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薬事法をひもとく

【第8回】その他、健食ビジネスの関連法令について(2)

(1)景表法について-2

さて、景表法についての第2回目です。まずは前回のおさらいを簡単に致しましょう。 平成15年の景表法の改正が健食業界に大きな影響を与えたことは覚えていますでしょうか? それまで公正取引委員会(以下、公取)が不当表示の立証をしなければならなかったのが、改正により公取が業者に不当表示ではないことの立証を要求できるように180度の転換がはかられたのです。「優良誤認」や「有利誤認」を招く、合理的な根拠のないものは、公取から排除命令や業務停止命令などの「行政指導」を受けるようになりました。又、業者名等を公表される、というイメージダウンもくらいます。





今回は、この行政指導を受けた企業の事例を見て参考にしていきたいと思います。


■ 「イデアル製薬事件」

改正景表法第4条第2項の規定を適用したはじめての事例となったのがこの事件でした。

a. 事件の概要

有限会社イデアル製薬会社が、全国新聞折り込みチラシ2020万枚で、ダイエット用健食「エス・スタイル・アクティブ」及び「エス・スタイル・スリープ」の広告を打ったのが発端です。表示は以下の内容でした。

1.「スチュワーデスに選ばれているNO.1ダイエット」

「生活を変えずに理想の体型になりました」

「93%以上が効果を実感」等の表現

2.客室乗務員ら10人の体験談

3.動物実験・ヒト臨床試験による効果の実証

4.コロソリン酸が脂肪を作らない/体内の脂肪を燃焼させるなどの記載

これらに対しての公取の対応は以下のとおりでした。

まず、公取は1、2、3、4の根拠となる資料を15日以内に提出するよう要求。期限を過ぎて提出された資料は3、4のみで、1、2が欠けていて不十分である上、検証の結果、提出資料も不合理なものと判断されました(本来は提出期限を過ぎた時点でアウト)。公取は広告表示を優良誤認であるとして排除命令を出しました。30日間の猶予の間に不服申し立てを行わない場合は、訂正広告を全国新聞折り込みチラシ2020万枚に掲載する事になります。これが改正景表法第4条第2項の初の適用になりました。

b. 排除命令後

排除命令後でも、指導された広告と同様の手法の折り込みチラシが出回っています。これらが出回る理由としては「排除までのタイムラグ」が考えられます。
イデアル製薬事件の場合は、広告配布から行政指導まで8ヶ月のタイムラグがありました。平成16年10月の東京都の「試買調査」でも、試買から排除命令にいたるまで7ヶ月かかっているのです。つまり、業者は少なくとも7ヶ月は指導されずに営業できる、と考えているふしがあり、それを悪用し排除命令を結果無効にしてしまう会社も出てくるのです。
今回は、その事例も見てみたいと思います。


■ 「銀座薬品工業事件」

公取は平成14年、誇大なダイエット効果を表示して販売していた通販業者2社に対し、景表法違反(不当表示)に該当するとして排除命令を出しました。そのうちの1社が銀座薬品工業です。この会社は「中国宮廷減肥茶」について「1日3食食べても減量できるよう研究開発されています」といったチラシを配布していましたが調べると、以下のことが発覚しました。

1.同社が提出したデータや製品の分析結果からは、いわれる効果が認められなかった。

2.国際的な賞を受賞しているかの表示は事実無根のものだった。

3.チラシで「効果がなければ返金」としているのに、一定の金額は返金しても、電話を受ける体制が不十分で電話がつながらないという苦情が多かった。

4.体験談を寄せていた人はオペレーターやその関係者で、数万から数十万の謝礼を受け取っていた。

この結果、銀座薬品工業に対して排除命令が出されたわけですが、公取はこの件について、「広告が広範囲に行われていて、苦情も多いなど、消費者に与える影響が大きいことから措置をとった。ダイエット関連広告は全体的に景表法違反の疑いが強いものが多いので、引き続きこの分野を注意深く監視していく」とコメントしています。
ちなみに、同社は排除命令を受けましたが、結局会社自体を潰してしまって免れたという事件です。

以上の実例でもお分かりのように、命題の根拠と真実性が重要となります。合理的根拠ありといえるためには、第三者による試験・調査の他、一般的な試験方法に依拠した自社データ、一般的に認められている専門家の見解または学術文献が必要となります。

広告表現においては、薬事法のみならず景表法、健康増進法など健康食品を取り巻く法体系を十分理解し、トータルで判断を下せるよう学習していきましょう。

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