日本と香港のアジアコスメブームに火をつけたアジアンコスメの第一人者。「中国の知恵」からきれいを追求した結果、「中医学美容」にたどりついた。商品開発から、美に関するトータルプロデュースを手がけると同時に、中国・南京中医薬大学・教授、同大学付属・東方美学研究院の院長という教鞭を取る立場。セミナーやツボマッサージなどの講習会も開き、「楊さちこ式美容メソッド」を伝えている。楊さちこ流「脱ファンデーション」で素肌の元気を取り戻した女性たちから絶大な信頼と支持を得て、香港の美容界のカリスマ的存在になる。香港美容業総会副会長。
中国人は風邪をひくとまず西洋医にかかる。そして症状が治まると、次に漢方医に漢方薬を処方してもらいそれを飲む。西洋医には「風邪という病気を治すために」局部的な治療を受け、「風邪のために体のバランスが崩れてしまっている」のを正常な状態に戻すために漢方薬を用いるのだ。私の学んだ中医学・東洋医学とは、その症状の原因となる体質や生活習慣などをトータルで診るというところが西洋医学とは違う。私の解釈では、病気を治すこと、症状や病巣を診るのが「応急手当て」であり、病人を治すことや、不調の原因を見極め、他の病気の予防や健康な体作りをめざすのが「永久手当て」だと考える。つまり、病気になることと、病気にならないようにすることは別だということだ。
「キレイに対する考えかた」もこれと同じ。インスタントで「すぐに手に入るキレイ」は、「応急手当て」であり、「時間をかけて保つキレイ」は「永久手当て」なのだ。そして、わたしの思う漢方コスメのは「永久手当て」に位置づけられる。
ところで、「漢方」というと、町の漢方薬屋さんにおいてある、「漢方チックな匂いのする動物や植物を干からびさせたモノたち」を連想される方がほとんどかと思うのだが、実際、中国清の時代に李時珍が作り上げた漢方薬大辞典である「本草綱目」の中には、そういうものばかりではなく、アロマテラピーなどで使われている俗に言うハーブたちもたくさんふくまれている。また、インドのアーユルヴェーダ、インドネシアのジャムウ、韓国の韓方における考え方の根本は、漢方の考え方とよく似ている。
それを踏まえて言うと、「私にとっての漢方コスメ=永久手当て=なるだけ自然に近いもの」になる。
また、化粧品(コスメ)は、日本の薬事法では、効果をうたってはいけない。医薬部外品と名前がついて初めて少しだけ効果がうたえるという現実や、化粧品は安全でなければならない(当たり前のようであるが)ということもある。つまり、誰が使っても(100%というのはありえないが)キレイになれるし、安心であるということが必要なのだ。
「漢方コスメやアジアのコスメって安全なのかしら?」という疑問が出ることもある。それは、そのコスメを作る人、販売する人が、その国のコスメをつくるための安全基準や、世界(もしくは日本)の安全基準を知り、どれだけの良心(いいものを人に届けたいと思う心)を持っているのかにかかってくる。
私自身は漢方コスメが大好きで、それの良さを追求したくて中医美容学を学び、その良さを伝えたくて大学で教鞭をとったり、漢方コスメの開発に携わって、きちんとしたもので、本当にキレイになれるものを中国・香港を中心に、日本にも伝えようと努力している。
私の理想の漢方コスメとは、安全で、なおかつ「使い続けることによってキレイにもなれるし、それを保つことができるもの」。それを見つけること、作り出すことがライフワークだと思う。