拡大する医薬部外品市場 3つの理由
拡大する医薬部外品 化粧品市場の背景
医薬部外品化粧品市場は、化粧品以外も含めた全体では1兆円を超えるとされる巨大マーケット。限定的ながら、効果効能を謳えるメリットが、メーカー側にとっていかに魅力的かを象徴する数字といえる。
医薬部外品の市場は、2013年統計で約1兆0,785億円(富士経済調べ)とされる。
1については、多くを説明する必要はないだろう。薬事法により、化粧品は効果効能を謳えない。女性を美しくすることがその役割である化粧品で、その効果を謳えないのは、販売戦略上、大きなデメリットとなる。より効果的に販売戦略を進める上でも、医薬部外品化粧品を選択するのは、当然である。
そうは言っても効果効能が謳えるという“特典”を得るためには、諸手続きが必要となる。厚労省の認可をもらうための諸々の手続きなど、煩雑なこともクリアしなければない。そうした中で、メーカーのニーズを受け、化粧品OEM企業が、医薬部外品対応を続々と進めている。その結果、メーカーにとっては、低リスク・短期間で手軽に医薬部外品化粧品に進出する環境が整いつつある。これが2つ目の理由だ。
3は、少々間接的な要因だが、決して小さくはない要素だ。2001年4月、化粧品全成分表示がスタートした。その背景には、規制緩和による化粧品製販の事前承認を不要にしたことがある。その5年後の2006年4月、医薬部外品は国際標準に併せる目的で全成分表示が日本化粧品工業連合会の「自主基準」となった。
これにより、化粧品の成分表示が配合量の多い順に記述することが義務づけられた。対して、医薬部外品は順不同でOK。成分名も化粧品と同じである必要はなく、製造ロットによっては使用しないことのあるクエン酸などの場合、pH調整剤と表示すれば、実際に使用していなくても問題ないことになっている。
そして重要なのは、医薬部外品は、「有効成分」と「その他の成分」を分けて表示ができるということだ。
その結果、医薬部外品化粧品では、“特典”である効果効能表記を際立たすことができ、消費者により効果的に製品選びをしてもらえる表示が可能となっている。また、成分名も化粧品と同じである必要はなく、製造工程で有利に働く。
<化粧品>
表示名:
日本化粧品工業連合会が作成した成分名称を用いる。
表示の仕方:
すべての成分を配合量の多い順に記載。1%以下の成分は順不同でOK。
<医薬部外品>
表示名:
厚生労働省に届け出た成分名称(薬事申請名称)もしくは別名を用いる(化粧品とは同じ成分であっても医薬部外品では表示名が変わる場合がある)。
表示の仕方:
有効成分と他の成分に分けて記載。
※医薬部外品の場合はあくまでも自主規制であるので、これに従わなくても罰せられることはない。
以上3つが、化粧品市場の拡大と飽和の中で、「医薬部外品化粧品」を効果的にユーザーにアプローチする販売戦略として定着させ、いまに至っている。 次項では、知っていそうで実は知らない医薬部外品、特に化粧品の医薬部外品について、基本もしっかりと押さえつつ、主にその"有効性"について解説していく。
効果効能が謳える医薬部外品化粧品
限定的ながら効果効能が謳える医薬部外品化粧品。堂々「美白」とテレビCMなどで謳えることは、メーカーの販売戦略上、これ以上ないメリットといえる。しかし、実は場合によっては全成分表示の化粧品の方が、認可成分しか使用できない医薬部外品に比べ、高濃度で効果が期待できることもありうる。もっとも、「化粧品」は当然ながら薬事法の縛りで何もいえない。配合成分の濃度さえいえない。それでもその“可能性”に一縷の望みを託し、本当にこだわりのいい「化粧品」を作った企業を知っているが、販売には苦戦している…。
販売サイドにとって、障害以外の何者でもない薬事法をクリアする伝家の宝刀。それが、「医薬部外品」ということになる。製品を企画し、販売する上で当然設定されるのは、そのターゲット。そこに対し、「どんな効果が期待できるのか」、を発信することは、購買のスイッチを押す上で非常に重要となる。認可成分しか使用できない、配合率にも制約がある、などデメリットはゼロではないが、ユーザーに効果を伝えられるメリットを考えれば、十分にお釣りが来る。製品メーカーがこぞって、医薬部外品へシフトするのが当然なら、「どんな効能がある」のかが明確な医薬部外品化粧品が市場で支持されるのも当然なのだ。
新指定医薬部外品、新範囲医薬部外品など医薬部外品の区分
あまり知られていないが、効果効能を謳える「医薬部外品」化粧品のほかに「指定医薬部外品」というカテゴリーもある。これは、従来からの医薬部外品に新たに追加された医薬部外品のこと。「新指定医薬部外品」や「新範囲医薬部外品」などが該当する。
こうした「指定医薬部外品」には、便秘改善剤や滋養強壮剤などもあり、医薬部外品化粧品と併せれば効果効能を謳っての“内外美容”のアピールも可能となる。
両方に対応する化粧品OEM企業もあり、販売戦略に「医薬部外品」を考慮しているメーカーならそうした企業を使わない手はないだろう。
- 吐き気その他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止
- あせも、ただれ等の防止
- 脱毛の防止、育毛又は除毛
- 人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみ等の駆除又は防止
- 衛生用の紙綿類(生理用品 洗浄綿類)
- にきび、肌荒れ、かぶれ、しもやけ等の防止剤等、皮膚・口腔殺菌洗浄剤、薬用化粧品、薬用歯磨き、歯周炎の予防剤など
- ひび、あかぎれ、あせも、ただれ、うおのめ、たこ、手足のあれ、かさつき等を改善することが目的とされている物
- 染毛剤(脱色剤含む)
- パーマネントウェーブ用剤
- 浴用剤
- 【新指定医薬部外品】
- 医薬品の規制緩和施策の一環により、1999年(平成11年)に医薬品から医薬部外品に移された品目のこと。 医薬発280号においてその詳細が示される。
- 【新範囲医薬部外品】
- 2004年(平成16年)7月末より、一般用医薬品(大衆薬)の一部が薬局薬店以外でも販売できるようになった。その際、新たに医薬部外品に移された品目のこと。
- ひび、あかぎれ用剤
- 創傷面の消毒、保護剤
- 喉の不快感改善剤(のど飴やトローチなど)
- 胃の不快感改善剤
- 疲労時・中高年期のビタミン補給剤、カルシウム補給剤
- 滋養強壮、虚弱体質の改善及び栄養補給剤
- いびき防止薬
- カルシウムを主たる成分とする保健薬
- 含嗽薬
- 健胃薬
- 口腔咽喉薬
- コンタクトレンズ装着薬
- 殺菌消毒薬
- しもやけ、あかぎれ用薬
- 嚥下薬
- 消化薬
- 生薬を主成分とする保健薬
- 整腸薬
- 鼻づまり改善薬(外用剤に限る)
- ビタミンを含有する保健薬(錠剤)
- 健胃・消化・整腸