医薬部外品製造の化粧品が売れるワケ
最近テレビに大量スポットを投下している化粧品CMに顕著に現れている傾向として、少し前まで医薬品にしか使用できなかった成分名をアピールするものや、“美白”といった効果を強調する広告を見る機会が増えていることにお気づきだろうか。広告表現や商品パッケージへの表記に関する制約が強まるなか、「医薬部外品」という選択肢に改めて注目が集まっている。ここでは知っていそうでじつは知らない医薬部外品、特に化粧品の医薬部外品について、解説していく。
医薬部外品に注目が集まる理由
どんなにエビデンスがあっても表現できない効果効能
健康食品や化粧品のメーカーやOEM受託製造を生業としていればわかっていることだが、関連法規の関係上、効果効能の標榜はもちろんのこと、配合されている成分に関する説明やデータを基本的には表示できない縛りがある。健康食品であればトクホなどの指定がなければヘルスクレーム(健康強調表示)は認められないし、化粧品のパッケージに表示できる文言はかなり制限され、広告表現もごく限られたキーワードしか使うことができない。
「このサプリを飲めば絶対やせる!」
「すべての女性が若返る魔法の美容液」
「奇跡の水でガンが治った…」
これらの宣伝文句を消費者として目にしたことのない人間はいないと思うが、実際は関連法規に抵触しており発覚すれば取締りの対象となる。先日も放射能の問題でまったく効果のないサプリメントを販売した業者が逮捕されたが、こうした悪徳業者から消費者を守る目的で薬機法(旧薬事法)や景品表示法(下記参照)などが制定されている。しかし臨床試験などが実施され毒性試験もクリアしている“安心・安全”な健康食品や機能性化粧品であっても表現の自由は許されず、極端なことを言えば
というのが実情だ。そこで先ほども触れた「効果効能を謳った化粧品のCMが目立つ」のはどうしてなのか。もうお分かりだと思うが、これらの難題をクリアするのが医薬部外品なのである。
薬機法(旧薬事法)とは厚労省が定めた医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の品質、有効性および安全性の確保等を目的とした法律。現行の薬機法は昭和35年に施行されて以来、何回かの改正を経て現在の形に至っている。2009年に完全施行された改正薬事法では、医薬品販売の規制緩和を中心に改正された。2014年の改正では「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下、「薬機法」)と名称を変え、医療機器や再生医療に重点を置いた改正を行った。
「この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする。 」【薬機法第1条より引用】
景品表示法(略して景表法とされることが多い)は、正式には「不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)」という。文中などではさらに略され「景表法」と表記されることも多い。商品やサービスの品質、内容、価格等を偽って表示を行うことを厳しく規制するとともに、過大な景品類の提供を防ぐために景品類の最高額を制限、消費者がより良い商品やサービスを自主的かつ合理的に選べる環境を守るため、公正取引委員会により定められたもの。
「この法律は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的とする。」【景品表示法第1条より引用】
次回は、拡大する医薬部外品化粧品市場の背景について、解説する。