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薬事法をひもとく

【第6回】刑事事件について(2)

刑事事件の傾向

●警察にも管轄はありますので、実際には地域によってその熱心さは違うと言われています。
●今回は2005年にあった刑事事件の事例を紹介し、刑事事件の傾向について解説します。

1.刑事事件
基本的に薬事法違反の刑事事件は2つのパターンに分類されます。広告等で効能効果を謳っていた場合と健康食品に違反成分が含有していた場合です。薬事法違反として立件される事件は毎年100件くらいありますが、場合によっては新聞報道される事件もあります。

なお、2005年度における薬事法違反(広告表現違反)として立件された刑事事件のうち報道されたものは全部で16件ありました(但し、関連事件については合わせて1件とします。㈱日米総研調べ)。

2.事例
以下、2005年に報道された事例の中から逮捕事例と家宅捜索の事例を紹介します。

■逮捕事例:タブハウス事件

2003年10月から2004年9月にかけて計26回、新聞に掲載した健康食品「ニーキュア」広告で、「痛みを忘れ以前のように歩ける」「ひざ、肩、腰などの関節痛に悩んでいた、多くの方に愛用されています」「ひざで悩んでいた多くの高齢者に朗報です」等の関節痛への効能をうたい、同健康食品58個を計39万5070円で販売していたとして、神奈川県警は健康食品販売会社「タブ・ハウス」社長を逮捕した。同社は2003年1月から2004年10月までの間に、新聞に広告を掲載。全国約6万5000人に販売した結果、約17億円を売上げた模様(粗利益は約11億円であった)。

同県警によると、同社社長は「違法とは知っていたが、品質がよく利益があがるので販売していた」と供述。購入者のほとんどは「効果があったかどうかはわからない」と話しているという。なお、同県警は2004年5月頃に同社が新聞広告を掲載していたことから内偵をはじめ、同年10月には家宅捜索を実施。事件に関しては「今回のケースは悪質だ。効能をうたって健康食品を販売する薬事法違反は今後も厳しく取り締まる」とコメントしている。同社は以前にも同様の広告を掲載していたため、2000年に東京都から広告改善の行政指導を受けていた模様。これまでに「下痢をした」「余計に痛くなった」等、計39件の苦情が国民生活センターや同社に寄せられている。製品自体の主成分はグルコサミン。その他コラーゲン等を含んでいたが、関節痛への効果は明らかではないという。

⇒2005年3月23日、横浜地裁横須賀支部は同社社長に対して、懲役1年6ヶ月、執行猶予3年、罰金100万円、会社に対しては罰金100万円の判決を言渡した。

■家宅捜索の事例:史輝出版事件

警視庁は2005年4月、史輝出版(瀬川博美社長)及び都内の健食業者「ミサワ化学」など約10ヶ所を薬事法違反の容疑で家宅捜索した。違反対象となった出版物は「即効性アガリクスで末期がん消滅!」など2冊。同社らは、その書籍中でアガリクスの効能を謳い、巻末に問い合わせ先として「アガリクス研究センター」を掲載。そこからミサワ化学に繋がり、健康食品を販売するというタイアップをおこなっていた模様だ。なお、史輝出版については昨年の5月にも厚労省から健康増進法に抵触するとして、バイブル本に掲載していた問い合わせ電話番号を削除するなどの指示を受けていた。

また5月18日には、警視庁は史輝出版の関連会社と見られている「ライブ出版」、「青山書籍」や、商品の製造会社「応微研」「オアシス」など数ヶ所を同法違反で家宅捜索。史輝出版についても再捜索した。警視庁によると、史輝出版の社長や社員が関連会社と見られるライブ出版と青山書籍の役員となっていることや、両社が発行する書籍の編集作業等が史輝出版の事務所で行われており、実質上は3社の経営は一体であったのではないかとしている。

⇒なお、2005年10月~12月の間に史輝出版の役員、関連会社やタイアップ先の社長らが逮捕。タイアップ本の執筆者や監修者は書類送検された(事件の詳細は薬事法.comにて掲載)。

3.傾向
例えば「ガンに効く」と標榜していた場合など悪質な事件が刑事事件になり、逆にそうでない事件は行政指導になると思っている人もいるようですが、実際はそうではありません。今回紹介したタブハウス事件のように「関節の痛み」程度の違反広告でも刑事事件になります。事件が報道された場合には「ニセ薬を売った」という形で記事がでますので悪質な事件のように思えますが、実際はそれほど悪質ではない類の刑事事件も多く見受けられます。

結局、同業者による証拠を揃えたチクリがあれば刑事事件になると言えるのです。


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