“明らか食品”とは何かご存知ですか。
今回は“明らか食品”をめぐる戦略の違いで明暗を分けた例をご紹介します。
効能効果をうたえる健康食品とは
誰の目にも明らかに食べ物(食品)と映り、医薬品とは間違えようのないもの。それが“明らか食品”です。この明らか食品は医薬品と誤解されることがないと の判断から、効能を述べても薬事法違反とはなりません。(詳しくは、日米総研刊『効能効果をうたいつつ薬事法をクリアする健康食品の作り方(第9版)』参 照)。
昭和46年に46通知が出された折にも、すでにこういった例外は認められていました。しかし、長らくこのゾーンを突く戦略をとる商品はあらわれてきませんでした。
※46通知とは健康食品規制のバイブルとも言えるもの。昭和46年に、当時の厚生省の局長が健康食品に関して出した通知で、[1]健康食品が薬事法に違反するのはどのような場合かで述べた4つのファクターもここに示されている
ガン予防を示唆して大成功
1995年ごろ、この“明らか食品”というポイントを突いた製品がいよいよ登場しました。サンスターの緑黄野菜ジュースです。その缶には『NCI(米国国 立ガン研究所)は毎日6mgのβ―カロチンが緑黄色野菜から摂取できるような献立を推奨しています。(NCIガイドブック「食事・栄養・ガンを防ぐ食品の 選択」より)という記載がありました。
製品においてガン予防を示唆するこの表現が、なぜ許されるのか?
当時はずいぶん物議をかもしました。しかし、明らか食品ということで薬事法をクリアしました。実はこの商品は明らか食品の理屈を研究しつくした、極めて賢 い商品だったのです。この戦略は見事に功を奏し、今でも発売されているロングセラーとなっています。
同じ手法でもB社は違反に
その一方で、やや遅れてB社が「にんじんジュース」を発売し、「成人病予防」を標榜したところ行政から薬事法違反と“待った”がかかりました。
なぜNGだったのでしょうか?
その理由は、“このにんじんジュースにおいて成人病予防をもたらすのはβ-カロチンだ。しかし、そのβ―カロチンはにんじんが本来含んでいるものだけでな く、外からも添加されている。こういうものは明らか食品ではない”というものでした。サンスター社が有機野菜100%のジュースであったのに対し、B社で は同じ成分であっても添加物を使用していました。これはつまり、食品以外のものが効果効能のために添加されているため、“明らかに一般的な食べ物だ”とは 言い難いという判断だったのです。
結局、B社は薬事法を突破できず、サンスター社に大きく遅れをとったことはいうまでもありません。“明らか食品”の理屈を徹底的に研究し、薬事法をブレークスルーしたサンスターと薬事法でこけたB社。薬事法の戦略的克服がいかに重要であるかを知らしめた事例でした。