昭和38年京都府立綾部高校卒後、通商産業省(現経済産業省)入省。平成10年4月に日本化粧品工業連合会に入り、常務理事に就任。
当会は、東京化粧品工業会、西日本化粧品工業会、中部化粧品工業会の3団体で構成されています。主に、生産技術や安全性の問題など技術的問題、消費生活センターに化粧品の知識を知ってもらうための冊子を送付するなどの広報活動、海外との連携など国際的な問題に取り組んでいます。
全部で10の委員会があり、技術委員会、容器・包装に関する委員会、広報委員会、広告・宣伝委員会、税制問題委員会、流通問題委員会などがあります。委員会の下には、専門委員会や部会があります。例えば、技術委員会では技術の情報交換を行うため、年1回技術交流会議を開催しています。ナノ化粧品については、独自試験などでその安全性を検証していくことを決めましたが、ナノテクは国が安全性問題として取り組むとの方針を受け、今後はそのサポートをする立場になります。当会では、ナノテク原料は従来から化粧品に使われていた技術で、現時点では健康被害などの問題が起きた報告例もなく、安全性に問題ないという考えですが、今後安全性に関する新たな知見が出てくれば、改めて考えなければならないと思います。ナノテク原料に限らず、化粧品として使用する原料については常に問題があるかどうかは、調べています。
容器・包装に関する委員会は容器・包装のリサイクルと減量化を推進するための委員会ですが、今年末にはガラスびんリサイクル促進協議会が使用済化粧品用びんをびんtoびんとしてリサイクルする予定で、市町村に使用済化粧品用びんを飲料用びんと同様に分別収集をお願いすることになります。これまでは使用済化粧品用びんの回収はNGという市町村が多かったのです。そのほか、広告・宣伝委員会では、薬事法で規定されている医薬品等適正広告基準を遵守した広告宣伝に向けた、共通認識を持つための検討を行っています。ここ2年間、薬事法制度改正に向けた対応をしてきましたが、本年4月の薬事法改正の全面施行により、一山越えたという感じです。薬事法の規制など情報を早く入手したいからか、ここ3年くらい会員数は増えています。会員企業は、大手から零細まで業界をほぼ全てフォローしています。
経産省の統計データによれば、金額ベースでは化粧品市場は伸びていません。ですが、数量ベースから見れば増えています。価格破壊に化粧品も巻き込まれたといえるでしょう。
ドーンと上がるとか下がるということはありませんが、化粧品市場は景気の波に遅れて影響を受けます。高価格帯や低価格帯は伸びていますが、問題は中価格帯で、最も景気に左右されます。
私は、人口が頭打ちでパイが決まった中でシェアを獲得するには、お客様の感性を動かす化粧品を売ることが重要ではないかと思います。それはユーザーの信頼度が高い機能性を持った商品です。女性が化粧品にかける金額は、あまり変動していません。ヨーロッパでは市場に占めるメーキャップや香水の比率が高いのですが、日本では基礎化粧品のウェイトが40数%と非常に高いのです。子供や男性の市場はそれほど伸びていませんし、茶髪ブームも一時期より落ち着きを見せています。ただし、男性市場は新たに市場が伸びる可能性があると思います。また、高齢者の方がお化粧をすることは、心のゆとりに結びつきますので、高齢者の市場も期待できるでしょう。
市場は安定化していて、下降の要素は見えていません。しかし、何年か後には少子化の影響も出てくるでしょう。そのため、メーカーは大・中に関わらず、海外に目を向けています。今までは韓国やタイに進出していましたが、特に中国は総人口の割に化粧している人口が少ないため、その市場規模を各社が狙っています。今後は所得水準が上がり、化粧する習慣が増えているベトナム、インドなどへの進出も増えてくるでしょう。
化粧品業界に対するメッセージとしては、企業は自己責任という意識を踏まえて製造販売することが大事だということです。化粧品は薬事法に基づく製造販売業の許可を取れば、製品ごとに認可を取ることなく何でも作ることができます。だからこそ、化粧品業界が薬事法の規制の緩和方向に動いている中、自己責任の認識を持った上で化粧品を販売することが求められています。4月の薬事法改正では、製造販売業者が責任を負うシステムに変わりました。化粧品を製造する・しないに関わらず、薬事法の許可を受けた製造販売業者が責任を取ろうという体系に変わってきています。市場で問題が起きた時、回収するなど対応するのは製造販売業者。市場に出した化粧品の品質管理の責任を果たすのは当然のことです。この、国の規制ではない自己責任という流れは、世界的なものです。この流れを決して滞らせることがあってはならないと思います。