどが確認されている。
また、脳および神経細胞にも多く貯蔵されており、そのエネルギー代謝改善効果から脳や記憶能力の改善につながるとの報告もある。
ロコモ関連の試験データ
高齢者の低強度筋力トレーニングにおける筋力向上
平均年齢70歳の男女20人をクレアピュア(R)※摂取群、プラセボ群に分け、クレアピュア1日3g摂取+水中運動プログラム(低強度)を週3回12週間継続。二重盲検法で実施した。その結果(図)ただ運動を行うだけよりもクレアピュアをプラスすることで運動効果が一層高まった
高齢者の変形性ヒザ関節症に対する
ひざの痛み軽減と運動機能改善
平均年齢61歳女性33人をグルコサミン+クレアピュア併用群19人、グルコサミン単独群14人に分け、3ヶ月間連日摂取(二重盲検法)。摂取量は、併用群がグルコサミン900mg+クレピュア1.2g、グルコサミン単独群は900mgを摂取した。その結果(図)、併用群、単独群ともにヒザ痛どの症状の改善がみられたが、特に併用群では、大きく改善した。また、最大一歩幅も同様の結果が得られた。
これらの結果から、クレアチンはアスリートの筋力アップだけでなく、高齢者のリハビリに効果的であり、ロコモティブシンドローム対策素材としても有望であることが期待できる。
※クレアピュア(R):ドイツアルツケム社で特許製法に基づき生産された「クレアチン・モノハイドレート」。現在流通しているクレアチンの中でもっとも高純度・高品質とされる(純度99.9%)。
トピックス
食品に含まれるクレアチン(g/㎏)
肉や魚に多く含まれ、魚類ではニシン、サケ、マグロ、肉類では豚肉、牛肉に多く含まれる。微量ながら野菜や果物にも含まれる(表)。
ロコモティブシンドロームとは
運動器症候群といい、運動器の障害により要介護になるリスクの高い状態。大きく分けると変形性ひざ関節症や骨粗しょう症などによる運動器自体の疾患と加齢による運動器機能不全が原因とされる。推定患者数は4700万人ともいわれる。
クレアピュア事務局とは
ドイツ・アルツケム社の純度99.9%以上のクレアチン・モノハイドレート「クレアピュア(R)」を取り扱う兼松ケミカル、ヘルシーナビ、ユニテックフーズの3社が、クレアチンの普及啓蒙などの目的で立ち上げた。セミナーや勉強会を開催したり、最新知見や情報を随時発信している。
クレアピュア事務局
URL: http://www.creapure.jp/
トップアスリートから高齢者までカバーする機能性素材
クレアチンは、90年代に五輪金メダリストが使用していたことなどからアスリートの間で競技能力向上を求め、利用者が拡大しました。私もその頃に個人的に興味をもち、競技者でもあったので、運動能力向上の観点から研究をはじめました。そうした中で、高齢者に対する効果があるという報告もあり、新たな視点として、高齢者の運動能力に及ぼす効果について研究に着手しました。
結論からいえば、クレアチン摂取を付加することで、高齢者の筋力増加をより高めることが示されました。実際に被験者から「疲れにくくなった」などの感想も聞かれました。個人差はありますが、厳しいトレーニングをしているアスリートがクレアチン摂取において、筋肉のクレアチン“貯蔵タンク”の上限が一杯になっているとして、タンクをあまり使っていない高齢者ではその伸びシロが高い、ということも一因だと思います。
高齢社会において、ロコモティブシンドローム(運動器機能低下症候群)の対策が必要となっています。その予防をサポートする成分としても今後、期待できます。さらにアクティブな高齢者に対してもその運動効果をサポートする素材として期待できるのではないでしょうか。そのための課題としては、高齢者の試験を行った際にもみられましたが、より摂取しやすい形状、テイストなどを工夫する必要があります。もちろん、メカニズムの解明なども含め、さらなる研究を続け、成果を積み上げてくことが大切であることはいうまでもありません。また、まだまだ一般には低いクレアチンの認知度の向上を図るとともに、クレアチンに対する誤った認識を解くためにも正しい使用法などもしっかりと普及させることがより利用拡大を図る上で肝要であると一研究者として感じています。
クレアチンの可能性追求の一環でJリーグのゲーム分析などにも携わっていますが、日本サッカーにおいてもスプリントの重要性が指摘され始めています。瞬発力を高め、疲労を遅延するとされるクレアチンが、これからサッカー界でも注目される可能性もあると思います。とにかくクレアチンは、トップアスリートから高齢者までカバーするパフォーマンスを秘めた素材であり、日本での普及にも大いに期待しています。
芝浦工業大学工学部共通学群 体育・健康科目 石﨑聡之(いしざきさとし)氏
1999年に小山工業高等専門学校一般科講師に就任。2010年に芝浦工業大学工学部共通学群准教授となり現在に至る。専門は運動生理学。