4月の食薬区分改正で化学物質として唯一、非医薬品リストに新規収載されていたL-シトルリンが、8月17日の厚生労働省の各都道府県の通知により、食用利用解禁となった。αリポ酸以来約3年ぶりの医薬品成分からの解禁素材を、市況を見据えながら幅広く多角的に解剖する。
1930年に日本人によりスイカ果汁中から発見され、スイカの学名Citrullus vulgarisから命名された。アミノ酸の一種。今年4月の食薬区分改正で化学物質として唯一、非医薬品リストに新規収載され、8月17日に厚生労働省から「一般に食品として飲食に供される物であって添加物として使用されるもの」として各都道府県に通知され、事実上食用利用として解禁された。同様のコエンザイムQ10やα-リポ酸がブームとなったこともあり、健康食品業界では期待が寄せられている。
注目されているのはNO(一酸化窒素)産生作用による血管拡張。経口摂取により、体内で吸収され、アルギニノコハク酸を経てL-アルギニンに変換。さらにシトルリンに変換される際、NOを産生し、血管を拡張させる作用をもたらす。動脈硬化抑制、神経伝達、免疫賦活、といった作用も報告されている。全身に張り巡らされる血管の通りをスムースにすることから、血管系の健康維持にとって重要な役割を及ぼすと考えられている。 期待される効果としては、NO産生による血流改善に加え、アルギニンの前駆物質としての筋肉増強、運動パフォーマンスの上昇がある。さらに精力増強や冷え性改善への効果も期待される。 また、オルニチン回路の構成成分としての作用として、アンモニア解毒もある。
8月17日の食料利用解禁を受け、続々と原料商社やサプライヤーが供給に名乗りを上げている。協和発酵、丸栄トレーディング、トレードピア、バイオメディカルウェルネス、プロテインケミカルなど10社ほどがすでに供給を開始。市場をにらみながら供給に着手する企業も数社あるとみられている。
産地は国産と中国産に大別される。価格はキロ1万円前後が相場といわれるが、中国産を扱うサプライヤーは、価格面での優位性をアピールする。すでに10トンを購入済みという丸栄トレーディングの鈴木万栄社長は「品質に問題はないし、シトルリンは使用量も多い。ウチとしては競争力のある価格で勝負できると考えている」と国産モノへの価格面での優位性を強調。初年度30トン、2年目以降は40トンの供給を目指す。
一方、国産のリーディングカンパニー、協和発酵は「値下はいまのところ考えていない」とあえて国外産を意識せず、独自路線で市場開拓を推し進める意向だ。医薬品成分からの約3年ぶりの食用解禁素材として期待が寄せられるL-シトルリン。反面、その認知度がまだ低いこともあり、全体的には慎重な滑り出しとなっている。市場が本格的に動き始めるのは、各社とも来年春以降とみている。
企業名 | 動 向 |
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協和発酵 | 独自発酵技術駆使した国産品に「情報」付加し、市場を開拓 |
プロテインケミカル | 海外産原料の国内再精製で品質重視 |
バイオメディカルウェルネス | 価格競争力と安全性で市場に切り込む |
丸栄トレーディング | 価格競争力前面に出し、年間40トンの供給目指す |
トレードピア | 同社主力のピクノジェノールとの併用提案し、拡販図る |
シンギー | 中国現地工場から調達。OEMで提案 |
国産と中国産に大別される中、国産では協和発酵が、中国産では丸栄トレーディングが市場を牽引する。中国産は昨今の食品汚染報道などで風向きは芳しくないが、中国産を扱う各社とも厳重なチェックを行い安全性には自信を持っており、価格面で国産品に対抗する構え。
「まずは、シトルリンの知名度を上げることが重要だと考えています。いまはB(事業者)向けへ「シトルリンはどういうものなのか」をインプットし終わった状態。今後は、消費者へ向けての認知度を上げ、その価値を高めていくプランを練っている段階です。具体的には、とにかく広く知ってもらうために女性誌、健康誌などのメディアへ露出していきます。」
「こちらがどれだけ訴求しても知られていなければ意味がない。原料開発メーカーとしては、もちろん品質に自信はありますが、それ以上にわれわれは加工の仕方といったことまでも含めたさまざまな情報も付加して「出荷」しますよと。そこが他社さんとの違いであり、強みだと思っています。」
「あります。国外産のものは価格面での優位性を打ち出すと思いますが、うちとしては品質に自信を持っておりますし、値段を下げることはいまのところ考えていません。」
「市場が本格的に動くのは来年以降とみています。ウチからは今月下旬に末端商品も出しますが、とにかくこのシトルリンに関しては市場を作りにいく開拓者として、単に商材を売るだけでなく、専門家と組んだりしながら、素材の幅広いPR活動も含め、いろいろと仕掛けていきたいと思っています。」
カラハリ砂漠に自生する野生のスイカにその含有量が多いといわれている。ある研究によると、その環境が過酷であればあるほど葉のL-シトルリン量が増えるというデータが出ている。
血管拡張、精力増強などの効果が期待される素材だけに、不思議と説得力がある。ちなみに野生スイカの葉の部分には、いわゆる栽培種スイカの約2.3倍のL-シトルリンが含有されているというデータがある。
食用利用解禁を受け、すでに末端商品も数社から発売されている。
太陽物産は打錠サプリメント「Model BMI.SlimR for Celeb」を発売。L-シトルリンの代謝アップ作用を引き出す成分とととも配合し、美肌訴求でセレブ層をターゲットにしている。
協和発酵は同社が通販限定で販売する「リメイク」シリーズから「シトルリン」を10月19日発売した。一日の摂取目安量を800mgに設定し、血流改善を訴求点とする。
今後、その加工のしやすさから、打錠、カプセル、飲料など多様な形態のL-シトルリン製品が末端市場をにぎわしそうだ。
米国ではスポーツサプリメントや強壮系として流通するものが多い。動脈硬化防止作用などから心疾患用途もある。原料は中国産が主流。日本へ並行輸入される商品は、多くが強壮系となっている。
また、欧州では20年以上前から“L-シトルリンーリンゴ酸塩”が疲労回復用途のOTC薬として流通している。
着実に原料市場が動き始めたシトルリンに2008年1月30日、研究会が発足した。「シトルリン 代謝向上研究会」で、注目の新素材の情報を集約・発信し、現代人の代謝向上を目的に活動する。ホームページ(http://www.citrulline.jp)も同時に開設した。研究会メンバーには、熊本大学大学院医学薬学研究部小児科学分野教授で医学博士の遠藤文夫氏らが名を連ねる。
老化の最大の原因「HGH(ヒト成長ホルモン)」の減少を食い止めるため、北里大学病院の細野孝郎先生が、若返りホルモンといわれる「HGH」の自己分泌を促すために開発。>>
アミノ酸の一種であるシトルリンはたんぱく質を構成しない遊離アミノ酸として体内に存在しています。食品では特にスイカに多く含まれており、カラハリ砂漠に自生する野生スイカに >>
L-シトルリンは天然に広く存在する遊離アミノ酸の一つで、スイカから単離・命名されたアミノ酸でありウリ科植物に多く含まれています。尿素生成の際にオルニチン回路にてアルギニン生合成の中間体として重要な役割を果たすと同時に、一酸化窒素(NO)を介する >>