「まずはお試し」の女性心理をくすぐる、トライアルキット。
より持続的なファンを獲得するために、体感型マーケティングは今、
ブランドスイッチのポータル戦略として再び注目を集める。
2008年秋以降の急速な景気後退によって、化粧品市場も徐々に影響を受け今までにない冷え込みが続いている。同年の化粧品出荷販売高は、約1兆5000億円で前年より0.23%の微減となったが、その後もこの下降傾向は続いている。化粧品市場の低迷は、買い控えのため単に商品が売れにくくなったという要因だけではなく、家計に見合った低価格帯商品へのスイッチが進んでいることも大きく影響していると考えられる。“もっと自分に合ったものを求めて、いろんな化粧品を試してみたい”という消費者心理が景気後退に押されてブランドスイッチ(乗り換え)志向を強めている。これまでも化粧品メーカー(特に通販コスメ)は消費者のブランドスイッチを促進するためトライアルキットによる体感型マーケティングを積極的に進めてきたが、こうした化粧品市場の動向から各メーカにとって、これまで以上にトライアルキットの果たす役割は大きくなっている。
一言でトライアルキットといっても商品構成や特典の有無などメーカーのアプローチも様々だ。キット価格とセット点数の関係(ポジショニングマップ1)においては、分析の結果、「スタンダード型」「商品力訴求型」「顧客開拓重視型」の3つにグルーピングすることができた。「スタンダード型」はクレンジングや化粧水、乳液などスキンケアの基本405点のシンプルな構成で価格も1000円程度とお手ごろ感を訴求している。「本命商品型」は本商品の売価が高額な商品のトライアル版で価格も高めに設定されている。一方、「顧客開拓重視型」はセット点数にかかわらず、価格を無料に設定することで初回導入のハードルを極力低くし顧客とのファーストコンタクトをとることを最優先する戦略だ。
また、商品解説とお得感の関係(ポジショニングマップ2)においては、分析の結果「ブランド重視型」「特典誘導型」の2つのグループに分けることができた。「ブランド重視型」は商品解説DVDや充実したコンセプトブックが同梱されておりブランドの持つ世界観や企業姿勢を顧客と共有することに力を注いでいる。もう一つのグループである「特典誘導型」は、取り組みがさまざまで、クーポンや割引券が多数同梱されておりその割引額にも各社に幅がある。メーカーの多くが、お得感を出すことに力を入れる背景には、キット購入から本品購入への誘導を促進する策として価格によるハードルを下げることが最も有効と判断しているためだ。
今回のトライアル分析を通して見えてきたことは、再春館製薬(ドモホルンリンクル)の取り組みが他社を圧倒し突出していることだ。顧客開拓を最優先する一方で開拓顧客に対してブランドポリシーの浸透を徹底して行っている。通販コスメの草分けとしてこの戦略は創業期以来一貫しているという。顧客とのファーストコンタクトの在り方を長年試行錯誤してきた企業のブランド戦略の基本姿勢が伺える。「少しでもお試しして決めたい」というニーズは、女性心理の基本。浮気されやすい化粧品市場だからこそ、ずっと使い続けてくれるコアなファンを獲得するために、いまやトライアルキットは、ブランドスイッチのプロモーション戦略の中核に位置付けられはじめている。
トライアルキット注目ブランド今回の特集では、人気を博している5つの化粧品メーカーにトライアルキットをどのうように活かしているかマーケティング戦略を伺った。 |
![]() ![]() 「自然への感謝」「もったいない」の心をカタチに。漢方の考え方から生まれたロングセラー基礎化粧品。 |
![]() ![]() ライス=“米”をキーワードに「メイド・イン・ジャパン」の世界観をパッケージで表現する。 |
![]() ![]() メディカルコスメのパイオニア。肌トラブルから救いたい―。皮膚専門医の視点から誕生したシンプルケア化粧品。 |
![]() ![]() 「本当に良いもの」を「リーズナブルな価格」で。女性の理想に応えたシンプルケア化粧品。 |
![]() ![]() コスメランキングで上位を獲得。幅広いターゲットへ向けたシリーズを展開するオールラウンドプレーヤー。 |