日本でも子供用サプリメントの使用が一般的になりつつある。3~5割の子どもがサプリメントの使用経験があるとの報告があるアメリカには及ばないが、今後、利用拡大が進むとみられている。背景には、食品自体の栄養含有量の低下、偏食、運動不足などによる子どもの肥満の増加、女性の社会進出による家族構造の変化…などがある。安易な摂取へ警鐘を鳴らす声もあるが、市場の醸成は着実に進んでいる。その最前線をレポートする。
いまやすっかり日常に溶け込んだ健康食品やサプリメント。飽和気味でもある市場は、症状対応型からさらに細分化し、「どんな人がどんなときに摂ればいいのか」というところまでをセグメントした商材が流通するようになった。
そうした中で、大手メーカーから発売されたシリーズもののひとつとして「子ども用サプリ」がラインナップされ、一気に身近な存在になった。昨今では、必須栄養素の摂取目的以外にも多様な機能性を訴求した商材が発売され、商品群も充実し始めている。
一方で国内においてはまだ子どものサプリ摂取に対するアレルギーは少なくない側面はある。だが、食品の栄養含有量の低下や偏食などによる幼少期の肥満の増加など、かつてのような食環境を求めるのは難しい状況になっているもの事実で、手軽に必要栄養素を補えるキッズサプリのニーズは増加傾向にある。
海外からの輸入物が主流だったキッズサプリの認知度を大きく高めたといえるのが、アサヒフードアンドヘルスケアのディアナチュラ。「家族を守る」をコンセプトで発売された同シリーズは、子どもから大人まで幅広い年代に合致した5つのカテゴリーを設置。その中に「キッズ」用もラインナップされた。
現在キッズシリーズは「kids カルシウム」、「kids マルチビタミン」、「kids DHA」が発売されている。アンフィニプロジェクトは「サプリ生活 野菜のチカラ チョコレート味」を販売。16種類の野菜を配合し、チョコレート味にしたもので、野菜の栄養素を手軽に摂取できる。森川健康堂は「こどもIQサプリ」を展開。DHA、ギャバ、ホスファチジルセリン(PS)を配合し、「IQ」を意識した成分配合となっている。
クラウディアは、こどもの母親に訴求した「α-GPC」を販売。成長を促進するとされる成分などを配合した“成長サプリ”として展開する。また、PSやGLA(オメガ6脂肪酸)などを配合した子どもの集中力アップをコンセプトとする「スクールエイド」も取り扱う。グラートは、「キッズサプリ」を販売。ビタミン、ミネラル、カルシウム、乳酸菌、アミノ酸の5種をラインナップし、キッズ用としては業界屈指の充実した商品展開で市場に切り込む。
企業名 | 動 向 |
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アサヒフードアンドヘルスケア | 「家族を守る」コンセプトのキッズ用サプリ |
アンフィニプロジェクト | 野菜を手軽に取れることをコンセプトにしたサプリ |
クラウディア | “成長サプリ”“集中力アップ”の2種を展開 |
森川健康堂 | DHA,ギャバなど含有する“IQ系サプリメント” |
グラート | 業界屈指の5種ラインナップで栄養にこだわる |
ノラコーポレーション | シロップで食べやすくしたチンキタイプを豊富に揃える |
エープライム | 動物型で楽しく摂取できる100%天然のマルチビタミン |
子供向けに作られるだけに、発売されているサプリメントの形状の多くは「食べやすさ」に工夫を凝らす。主流となっているのは、おやつ感覚で食べられるチュアブルタイプ。大きさも大人用に比べ、小さめに作るなど、各社とも摂取時の事故等には徹底配慮する。チンキタイプやグミタイプもある。キッズ用では「いかに継続させるか」がポイントなるだけに、テイストは、チョコレートやフルーツ味など子どもが好むものがその中心。
成分は、子どもが不足しがちなマルチビタミン・ミネラル、カルシウムなどが大半だが、集中力を高める、成長を促進するといった年代ごとの「ニーズ」にあった機能性を謳う商材も昨今では増加傾向にある。安全面については子どもは無防備であることから、各社ともアレルギー物質の有無、食べ過ぎ時の危険性などに細心の注意を払う。
山口 私自身小さい子どもがいまして、実際教育していく中で食に関する部分の難しさを感じていました。そうした中で、子ども用のサプリがあるようでないのではと思っていました。アメリカなどでは、小さいころから栄養補給に摂っているわけですし、そういうモノがあってもいいと思い、企画がスタートしました。
山口 食事あってのサプリメントというのがもちろんベースです。それでも現在の環境では補うのが難しい必要栄養素などもあり、そうした部分の補完として利用してもらえるのが、この製品の一番の役割と考えています。
山口 やはり味と食べやすさですね。味は子どもが好む甘いテイストを採用しています。食べやすさの部分では、飲み込んでしまわないようラムネ的な感じで食べられるよう工夫。万一飲み込んでしまっても大丈夫なように小さめに設計しています。
山口 食べ過ぎてしまった場合の安全性、アレルギー物質、そして合成成分などは極力排除するにしています。それからキッズサプリは海外からのものが結構ありますが、当社の製品については、日本の栄養摂取基準にキチンと対応して作っています。
山口 各社からキッズサプリは発売されていますが、コンセプトで分かれているものが多いと感じています。その点、弊社の商品は、栄養の部分に力点を置いて作っています。そういった部分をネット上などでアピールしながら、いわゆるサプリメントの販売ルートには特にこだわらず、キッズサプリを必要とする場所、施設などに訴求し、扱っていってもらえればと考えています。
山口 食の乱れにより、いま子どもでも肥満の問題が起こるなど、健康・精神面で不安定な子が増えつつあります。この商品を通じ、食の大切さを訴えながらその辺りを改善する一助を担えればと思っています。
文部科学省が実施した「平成20年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査」では、小学校男子の肥満傾向児は11・2%。女子で8.7%。生活習慣についてのアンケートでは朝食を食べないのが男子で1%、女子で0・6%。
その内、朝食を毎日食べない人の男子の肥満の傾向は、18.5%、女子で17.8%で、毎日食べる人の10.6%、8.1%を大きく上回った。こうしたことからも幼少期の栄養摂取、生活習慣の管理は大切であることが分かる。
アメリカでは、食生活の乱れなどにより子どもの肥満が深刻化している。それに伴い、成人病とされる疾病が急増するなど、対策が急務となっている。学校に肥満増加防止プログラムが導入される事例もある。