ポリフェノールの一種で、赤ワインやぶどうの皮などに多く含まれるレスベラトロール。 日本では3年ほど前から扱いが開始されていたが、昨年11月の英国科学誌「ネイチャー」で同素材による哺乳類での延命作用が発表されて以降、一躍注目を集めた。現在、米国のアンチエイジング医学会A4Mや日本臨床抗老化医学会でも、レスベラトロールの話題で持ちきりとなっている。国内では2007年に入り、じわじわと取り扱いサプライヤーが増えはじめ、後半になって急増した。9月には大手化粧品メーカーから含有サプリメントが発売されるなど、末端商品も動き始め、市場はにわかに活気付いている。注目の“アンチエイジング”素材をさまざまな角度から解剖する。
抗酸化作用で注目されるポリフェノールの一種で、ブドウの果皮部・新芽や赤ワイン、ピーナッツの薄皮などに多く含まれる。植物が紫外線、病害などの外部ストレスにさらされた際に自身を守るために出す生体防御物質。1940年に発見され、1992年に赤ワインに含まれることが報告された。
欧州各国の中でフランス人が、比較的高脂肪食を摂るにもかかわらず心臓血管病の発生率が低いことに由来するフレンチパラドックスの鍵を握る成分といわれる。現在までに多くの学術論文が発表され、今後もその研究動向から目が離せない注目の成分。
1997年に「サイエンス」誌で抗ガン作用が報告されて以降、抗ガン・抗痴呆症などの観点で多くの研究が進められた。「ネイチャー」誌の発表で有名となった寿命延長効果は、レスベラトロール(Resveratrol)が高カロリー食摂取時でも空腹時と同じ経路で代謝を活性化する作用によるもの、とされる。
高カロリー食の継続摂取は、代謝の恒常性維持を阻害し、心臓病や糖尿病のリスクを高めるといわれる。その他、アンチエイジング、抗メタボリックシンドローム、抗酸化作用、抗炎症作用、抗ガン作用、脂質代謝改善、認知症、女性ホルモン様作用、など多様な機能性が報告されている。
最近では、旭川医科大学で、眼病予防のデータが発表されている。
レスベラトロール(Resveratrol)はサーチュインを活性化させ、「腹八分目」の言われてきているような機能を発揮する。つまり、代謝とエネルギー産生の恒常性を調節し、老化を制御していると考えられる。サーチュインは活性化されると体脂肪、血圧、血糖値、中性脂肪値などが改善されていき、寿命が延びることが確認されている脱アセチル化酵素。
抗酸化作用、アンチエイジング、寿命延長効果、メタボリックシンドローム対応作用、抗炎症作用など
日本ではサンブライト、セティが早くから供給を開始。2006年11月の「ネイチャー」誌での発表後は、徐々に取り扱い企業が増えはじめ、現在までにオリザ油化、マリーンバイオ、メディエンス、バイオメディカルウェルネスなどが供給をスタートしている。2007年後半に入り、とくに供給企業は急速に拡大している。
企業名 | 動 向 |
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サンブライト | 仏・ボルドー産ブドウ若芽・若蔓から抽出のモノマー及びオリゴマー類を20%以上の高含有品 |
マリーンバイオ | 含有量10%以上、ORAC値5,800μmolesTE/gram 以上で規格化 |
オリザ油化 | 100%ブドウ由来で、食品・化粧品用途に対応 |
メディエンス | 南仏・ローヌ渓谷産赤ワイン抽出で5%含有。※年間供給量に制限あり |
バイオメデカルウェルネス | 含有量5%以上で規格化した高品質中国産 |
セティ | フランス産赤ワイン用ブドウ由来の高品質品 |
主流はフランス産で、それ以外は中国産が出回っている。赤ワイン、ブドウ新芽、ブドウ果皮など、いずれもブドウから抽出される。現在流通している商材の含有量には幅があり、それにともない価格はサプライヤーによって、大きいところで数倍の差がついている。
なお、レスベラトロール(Resveratrol)はタデ科の多年草・イタドリにも含まれる。価格はブドウ由来より安価で海外では広く流通しているが、根茎部は国内では食品への使用が認められていない医薬品成分であり、新規で取り扱いを検討するサプライヤーには慎重な対応が求められる。
レスベラトロール(Resveratrol)は88年にブドウ果皮から発見されました。92年には赤ワインから検出されています。ブドウ以外では、ザクロ、ピーナッツにも含まれ、最近ではイチゴにも含まれているという文献があります。
健康食品の原料として使われるのは、ブドウ果皮、種子、芽や葉です。機能性としては、「ネイチャー」での発表により寿命延長効果が知られています。あの試験ではマウスに通常食餌(SD)、食餌カロリーの60%が脂肪の高カロリー餌(HC)またはHCにレスベラトロール(Resveratrol)を添加した餌(HCR)を投与。最初に通常餌で飼育し、ヒトで中年にあたる約52週齢で3群に分け、各々の食餌を投与しました。
その結果、114週でSDおよびHCR食餌群の死亡率42%に対し、HC食餌群では58%が死亡しました。レスベラトロール(Resveratrol)はHC群に対し、死亡リスクを改善。さらに寿命だけでなく、運動能力の改善もみられ、生活の質も改善すると思われます。
その他、97年には抗ガン効果の論文が発表されています。それによるとレスベラトロール(Resveratrol)はイニシエーション、プロモーション、プログレッションの発ガンプロセス主要3段階全てにおいて抗ガン作用を示すことが明らかになっています。
また、認知症やアルツハイマーに効果があるとする報告もあります。
多様な機能が期待され、今後も注目される素材だと思いますが、注意しなければいけない点があります。レスベラトロール(Resveratrol)は、漢方に使われる虎杖根(イタドリ)にも含まれていますが、その根の部分は食薬区分では医薬品に属し、食品には使えないのです。
ブドウ由来のものより、レスベラトロール(Resveratrol)の含有量が多く、安いので健康食品の原料として取り扱う企業は、十分な注意が必要と思います。
一般的に動物性脂肪を多く取ると心臓病にかかるリスクが高まるといわれる。
そうした中で比較的高脂肪食を多く摂るフランスでは心臓病発生率が低く、逆にイギリスでは摂取量の割に心臓病による死亡率が高いというデータがある。
この矛盾をフレンチパラドックスという。
食品の組み合わせの観点から、その消費量がフランスで多く、イギリスでは少ない赤ワインに秘密があると考えられている。
ブドウ果皮や赤ワインから抽出されるレスベラトロールが、フレンチパラドックスのキー成分といわれるのはこうしたことが一因にある。
新日本製薬は、レスベラトロール含有のサプリメント「ワインエッセンス」(30粒1,890円円・税込み)を発売している。
同製品は、フランスボルドー産ワイン100%で、その一粒に赤ワインボトル一本分となる約1mgのレスベラトロールを含有する。さらにワイン生成の際の副産物、ブドウ種子を圧搾、精製したグレープシードオイルも配合する。
グレープシードオイルは、ビタミンEをオリーブ油の約2倍、ごま油の約3.5倍含有し、ポリフェノールも豊富に含む。そうしたことから健康維持、そして美容にもよく、支持を集めている。
タデ科の多年草。アジア原産。名前の由来は「痛みをとる」からとされる。生薬名は虎杖根。漢方では緩下薬、利尿薬、月経不順などに用いられる。
レスベラトロールを含有することで知られ、米国の含有サプリメントの多くはイタドリ由来のものといわれる。
ブドウ由来のものより、低価格だが、その根の部分は生薬であり、日本では食品としての利用が認められていない医薬品成分の扱い。独特の刺激臭などで識別も可能だが、取り扱いには十分に慎重さが求められる。